10. プレゼンテーションはいらない

宮本

なんかの企画を話すときに
いい距離感で話せるといいんですけどね、
たとえば社内の誰かが会議で
新しい企画のプレゼンをしますっていうときに、
代理店が企業にプレゼンするような
距離感を感じるときがあるんですよ。

糸井

あーー。

宮本

ものすごく準備してて、
それのためにほとんどの時間つかってるでしょ、
っていうような感じで、
聞いてるときに、申し訳ないんだけど、
「もう前置きはいいから・・・」って
言いたくなるような。

岩田

(笑)

宮本

確かに、わかるんですけどね、
それぐらい緊張して臨んでるわけで、
しょうがないかなとも思うんですけど。

糸井

うちの会社は、そういうところはないんだよな。

宮本

あー、そうなんですね。

糸井

それはさ、やっぱり、少ない人数だから。
前にも言ったと思うけど、うちの会社には
プレゼンテーションっていう概念がないから。
プレゼンでボツにされるための対抗案を、
わざわざ用意するんだったら
帰って寝たほうが絶対いいもの。

宮本

うん。

糸井

いろんなところでよく言ってるけど、
プレゼンで通すためのB案、C案を準備するより
ほんとにいいと思ってるA案を磨くために
時間は使わなきゃ。
それは、宮本さんだって、そうでしょう?

宮本

そうですね。
当て馬のためのアイデアみたいなものは、
考えたことがないですね。

糸井

というか、宮本さんはそもそも
プレゼンで企画を通すような場に
いなかったともいえる?

宮本

うーん、そうですね。
やっぱり、自分で決めて、
それがほんとにいいかだけを
自分が自分にずっと問い続けているような、
そういう環境にいましたね。

糸井

うん。
だから、リーダーシップって、
そういう環境からしか育まれないというか。
「誰々がなんて言うかな?」みたいなことばかりを
気にしてたら企画もチームも育たない。

岩田

そのとおりですね。

糸井

たとえ、うるさく言う上役はいなくても、
いまは「お客さんはなんて言うかな・・・」っていう
実際には見えてないお客さんのことを
過剰に慮って、話がちっちゃくなったり。

宮本

ああ、そうですよね。

岩田

こうしたら不愉快に思う人がいるかもしれない、
っていうようなことで、
どんどんちっちゃくなってるんですよね。

糸井

そうそう。
あと、狭い意味でのマーケティングとか、
ターゲット層の絞り込みとかも、
邪魔するんですよね、企画の自由さを。
だから、「そんなはずはない」っていうようなことを
さきに言い出しすぎちゃダメですよね。

宮本

うん。

糸井

それは、岩田さんや宮本さんが
自分で企画をたてて進めるときだってそうでしょ?
誰と誰におうかがいをたてて、
ターゲットをしぼってっていうようなことじゃなく。

岩田

ええ、そうですね。
わたしがなにかをつくりはじめるときは、宮本さんに、
「こんなこと考えてるんですけど、違和感ありますか?」
っていうようなことを聞くだけです。
もちろん、ものごとの種類によって
相談する相手は違いますけど、
少なくとも、誰かの了解を得ないと
なにかができないっていうことはないですね。

宮本

うん。そうですね。

糸井

それは、会社のなかの立場として、
おふたりが、いわゆる上の立場にいて
権限があるからっていうことではなくて。

岩田

ええ。だって、専務になるまえから、
宮本さん、そうしてましたよ。

宮本

ああ、課長になる前もいっしょですね(笑)。

糸井

あー(笑)、
それは、おもしろいっていうか、
勇気のわく話だねぇ。