岩田
では最後に、高橋さんから、
「ここを見てほしい」という話をお願いします。
高橋
今回は、モノリスソフトにとっては
初めてのHD(※17)タイトルということで、
まずチームを編成し、研究開発からはじめました。
そこで、「今回の柱はオープンワールドでいこう」
ということを、最初に決めて、
「ロボット(ドール)も柱にしよう」ということで
開発を進めてきました。
ところが、開発の途中で
“ゆるくつながるオンライン”という
新しい命題が生まれて、
主人公もアバターに変更することになり、
それまでに構築してきたいろんなものを
いったん全部捨てなきゃいけなかったんです。
小島
(しみじみと)捨てましたねえ。
高橋
そこから再スタートをして、
新しい器に適したものにつくりなおしたのですが、
そのときのスタッフの情熱はすさまじかったですし、
みんなの血と涙の結晶のようなものが、
最終的にこのゲームに結実したと思っています。
岩田
前作は“背水の陣”でつくられ、
“血と涙の結晶が結実”したのが今作なんですね。
高橋
はい。前作については、
先日の「社長が訊く」でもお話ししましたけど、
タテ軸(ストーリー)とヨコ軸(ゲームシステム)の
バランスをとったとはいえ、かなりリニア(直線的)な
ロールプレイングゲームだったと思うんです。
岩田
一本道ではないですけど、
遊ぶべき方向が、ほぼ決まっていたんですね。
高橋
でも、今回は違います。
どちらかというとヨコ軸重視の、
ノンリニア(非直線的)なゲームをめざして
モノリスソフトの総力をあげてつくりました。
岩田
オープンワールドにしたことで
ノンリニアなゲームになり、
その結果、自由度がすごく増したんですね。
高橋
はい。さらに、“豊かさ”を
かなり表現できたと思います。
たとえばメインストーリーだけだと、
『ゼノブレイド』よりも短かったりします。
なんですけど、クエストも含めた
全部のストーリーの量になると、
『ゼノブレイド』よりもはるかに多い
テキスト量になっています。
岩田
ふたりの脚本家にも手伝っていただけたわけですしね。
高橋
しかも、キャラクターがそれぞれ立ち、
そこに付随してくる冒険、探索、育成といった要素が
一気に乗っかってきていますので、
プレイされる方によって、体験する要素が
それぞれ違ってくると思っています。
たぶん、思い出も人によって違ってきますので、
ぜひそこを楽しみながら遊んでほしいですね。
小島
それは僕も、強く言いたいことで・・・。
今回はすごく“能動的に遊べるゲーム”なんです。
岩田
それはすごく感じます。
“受動”ではなく、“能動”なんですよね、遊びが。
小島
このゲームにはいろんなことを詰め込んでいますので、
そのなかからお客さんが自分の好みで選択をして、
「あそこへ行こう」とか、「これをしよう」とか、
自分で決めてほしいゲームなんです。
なので、高橋も言ったように
遊ぶお客さんによって、
体験や思い出がまったく変わると思います。
誰がやっても、同じ結果が
得られるようなゲームではないんです。
岩田
人によってさまざまな体験ができるほど
“豊かなゲーム”になったんですね。
小島
はい。そこがこのゲームの
いちばんの良さだと思っています。
高橋
そこは自信があるよね。
小島
はい、ものすごく自信があります。
岩田
ありがとうございます。
今回の『ゼノブレイドクロス』が
とても“豊かなゲーム”になったのは
たぶん、現場で交わされた
アイデアに対する会話の量もまた、
ものすごく豊かだったからだと思うんです。
もちろん高橋さんが、ものすごいエネルギーで、
まず下地のようなものを考え、
大きな流れをアウトプットしてきたことは
間違いないんでしょうけど、
高橋さんがすべてを考えたわけでもないんですよね。
高橋
まったくそのとおりです。
岩田
このゲームにかかわる、いろんな人たちの
ものすごくたくさんのアイデアが、
