糸井
自分がストップさせたはずの企画を、
自分のチームの若い子とかが、
知らないうちに進めてて、
それがすごくおもしろかったっていうような経験ある?
宮本
あ、ありますよ、いくつか。
とめてるのは、危ないからとめてるだけで、
絶対ダメっていうことはないので。
糸井
ああ、そういうことなんだ。
宮本
そうですよね。
絶対ダメじゃないけど、危ないから。
岩田
勝算の問題ですよね。
宮本
そうそう、勝算が低いっていう。
糸井
はぁー。
岩田
で、やっぱり、コンピューターの仕組みを
つかってつくるものですから、
何を組み上げるにも、ひとつひとつ細かいことを
積み上げていく必要があるんです。
だから、勝算の低いものに投資をすると、
すごくエネルギーをたくさん投じて、
結果、それをぜんぶ捨てなきゃならない
ってなる可能性が大いにある、
っていうときに、それをとめるのが、
やっぱり宮本さんの目であり、経験なんですよ。
糸井
うーん、なるほど。
宮本
だから、どっちかっていうと、
とめてたやつも、うまく出口が見えたら手伝いますよね。
あの、『マリオ64』(※4)で、クッパの尻尾をつかんで
ぐるぐる振り回すアクションがありますよね。
糸井
はいはい。
※4
『マリオ64』=『スーパーマリオ64』。1996年6月に、NINTENDO64用ソフトとして発売。マリオシリーズ初の3Dアクションゲーム。
宮本
あれはけっこう、とめてたんですよ。
糸井
え、なんで?
宮本
絶対ダメ、とは言ってなかったですけど、
「ああ、もうそっちは行くな」って。
危ないなぁっていうぐらいの気持ちで。
で、あるきっかけでプログラムがうまく動いて、
めどが立ったので、これはもう、それをメインで行こうと。
糸井
へぇー(笑)。
宮本
プログラムの仕組みとしてクッパを振り回すというのは、
親となるオブジェクトに
子どものオブジェクトをくっつけて、
親が動いたら子どももいっしょに動く、
っていうシステムなんですけど、
これ、やろうとするとかなり重いシステムなんですよ。
岩田
NINTENDO64のハードと同時に
開発を進めていたソフトですから、
どれだけの計算処理ができるハードなのかが
誰にもわからないので、
重い処理を前提にした仕組みでは、勝算が低いんですね。
糸井
あー。
宮本
ところがこれがちゃんと動いたので、
もう、クッパを振り回して
投げるのを前面に出して使おうと。
糸井
つまり、当初それをとめたのは、
企画の方向性というよりも、
実行力として難しいなと思ったということですか。
宮本
そうですね。
岩田
やっぱり、物事を仕組みで考えていますから。
糸井
なるほどねぇ。
いや、おもしろい。