よろしくお願いします。

よろしくお願いします。

前回の「社長が訊く」に引き続き
青沼さんには残っていただき、
N64版『ゼルダの伝説 時のオカリナ』の
オリジナルスタッフ篇その２をはじめたいと思います。
先ほどは同窓会のようでしたね（笑）。

はい。また楽しい話を聞かせてもらいます（笑）。

では、当時、みなさんが何を担当していたのか、
春花さんから、自己紹介をお願いします。

情報開発本部の春花です。
わたしは小泉（歓晃）さんが担当していた
リンク以外のキャラクターのモデルやアニメーションを
ほぼひとりで担当していました。

当時は、分業が進む前の時代でしたから、
ひとりで何でもしましたよね。

そうですね。
ひとりで全部をコントロールできるという意味でも
とても面白かったです。

情報開発本部の滝澤です。
キャラクターは春花さんがつくっていましたので、
僕はボスや敵キャラクターを担当していました。
そのボスを動かすことに関しては、
ＳＲＤ^（※1）の森田さんの胸をお借りして、
自分がデザインしたボスが、生き生きと動きだすのを
日々楽しみながら仕事をしていました。

情報開発本部の宮永です。
当時はフィールドデザインを担当していました。
このゲームにはたくさんのフィールドが登場しますが、
僕はそのなかで、最初の舞台であるコキリの森や、
ハイラル平原などを担当していました。

ＳＲＤの森田と申します。
先ほど滝澤さんが言われたとおり、
『時のオカリナ』ではボスキャラクターの
プログラムをメインに担当しまして、
あとは釣りのミニゲームとかも・・・。

森田さんといえば釣り、ですよね。

いえいえ（笑）。

森田さんはプログラムだけでなく、
「釣り堀」に出てくるおっちゃんの
スクリプト（テキスト）も書いていたんです。

あ、そうでした。
「釣り堀」のおっちゃんは大阪弁をしゃべりますので、
僕がまずセリフの見本を書いて、
それをスクリプトディレクターの大澤（徹）さんに渡して
手直ししてもらっていました。

あと、森田さんにはセリフだけじゃなく、
「釣り堀」のおっちゃんの顔や動きに関しても
たくさんリクエストをいただいたんです。
たとえば・・・（わきをかく仕草をしながら）
「こういう動きをしてください」とか、
わざわざラフスケッチまで描いてきて
「顔はこうじゃないといけない」とか。

ああ（笑）。

先ほど、僕は
「キャラクターをひとりでコントロールできるのが
とても面白かった」と言いましたけど、
この「釣り堀」のおっちゃんだけは
コントロールすることができませんでした（笑）。

（笑）

森田さん、それほどリクエストが多かったのは、
もしかしてリアルなモデルがいたからじゃないんですか？

ええ・・・じつはそうなんです（笑）。
僕はもともと、釣りが趣味なんですが、
実家は大阪の寝屋川にありまして、
近所にお世話になっていた釣り具屋さんがあるんです。
その店主さんがモデルといいますか。

やっぱり。

はい（笑）。

だから「ああだ、こうだ」と言われて、
少なくとも２、３回はリテイクをもらったと思います（笑）。

（笑）

森田さんの「釣り堀」に関するお話は、
のちほどたっぷりお訊きしますので
よろしくお願いします。

はい（笑）。よろしくお願いします。

さて、春花さん、滝澤さん、宮永さんの３人は、
『時のオカリナ』をデザインするメンバーのなかの
中心にいたスタッフだったわけですが、
当時はみなさん若手でしたよね。

そうですね。

春花さんは、『時のオカリナ』の前は、
どんな仕事にかかわっていたんですか？

N64時代でいうと、
『マリオ64』^（※2）でマップのデザインをして、
そのあとに入った『スターフォックス64』^（※3）では、
ＵＩ（ユーザーインターフェース）と
デモ映像のデザインや監修を担当していました。

春花さんは入社何年目になるんですか？

今年で１８年目です。９４年入社ですから。

９４年に入社して、
すぐにN64の仕事にかかわったんですか？

いえ、入社してしばらくは
小田部（羊一）さん^（※4）の指導を受けながら、
アートワークの仕事をしていました。
初仕事は『カービィボウル』^（※5）のイラストを描くことで・・・。

え？ 『カービィボウル』ですか？

はい。

春花さんだったんですか？
『カービィボウル』のイラストを描いたのは！？

あ、はい。そうなんです（笑）。

ああ・・・それは知りませんでした。
その節は、ありがとうございました。

いえいえ（笑）。

『カービィボウル』が発売されたのは
１９９４年９月でしたから、
まさに入社直後の仕事だったんですね。

そうですね。そのあと、
『ヨッシーアイランド』^（※6）のイラストを描いたりして
アートワークの仕事にかかわっていたんですけど、
スーパーファミコンからN64に移行していく時期に
次第にゲームづくりのお手伝いをするようになって、
『マリオ64』の開発がはじまってから
フィールドデザインにかかわったという流れです。

『マリオ64』のフィールドデザインには、
たくさんの人が助っ人にかり出されましたからね。

はい。宮永さんもそうでしたね。

はい。

春花さんが『時のオカリナ』で
キャラクターのデザインを担当することになって、
自分がつくらなきゃいけないものは
最初から見えていましたか？

と、おっしゃいますと？

前回の“同窓会”によると、
みんな、ゴールがまったく見えずに
一途に走っていたという感じがしたものですから。

そこは、若さゆえ、と言いましょうか（笑）。

ムービーを担当した河越（巧）さんも
「みんな若かった」と同じことを言っていました。

当時はみんな、脇目もふらずに
突進していた記憶しかないんです。

そうでしたね。

それに、毎日のように、
新しいことができるようになったり
どんどん新しいものが動いたりしていましたので、
毎日会社に来て仕事をするのが、楽しくてたまらなかったんです。

当時はまだ新しかったNINTENDO64から、
見たこともないような絵が次々と出てくるので
毎日が新鮮だったんですね。

そうなんです。
ですから、先ほど岩田さんがお話しされたように、
「ゴールがまったく見えずに」というよりも、
「ゴールのことはまったく考えずに」、
ただひたすら、無邪気に絵を描いていた感じです。

そう、無邪気に仕事してましたよね。

それくらい毎日が楽しかったんです。