社長が訊く『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』も
いよいよ第５回となりました。
今回は「空と町」をテーマに、
みなさんに集まっていただきました。
よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

・・・青沼さんが
いつもと違うところに座ってますね（笑）。

自分もちょっと違和感があります（笑）。

いつも、はじっこのほうで
「僕はプロデューサーです」
みたいにしている青沼さんが、
今日はなぜ、藤林さんの左隣にいるんですか？

じつは今回、「空」というフィールドには、
いちプランナーとしてかかわったんです。

じゃあ、藤林ディレクターの指示のもとで
仕事をしたということですか？（笑）

はい（笑）。

どんな仕事を担当したのかは、
後でじっくりお訊きします。
それでは、青沼さんと藤林さん以外で
新しく参加のみなさん、自己紹介をお願いします。

情報開発本部の岩本です。
今回、「空と町」のプランニングを全般的に行いました。
序盤のシーケンスの構成から、
町にいる人々とリンクが接するサブイベント、
大空で鳥に乗るシーンを担当しています。

岩本さんは“空番長”なんです。

第３回で藤林さんが話をされていた、
“番長システム”ですね。

皮肉っぽく“空の神”とも呼ばれてましたが（笑）。

皮肉っぽいんですか？

まぁ、今回、いろいろやっちゃっていますので・・・。

じゃあ、それもまた後で（笑）。

地形を全般的にまとめていた、
情報開発本部の久田です。
わたしは岩本さんと一緒に
おもに「空と町」を担当しました。
どんな地形にするか方針を出したり、
背景のテイストや、絵づくりを
とりまとめていました。

世界観をつくっていくうえで、
とても重要な役割ですね。

はい。

サウンドを担当していた
情報開発本部の水田です。
ＢＧＭや効果音を鳴らす仕組み全般と、
効果音の作成、それらのとりまとめを行いました。
それから、楽器の仕組みや
ネタづくりなんかも行っていました。
サウンドはフィールドのどこでも鳴りますので、
「空と町」の音だけをつくっていた、
というわけではないのですが、
サウンドの話がしやすいのでは、
ということで、今回参加しました。

ちなみに、今回のサウンドは
何人でつくったんですか？

１０人です。

えっ？ １０人もですか？

はい。
効果音とサウンドの仕組みをつくるスタッフが５人、
コンポーザーが５人、
合わせて１０人で担当しました。

それはまた、大人数ですねぇ・・・。
どうしてそんなに多くの人が
かかわることになったんですか？

そもそも最初の１年半くらいは、
コンポーザーの若井（淑）さん^（※1）と２人で
楽器ネタの準備や
サウンド全般の下地づくりをしていたんです。

若井さんは、次回に出ていただく予定ですが、
今作ではサウンド全般の
とりまとめを担当したんですよね。

はい、そうです。
最初は２人だけでやっていたんですけど、
次第にステージの数や
イベントの規模感もわかってきて、
スタッフがどんどん増えていきましたので、
サウンドも２人だけではもう無理だということで、
近藤（浩治）さん^（※2）に
スタッフ増員の相談をしました。

それで一挙に１０人になったんですか？

いえ、一挙に１０人ではなく、
スタッフは少しずつ増えていきました。
最後の効果音担当者が入ったのも
今年になってからでしたし。

そうです。
ずっと１０人いたわけではないです。

サウンドはいつも最後に作業が集中するんですが、
今回は量もかなり多かったので、
その分、増員規模が大きかったんです。

うん、うん（強くうなずく）。

任天堂が社内で制作したソフトの歴史では、
１０人のサウンドスタッフというのは
かつてなかったことじゃないですか？
要するに、今回の“濃密”さゆえに、
物量も増え、大勢のサウンドスタッフが必要になった、
ということですね。

そのとおりなんです。
さらに、ＢＧＭは今回オーケストラですし、
イベントシーンひとつひとつに全部効果音をつけて、
キャラクターそれぞれのボイスもあって、
今回は本当に多岐にわたる作業があったんです。