高橋さんが考えた下地の上に足されていって、
「これはこの世界に入れてオッケー」
「これはこの世界には合わない」ということを、
ある基準を元に、おそらくその多くは
小島さんが判断しながらつくってきたんですね。
小島
はい。
岩田
ですから、
みなさんが出したアイデアの総量がとても多くて、
しかも正しく取捨選択をして、
いいものを詰め込めたからこそ、
これほど“豊かなゲーム”に結実できたんでしょうね。
小島
本当にそうだと思います。
やっぱり高橋の色だけで、
全部が染め上げられているわけではないんです。
スタッフのいろんなカラーが、各所で出ていて・・・。
ただ、それが好き勝手にバラバラというのではなくって、
最後に高橋が、世界全体の調和を考えながら、
きれいにまとめているんです。
しかもひとつの色だけでなく、いろんな色がのっている、
というのが、モノリスソフトのゲームですし、
それができるのが、自分たちの良さだと思っています。
岩田
そういうことは、きっと
お客さんにも伝わるんでしょうね。
小島
はい。たぶん、触ってくださるお客さんにも
わかっていただけると思います。
「あ、ここのシナリオを書いてる人って、
こういう人なんじゃないかな」とか、
開発者の顔が透けて見えるゲームがたまにあるんですけど、
僕はそういうゲームがすごく好きで、
『ゼノブレイドクロス』も
そういうゲームになるといいなと思います。
岩田
はい、ありがとうございました。
それでは、最後にみなさんに
どうしてもお伝えしたいことがありまして・・・。
高橋
はい。
岩田
NOA(Nintendo of America)の
レジー(※18)さんから聞いた話なんですけど、
先日、Wii Uで開発中の『ゼルダの伝説 最新作』は
2015年に出ませんということ(※19)を、
青沼(英二)(※20)さんが動画で発表しましたよね。
横田
はい。
岩田
そこで、あるゲーム雑誌(※21)が、
「今年、出なくなった『ゼルダ』の代わりに
みんなはWii Uで何を遊びたいですか?」
というアンケートを、雑誌社のWebサイト上で
読者からとったようなんです。
これ、アメリカの雑誌の話ですよ。
高橋
はい。
岩田
1位は『ゼノブレイドクロス』だったんです。
一同
おおーっ!
岩田
これね、『ゼノブレイドクロス』の
名前を挙げてもらえたというのは、
すごいことだと思うんです。
小島
本当にありがたいですね。
岩田
日本での発売が先だということで、
どんなゲームかという情報がすべて
お客さんに見えてしまったあとで
アメリカで発売することになるので、
もちろんハードルは上がるんですけど、
でも逆に、日本で「自分はこんな世界を楽しめた」
「いや、自分はこんなふうに遊んだよ」ということが、
すごくバラエティ豊かに語られて、
それが向こうの人たちにもうまく伝われば、
「JRPGの未来はどうなるんだろう」
という問いかけに対し、
「その答えを具現化したのは、これだった」
と、言ってもらえるような気がするんです。
高橋
そうですね。
岩田
いまはまだ、日本での発売前の話で、
少しずつ映像を公開していっている段階なんですけど、
それでも海外で高い評価をいただけたのは、
たぶん、先ほど、高橋さんが言ったように
“血と涙の結晶が結実”するくらいに
みなさんが注ぎ込んだエネルギーがほとばしっていて、
その総量が海の向こうのお客さんにも
伝わったように思うんです。ですから、
「あの広いフィールドを
思うままに駆け巡ってみたい」とか、
「ドールで飛んで、空の上から
あの世界を眺めてみたい」という
すごくワクワクした気持ちでいてもらえるんでしょうね。
高橋
はい。
岩田
大きなチャレンジを、いくつも乗り越えて、
やっとここまで来られたわけですから、
お客さんたちの反応がとても楽しみですね。
高橋
本当に楽しみです。
岩田
みなさん、長い間、お疲れさまでした。
一同
ありがとうございました。