青沼 |
まあ、中には、焦ってた人もいたとは思います。
新しいムーブメントが任天堂の中に生まれてるのに、
自分たちは旧来からのやり方をずっとやってきてて、
取り残されてるんじゃないかっていう感覚は、
まったくなかったといえばウソになると思うんです。
でも、キューブの最後を飾ろうとして時期を逃して、
Wiiにも対応することになって、ある意味、
混沌としていた状態だったにもかかかわらず、
「もう『ゼルダ』を作ってる場合じゃないですよ」
みたいな意見はまったくなかったですね。
やっぱり、どれだけ業界の流れが変わろうと、
自分たちが作っているものに対する自信というのは
揺らがなかったと思います。
|
岩田 |
うん。そこに斜陽感みたいなものを感じていたら、
こんなふうに『ゼルダ』は仕上がっていないと思いますよ。
だから、おっしゃるように、
そういう思いはなかったんでしょう。
あるとすれば、新しい流れがある種の刺激になったと。
|
青沼 |
ああ、刺激にはなってるでしょうね。
|
岩田 |
ニンテンドーDSのヒットがもたらした、
「時間や物量をかけなくてもいいものはできる」
という考え方は価値のあるものだと思います。
ただ、一方で、この『トワイライトプリンセス』の
クオリティーと物量を目の当たりにした人が、
「やっぱり、たくさんの優秀な人たちが
たっぷり時間をかけて作ったものは、すごい!」
というふうに感じてくれることも重要で。
その両方が同時にあることが、
両方にとっていいことなんだと思うんです。
そういう幅があることがいいことだと私は思うし、
どっちかしかないのは不健全な気がするんですよ。
|
宮本 |
そうですね。
|
青沼 |
そう思います。
ぼく自身、ずっと大作といわれるようなものばかりを
これまでは手がけてきたので、
もうちょっと違う視点でものを考えるように
ならなくちゃいけないなと感じていて。
やっぱりほかのスタッフも個々に
そういう意識が芽生えていると思うんです。
今回の『ゼルダ』はこういう形でまとめることができて、
そこに後悔はまったくないんですけど、
「つぎは何を作ろうか」というときに、
そういうことが建設的な意味で
新しい課題として見えてくるんじゃないかと思いますね。
|
|