なるほど。では、そうなると久田さん、
デザイナーは何人くらいだったんですか？
訊くのがちょっと、怖いんですけど（笑）。

えーと、そうですね・・・。
全員合わせると、背景で区切って
２２人です。

地形だけで、２２人ですか！
普通なら、ゲーム１本分の人数ですよ。

すごい人数でした、はい。

（そろってうなずく）

・・・『ゼルダ』史上最多ですよね、それは。

はい、最多です。
『ゼルダ』史上で最多ということは、
任天堂のゲームづくり史上でも・・・
最多になります。

デザイナーの人数も“濃密”、ということですか。

・・・ということになりました（笑）。

青沼さんは今回、「空」では
プランナーを担当したということでしたけど、
具体的にはどんな仕事をされたんですか？

え−と、その前に、「空」ができた
きっかけから、話をさせてください。

そうですね。お願いします。

いつものことなんですが、
陸続きの『ゼルダ』をつくっていくと、
フィールドとフィールドをつなぎ合わせる
“のりしろ”の部分が必要になるんです。
今回で言えば、「森」「火山」「砂漠」といったエリアで
いろんな遊びをつくりましたが、
そのエリアを行き来するための
道をつくらなきゃいけないと。
で、「この道をどうするのか？」ということが、
毎回けっこう悩みどころなんです。

とくに『ゼルダ』のようなゲームだと、
道というのは、必要不可欠なものですからね。

そうなんです。
ですが、今回まず最初に考えたのは、
そういう道はもういらないんじゃないか？
ということでした。

道がいらない、
というのはどういうことですか？

はい。エリアごとの遊びを
それこそ“濃密”にできれば、
「それぞれを物理的につなげる必要はないんじゃないか？」
という話を、藤林さんとずっとしていたんです。
「じゃあ、どういう仕組みが必要なんだ？」
ということになって。

で、青沼さんは、どういう仕組みを考えたんですか？

「『マリオ』のコース選択でいい」と。

コース選択・・・ですか？

そうです。『マリオ』のコース選択画面の、
ピューッと進んだらそこにピョーンと入るやつです。

『ゼルダ』の世界にまた・・・
無茶なことを言いましたねぇ（笑）。

ですよね！ 僕にとって、
青沼さんは無茶ぶりの親分なんです（笑）。
なので、すぐには
「なるほど！」とはならなくて・・・。

いまの話を訊いて、わたしの頭のなかでずっと、
『マリオ』のステージ選択の音楽が鳴っているんですが、
『ゼルダ』の世界観とかみ合わないですから（笑）。

僕らも、『マリオ』はそれでいいけど、
『ゼルダ』はそのままじゃダメだよね、
という話をずっとしていたんです。

でも、そうこうしているうちに、
今回のスタートになる場所を
「空に浮かべたい」っていう話が出てきたんです。
それを聞いて、たしかに構造的には
そこから飛び降りるみたいなかたちにすれば、
それはそれでアリだなと。

たしかに、道はいりませんからね（笑）。

そうなんです。でも、その後、
「じゃあ、飛び降りるってどうするの？」と。

「飛び降りる」というアイデアは藤林さんですか？

はい。もとは、テレビか何かで見たんですけど、
スカイダイビング中に女性が気絶してしまい、
それに気がついたベテランのスカイダイバーが
ものすごい勢いで女性のところまで滑空していって、
彼女を抱きかかえつつ、自分のパラシュートをひらいて
カッコよく地面に降り立つ！
という映像が記憶にあって。

藤林さんはそれを見て、いつかは
そのようなことを実現したいと思ったんですね。

そうです。
いつかゲームでやりたいと思ってはいたんですが、
でも「空からはじめる」というだけでは
絶対に企画が通らないんです。

それだけだとあまりにアバウトですからね。

そこで、一時期は、
塔から飛び降りるという案も考えました。

そう、そうだった（笑）。
世界が盆地になっていて、
その中心にものすごく高い塔がそびえていて、
その塔を上がっては飛び降り、
上がっては飛び降りして・・・。

しかも、高く登れるようになると、
遠くまで飛んでいけるようになるんです。
でも・・・地味ですよね、やっぱり（笑）。

そこでやっぱり、空から
飛び降りることになったんですか？

そうです。でも僕としては、
空から降りるというのがいまひとつピンとこなくて、
空と下の世界の位置関係をどうするんだ？とか、
いろいろ検討するうちに、やっぱり
「何か移動する乗り物に乗らないと無理だ」
という話になったんです。

そこで“空番長”・・・岩本さんの登場なんですね？

はい（笑）。