青沼 |
まず、『時のオカリナ』以来となる
リアルな『ゼルダ』を作るというのは、
当然、最初にテーマとしてありました。
ただ、そこだけにがっちりと入り込むんじゃなくて
もうちょっと発想を揺さぶってみたかったんですね。
それで、いちばん最初に、
「今回のリンクは狼になるんだよ」という話をしました。
やっぱり何か新しいテーマが必要だと思ったんです。
で、なぜ狼なのかというところは、
もう本当に思いついたというだけのことで、
本当の目的は、それが、みんなが何かを発想するときの
材料のひとつになればいいと思ったんです。
どれくらいみんなが食いついてくるのかな、と
そういう気持ちで「今回は狼だ」って提案しました。
あとで宮本さんにずいぶん怒られましたけどね(笑)。
「四本足の動物を作るのは、
二本足の人間を作るよりもよっぽど大変だぞ」って(笑)。
|
岩田 |
そこから始まったものと、いまできあがったものと
比べてみると大きな違いってなんですか?
|
青沼 |
やっぱり、こんなに大きなプロジェクトになるとは
あまり想像していなかったですね。
|
岩田 |
こんなに大きくするはずじゃなかった?
|
青沼 |
少なくとも当初のぼくのイメージでは
これほどの規模になるとは思わなかったですね。
でも、スタッフの頭の中では、
かなり大きな『ゼルダ』になっていたみたいで、
実際、開発が進むにつれてプロジェクトは
どんどん大きくなっていったんですね。
だから、途中で「ちょっとまずいかな」と感じて
軌道修正するためにいろいろやったんですけど、
なんていうか、自然と大きくなっていくものって、
歯止めが利かないところがあるんですよね。
じゃあ、もう、とにかくそこに遊びを詰めていって
埋めていくしかないだろうということで
どんどんいろんな遊びを入れていったんですが、
最後までその大きさには苦労しましたね。
もちろん、それが悪いというわけではなくて、
結果的にスケール感のある『ゼルダ』になりましたし、
大きいことは大きいけれど、
その世界にしっかりと存在する
手応えのある大きさになったと思います。
いま、『ロード・オブ・ザ・リング』とか、
ああいう娯楽大作を見てふつうに過ごしている世代が
リアルな世界を描こうとしたときは、
やっぱりこのくらいのスケール感が必要なのかなと
終わってみて感じているところです。
ただ、まとめるのに苦労したというか、
自分の未熟さを感じたのも事実ですね。
|
岩田 |
それは最終的にまとまらなかったってことを
言いたいんじゃなくて──。
|
青沼 |
じゃないです。
自信を持ってお届けできるものに仕上がりました。
ただ、いろんな人に助けてもらったということですね。
|
岩田 |
青沼さんとしては、
また宮本さんの手をわずらわせてしまったな、と。
|
青沼 |
そういうことですね(笑)。
本当は、ちゃぶ台の上は
きれいにしておきたかった(笑)。
ただ、プロジェクトが大きくなっていって、
予期せぬ問題が予期せぬ形で起こっていくなかで
なかなか全部に対応することができなくて。
宮本さんが入ってきて、いろいろと直し始めたときに
「ああ、そこは直したかったんだけど……」
ということがけっこうあったんですね。
ただ、最終的にまとまってきたものは、
いろんな人の手助けがあってこそですけども
非常にいいものができたと思ってますので、
その部分ではとても満足しています。
|
岩田 |
『トワイライトプリンセス』は、
当初の予定よりも発売を1年延ばしましたよね。
じつはあれは、「1年延期しませんか?」と
私のほうから宮本さんに提案した
初めてのケースだったんですよ(笑)。
それくらい厳しい状況だなという
認識があったのも事実なんですけど、
なにより私は、つぎに出る『ゼルダ』は
史上最高傑作の『ゼルダ』に
しなければいけないと思っていたんです。
|
青沼 |
「120%の『ゼルダ』を」という
キーワードがありましたよね。
|