社長が訊く
IWATA ASKS

社長が訊く『XenobladeX
(ゼノブレイドクロス)

社長が訊く『XenobladeX(ゼノブレイドクロス)』

目次

4. 声もかれるほどに

岩田

主人公をアバターに変更したのは、
ネットワーク対応にしたことがキッカケなんですね。

横田

そうですね。自然な流れでした、そこは。

岩田

アバターをつくって遊ぶというのは、
どんな感じですか?
自分の思い入れが変わっていいですか?

横田

もともと僕たちは、怖いと思いつつも
ネットワークゲームが好きだということもあって、
自分好みのキャラクターをつくれること自体が
楽しくてしかたがなかったです。
でも、ボリューム的な意味で、
どれだけの種類をつくるか、というところで
たくさん議論をしました。

岩田

たくさんの種類がありすぎて
キャラクターをつくるのに時間がかかるようにすると、
なかなかゲームをはじめられませんからね。

横田

でも逆に、あまりパーツを選べなくても
困りますし。

岩田

「どれも似たようなものだ」
と言われますからね。

横田

そこはかなり議論をしました。

岩田

主人公がアバターに変更されたことで
シナリオのおふたりは、
かなり苦労をされたんじゃないですか?

竹田

“大工事”がはじまる前は、
『ゼノブレイド』のようにちゃんと主人公がいて、
それ用のシナリオを書いていたんです。
そもそもわたしは、アバターが主人公のシナリオを
書くのが初めてだったものですから・・・。

岩田

客観的に見られる主人公と
自分の分身のようなアバターとでは、
シナリオ的には違う流れになりますからね。

竹田

そうなんです。ですから、
テクニカルな部分で、かなり試行錯誤をしました。
でも、シナリオを書くよりも、
アバターをつくった人のほうが
苦労されたんじゃないかと思います。
公式サイトにも載っていますが、
かなり多くのボイスが選べて
それぞれ声優さんが違っていて・・・

これは大変だったんだろうなと思いました。

竹田

横田

しかも、ただ単に声が違うだけじゃなく、
王道のものから、アニキ風とかセクシー系、
それに関西弁など、それぞれの声に
性格がついていますからね。

小島

でも、僕から見ると同じような苦労ですよ(笑)。
ちゃんと個性を持った主役が引っ張る話から、
お客さんが選んでつくるアバターが
導いていく話に変更するということは、
すごく大変な作業だと思いましたから。

竹田

まあ、時間との闘いはありましたけどね(笑)。

小島

いま、声優さんの話が出たので
ちょっと追加でお話ししてもいいですか?

岩田

はい。

小島

『ゼノブレイド』って、
バトル中にすごくしゃべるゲームなんです。

岩田

いろんなことをよくしゃべりますよね(笑)。

小島

それを評価いただいた部分もあれば、
「ちょっとうるさいね」と言われたところもあって、
「『ゼノブレイドクロス』ではどうしましょう」と、
高橋に相談をしたんです。すると
「そこは売りだと思うから伸ばそう」
と言われて、僕もそれに異論はなかったんです。

岩田

もっとしゃべらせようと?

小島

はい。『ゼノブレイド』のときは
ボイスの数にして、3000あったんです。
当時としては、はちゃめちゃに多かった量で、
モノリスソフトのプロデューサーから
ものすごく怒られたくらいなんです。
「はちゃめちゃな費用になってるから、
 ひとつ残らず、余さず使え」と。

一同

(笑)

岩田

「録ったからには使え」と言われたんですね(笑)。

小島

そうです。
「録ったからには絶対に使え」と言われました。

岩田

ちなみに、3000ボイスというのは
バトルだけで、なんですよね?

小島

はい。バトルだけで3000ボイスです。
・・・なんですけど、
今回の『ゼノブレイドクロス』は、
1万1000ボイスに増えました。

岩田

1万1000ボイス、ですか!?

小島

はい。前作の4倍くらい入っていますので、
声を聴くのがお好きな方は、
そうとう楽しみにしていただいても
いいんじゃないかなと思います。

岩田

(呆れた表情で)いや・・・
「伸ばせ」と言ったのは想像がつきましたし、
前より増えてるのも想像がついていましたけど・・・
「1万1000」という数はまったくの想定外でした(笑)。

小島

自分でも桁を間違えたと思ったくらいです(笑)。

小島

高橋

ただ、あまりに多かったので
声優さんのなかには、
収録中に、声がかれる人も出てきたんです。

一同

(笑)

横田

バトルボイスなので、声を張り上げるんです。

岩田

だって、バトルのときは
基本、シャウト(叫び)ですからね。

横田

そうなんですよ。

小島

そういった声を張った状態で、
何時間も叫び続けてもらうわけですから。

竹田

でも、声優さんって声のプロだから、
生半可のことではかれたりしませんよ。
僕らも絶叫系の作品をいろいろやってきましたけど、
「声がかれる」なんて、見たことも聞いたこともないです。

小島

なので、ちょっと反省しつつ・・・。

岩田

きっとローカライズも大変ですね(笑)。

小島

そうなんですよね。
そこは本当に反省しまして・・・
あと、マリオクラブ(※13)さんにも
大変申し訳ないと思っています。

※13
マリオクラブ=マリオクラブ株式会社。任天堂の開発中ソフトのデバッグやテストプレイを行う。

岩田

たしかにマリオクラブは大変だったでしょうね。

小島

つくることに精一杯で、
うかつにもあとのことは考えていなかったんです。

岩田

マリオクラブのデバッグ見積もりを見たとき、
わたしは一瞬、身体が凍りつきましたから。

小島

でしょうね・・・。

岩田

「なんですか、この数字は!」
と、叫んだくらいですから(笑)。

小島

関係者のみなさんには
この場を借りて、お詫びいたします。

一同

(笑)