青沼 |
いちばん説得力があったのは、
Wiiリモコンを手にしたお客さんの多くが、
「思わずそれを振ってしまった」という事実でした。
それは、活かすべきですよね、やっぱり。
剣だけでなく、釣りのリールを巻く動作なんかも、
最初はボタンでやっていたんですが、
E3で試遊してくださった人が
盛んにコントローラを持って
リールを巻く動作をしていたというのを聞いて、
「みんながそうするってことは直感的な操作なんだな」
ということで採用したんです。
やっぱりWiiのコントローラって、初めて触ったときに
「振ったら何か反応がある」
ことを期待されるんです。
だったら、その操作って絶対あったほうがいい。
剣を振る操作もけっこう悩みましたが、
操作がストレスにならないように仕様を簡略化して
「リモコンを振る=剣を振る」
という形を取り入れることにしました。
そもそも『ゼルダ』はずっと敵を斬り続ける
というゲームではありませんし、
回転斬りが簡単に出せるようになるという
うれしい点もありましたので。
ただ、いまの形に落ち着けるまでには
かなり調整したというか、時間がかかりましたね。
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岩田 |
たしかに、E3のあとは、
いろいろと迷っていたようにみえたWii版の操作が
スッとまとまったように見えました。
いまにして思えば、無理をしてでも
E3にプレイヤブルなものを出してよかったですね。
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青沼 |
結果的には、そうですね。
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宮本 |
E3での評判には、ぼくもちょっと驚いたんです。
もう少しよいかなと思ってたんですが、
人が「握ったリモコンの十字ボタンを使う」
ということに対して、あれほど抵抗があるものだとは
正直、思わなかったんですね。
ぼくらはやっぱりあのリモコンを握り慣れてるので、
握っていてもけっこう指が動くんですけど、
初めてあれを触る人は、ギュッと持つんですね(笑)。
棒のようなものを握ったときにふつうの人の指は
そう簡単には動かへんということを思い知りましたね。
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青沼 |
ただ、なんというか、
リモコンを振るようにしたからよくなったとか、
リモコンの十字ボタンを
あまり触らせないようにしたから成功したとか、
そういう「あるひとつのアイデア」によって
操作が落ち着いたわけでは決してないですね。
いまの方向性に決まってからも、
調整してはテストするということを
短いスパンで何度も何度もくり返して、
操作の微妙なチューニングを
とにかく徹底的にやりましたから。
それはもう、宮本さんとふたりで、
「こうですね」「うん、こうやな」って結論が出てからも
延々とチューニングしてました。
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宮本 |
うん、本当はそこからなんです。
たとえば、開発中のソフトにキーアサインの機能をつけて
「このボタンは何々、このボタンは何々」
って書くのは、もう、すぐにできるんですよ。
問題は、そこから、いかに
自分が動かしたようにリンクが動いていると
プレイヤーに感じてもらえるように作りこむかということで。
細かい誤動作を防ぐために、
いろんな暴発防止処理を施していかないと
その操作を本当に「試した」ことにはならないんですね。
そのチューニングはもう、さんざんやったね。
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青沼 |
やりましたね。
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宮本 |
というような経緯があったのですが、
それはまあ、仕様としての紆余曲折という部分で、
Wii版の操作が落ち着かなかった原因として
じつはいちばん大きかったのは、当初、担当者たちが、
「Wiiでやっているということは知ってるけど、
自分がWiiで作っているとは思ってなかったこと」
だと思うんです。
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岩田 |
ああ、なるほど。
Wii版に対応すると決まった当初は。
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宮本 |
そうなんです。
「Wiiでもプレイできるキューブ版の『ゼルダ』」
だとスタッフが感じているうちは、
ひとりひとりにとってWii版が
「自分に関係のないもの」になってしまうんですね。
そうなると、必死になっているのは、
ぼくと青沼さんと担当プログラマーだけになる。
それが、「我々はWiiの『ゼルダ』を作ってるんだ」と
きちんと浸透させてくと、
みんなが全力投球しだすんですね。
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岩田 |
うん、うん。
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青沼 |
だから、最後の最後、デバッグに入るときは
「Wiiでデバッグしてください」って
全員にアナウンスして。
「キューブ版でベストのチューニングにしたのに」
っていう意見がたくさんでたら困るなと思ってたんですが
幸い、みんなすぐにWii版に慣れてくれて、
逆にキューブ版に戻りづらくなったりもしてて(笑)。
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岩田 |
ほかの開発者のみなさんに取材していても、
きちんと両方に自信を持っているという感じでした。
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青沼 |
それはよかったです(笑)。
キューブ版に思い入れのあるスタッフも多かったですけど
Wii版は、画面比率の関係で、
キューブ版よりも視界が広いですから、
「Wii版のほうがやりやすい」という意見も多くて
最終的にはいいところに落ち着いたと思います。
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宮本 |
ゲームキューブ版は左右が反転するというのも
新しいおもしろさを生んでますしね。
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岩田 |
わかりました。
つぎはグラフィックについてうかがいます。
今回の『トワイライトプリンセス』は、
リアルな『ゼルダ』ではあるものの、
いわゆるフォトリアリズムの表現を
追求しているわけではありませんよね。
青沼さんはもともとデザインをやっていた人ですが、
そのあたりはどういうふうにとらえていましたか。
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