3. ひとりのとき

糸井

なんていうか、土日ってね、
ひとりでいるぶん、発見も多いけど、
たのしくないことにも出会いますよね。
たとえば、自分の大きな欠点を発見したりとか。

宮本

うん。

岩田

そうですね。

糸井

いまやってることは、
ほんとはダメだったんじゃないだろうか、とか。
そういう後ろ向きなことを、土日は考えますよね。

宮本

そうですね、うん。

糸井

それは・・・自分の話をしてるんですけどね。

岩田

ははははは。

糸井

だから、ぼくが落ち込むのって、だいたい土日ですよ。
ツイッターの反応とかもね、土曜日とか日曜日は、
なんでそういうこと言うかな、っていう人が多い。

岩田

ああー、そういうものですか。

糸井

うん。
つまり、ふだん仕事してる人とかでも、
やっぱり土日はひとりになってるんで、
なんていうか、感情が、こう、渦巻くんですよ。
で、ふだんは、問題があったとしても、
やっぱり話す仲間がいるから、
「これこれこうだからこうでしょ」っていう判断を
つぎつぎにしながら過ごしていける。
だから、話せばわかるというか。

岩田

はい、なるほど。

糸井

ところが土日は、「これこれこうで」って
話してもわからない人に出会うんですよ、やっぱり。
それは、ネガティブな意味ばかりじゃなくてね、
散歩する犬から、家族から、みんなそうですよ。
ひとりの個人として、
自然現象みたいなもののなかにいるんです、土日は。

岩田

はい。

糸井

だから、土日の夜になると、
俺はひとりぼっちだなぁ、みたいなことも
どんどん思っちゃう(笑)。
友だちなんかいやしないんだ・・・みたいな。

宮本

ははははは。

岩田

(笑)

糸井

家族だとか、友だちだとか、いるけど、
けっきょくは自分がどうするかだよ・・・
みたいな・・・こう・・・
『MOTHER』(※2)でいうと、体力がなくなって倒れたあと、
「天井からの光が当たってる自分」になって。

岩田

考えるんですね。

糸井

そう。
で、案外、そういう状態でいるのって、
じつはおもしろいんですよ。

岩田

そうです、そうです。

糸井

考えて、なんかメモしてみたり、
ちょっと整理してみて、本を読んでみたり、
逃避したら逃避したなりに、何か発見する。
っていうのが・・・まあ・・・
ぜーんぶ、自分のことなんですが。

一同

(笑)

糸井

で、そういう経験から類推すると、
きっと、宮本さんでも、岩田さんでも、
そうなんだろうなと。
要するに、ひとりのときの自分というか、
インディペンデントな状態で自分が考えることが、
やっぱり、すごい重要なんじゃないかなぁ。

岩田

はい。

糸井

毎日会社にいなさいってなったら、
俺、みんなダメになると思う。

宮本

ああ。

岩田

差がある状態を過ごしていないと。

糸井

うん。
やっぱり、言葉だけではままならない
自然現象のなかにひとりでいないと。
会社とかチームって、人工物だから。

※2

『MOTHER』=糸井重里さんがゲームデザインを手がけるロールプレイングゲーム。これまで3作が発売され、1作目の『MOTHER』は、1989年7月、ファミコン用ソフトとして発売された。