糸井
しかし、どこでどう枝分かれするんだろうねぇ。
子分として考えることと、
親分として考えることがあるじゃないですか。
で、どういう立場にいようと、
親分として考えることのほうが明らかに大切なんだよ。
たとえ、失敗するとしてもさ。
宮本
うーん、そうですねぇ。
糸井
宮本さんの上役っていうのは
横井軍平さん(※3)になるわけですか。
※3
横井軍平さん=任天堂在職中にゲーム&ウオッチやゲームボーイなどのゲーム機のほか、ファミコンロボットや『Dr.マリオ』などの開発を中心となって手がける。故人。
宮本
そういうわけでもないんですよ。
糸井
あ、そうじゃないんですか。
宮本
ええ。横井さんを見てたくさん学んだけど、
上役という意味では、
ぼくはもう、直接、当時社長の山内(溥)さんでした。
糸井
そうか、そうか。
岩田
横井さんが、宮本さんの上にいたのは
じつはすごく短い期間なんですよ。
その時期において、横井さんと宮本さんは
たしかに大切な関係でしたけど、
よく言われる
「宮本さんの唯一の師匠が横井さん」
という表現は、ちょっと違ってるように思うんです。
糸井
そういうふうなドラマにしたいんだろうね。
まぁ、それもわからないでもない(笑)。
岩田
ええ。
糸井
でも、ほんとうの上役は、山内さん。
宮本
うん。そうでした。
糸井
で、いてくれてよかったですか、山内さんは。
宮本
よかったですよ、総合的に。
糸井
うーん、それはすばらしい関係だね。
宮本
そうですね。
糸井
しかもさ、専門外だからね、
その、ゲームそのものについてはさ。
宮本
そうなんですよ(笑)。娯楽に関しては向こうがプロ。
だから、ぼく、山内さんの言うことは
だいたい聞くんですけど、
「キャラクターの色は決めないでください」みたいな。
一同
(笑)
糸井
いいなぁ(笑)。
宮本
デザインは、こっちがまだしもプロなので、って。
糸井
ははははは。
そういえば、岩田さんも
上役のいない人生を送ってますね。
岩田
ああ、わたしは、上役はいないですね。
長いこと。
糸井
独学でプログラミングをしていた
バイト時代から(笑)。
岩田
ええ、バイト時代から(笑)。
開発のことについては、上役は実質、いないですね。
たくさん失敗もしましたけど、
自分のつくりたいものをつくってきましたね。
「こういうものをつくってくれ」って、
ほとんど言われなかったですから。
糸井
おもしろいねぇ、そういうことってね。