京極 |
私は個人的にはすごく
ちゃぶ台を返されたんですけども(笑)。
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一同 |
(笑)
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京極 |
けっきょく、どうして変わったかというと、
いちばん最初には
ゲームキューブ版の名残がけっこうあって、
Wiiでやるときには、プレイヤーは、
リモコンにもゲームにも慣れていないという状態なのに
それをフォローできていないところが多かったんです。
なので、これも岩田さんがさきほどおっしゃった
「機能の面からの発想」と言えると思うのですが、
Wiiで快適にゲームを遊んでもらうためには
はじめにプレイヤーに伝えなければならないことが
まだまだたくさんあったんです。
それで、当初のストーリーでは、最初の村で
まず1日を過ごすという流れだったんですけれど、
いきなり「3日にしよう」ということになって、
「宮本さんの3日プラン」みたいな
仕様を書いた紙が出てきて……。
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岩田 |
あ、「仕様の紙」、出た?
それは、大きく変えるときのパターンですね。
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一同 |
(笑)
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京極 |
しかもそれが本当に開発の後半というか、
言っちゃうと、E3の後のことだったんで……。
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岩田 |
(笑)
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京極 |
もう、ローカライズも始まってるような時期なんですよ。
それをいまからこんなに変えるのかと唖然として……。
プログラムも変わるし、アイテムも増えるし、
もちろんキャラクターの配置も変わるし、
地形もチューニングしなきゃいけないし……。
当然、セリフも全部変わるわけですから、
もう、慌ててアメリカとヨーロッパに連絡して、
「あの村は、ごっそり変わるので、
2週間くらい待ってください!
まだ訳さないでください!」って……。
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一同 |
(笑)
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京極 |
で、なんとかギリギリ間に合ったかなというところで、
また再び、さっき冨永さんがおっしゃった、
サブイベントをメインに組み込むという
「もうひと返し」があって、また世界中に連絡して、
「また変わります!」と言って、
個人的にはもう、ひっくり返されまくりだったんですが、
終わってみればなんとか発売に間に合ったので、
これが「『ゼルダ』の伝説」なのかと……。
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一同 |
(爆笑)
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北川 |
それが言いたかったんやな(笑)。
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岩田 |
さすがスクリプトライター(笑)。
いや、たぶん、宮本さんはあれですよね、
京極さんがおっしゃったように
ゲームの最初の部分というのを
機能としてものすごく大事にされてるんですよね。
ですから、そこでプレイヤーに伝えるべきことが
なんなのかということがものすごく明確で、
だからこそ「これが足りない」とか
「こういう順序で見せないといけない」とかいう
指示をはっきりと出したんでしょう。
現場でずっと作っている開発者は
はじめての人がどこで戸惑うかということに対して
どんどん感度が鈍くなっていくので、
終盤になればなるほど、そこがわからなくなる。
ですから、宮本さんがあとから入ってきて
いわゆる「ちゃぶ台返し」的なことをやるというのは、
じつは必然的なことでもあるわけですよね。
その最初の村の大きな変更というのも、
いま冷静に振り返るとよかったわけでしょう?
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京極 |
はい。変えたことによって、
初めて体験するWiiリモコンの扱いに
なじみやすくなっただけでなく、ストーリーの面からも
「ゼルダ」の世界にグッと入りやすくなったんです。
だから結果的には変えて本当によかったと思います。
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岩田 |
ちなみに、私が昔教わった、宮本さんの定義によると、
「アイデアというのは、ひとつ変えることで
複数の問題が同時に解決すること」なんだそうです。
いまの話は、まさにそれを地でいくような話ですよね。
さて、それでは、最後の質問です。
『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』の中で、
自分がものすごくこだわったポイントというか、
ここをここまで作ったから、ぜひ見てほしい、
というようなところを挙げてもらえますか。
じゃあ、尾山さんからお願いします。
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