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社長が訊く『Wii U』

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社長が訊く『Wii U』

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New スーパーマリオブラザーズ U篇

目次

1. 「何を新しくするの?」

岩田

今日は『New スーパーマリオブラザーズ U』について、
話を訊かせてもらいます。
本作は「王道アクションの『マリオ』を
新しいゲーム機と絶対、同時に発売する」という
意気込みと使命感でつくられてきたわけですが、
まず最初に、みなさんが担当されたことを含めて、
自己紹介をお願いします。

竹本

今回、ディレクターを担当しました、
情報開発本部の竹本です。

岩田

竹本さんはディレクターに任命されて、
どれくらい経つんですか?

竹本

前回のWii版(※1)の開発が
終わったあとでしたので、ちょうど3年です。

※1
前回のWii版=『New スーパーマリオブラザーズ Wii』。2009年12月に、Wii用ソフトとして発売されたアクションゲーム。

岩田

なので「開発に3年かかった」ということですね。

竹本

はい。

岩本

情報開発本部の岩本です。
前回は、1年前に出た
『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』(※2)にかかわり
その後すぐにこのプロジェクトに合流して
プランナーを担当しました。

※2
『ゼルダの伝説 スカイウォードソード』=2011年11月に、Wii用ソフトとして発売されたアクションアドベンチャーゲーム。

岩田

今回はプランナー1本なんですね。

岩本

はい、そうです。

足助

情報開発本部の足助(あすけ)です。
今回はプランナーとして、
本ソフトの売りのひとつである
「おだいモード」を担当しました。
あと、メインのモードでは
ストーリーモードのマップ画面も担当しました。
DS版(※3)Wii版のディレクターをしていたので、
今回は竹本ディレクターの良き相談役として・・・
あ、“良き”でいいかな?(笑)

※3
DS版=『New スーパーマリオブラザーズ』。2006年5月に、ニンテンドーDSで発売されたアクションゲーム。

竹本

はい(笑)。

足助

みたいな感じで、竹本さんと相談しながら、
いろいろなサポートをしてきました。

岩田

ディレクターの大変さをよくわかっているので、
「サポートしたい」と思ったんですね。

足助

はい。

竹本

『Newマリオ』になってからのディレクターは、
その当時、足助さんしかいませんでしたので
ずいぶん助けてもらいました。

足助

昔の『マリオ』のいいところを全部、
竹本さんに伝授して、よいところを守りつつ、
新しいところを伸ばしてもらいました。

岩田

そうやって伝授しないといけないくらい、
王道の2Dアクションゲームの『マリオ』は
継承しないといけないものが多いんですよね。
でも、その一方で、
「新しさがないとマンネリになってしまう」
という課題もありますよね。

足助

そうです。

岩田

しかも、このソフトよりも先に、
3DSで『Newマリオ2』(※4)が出ましたので、
ごく当たり前に、ふつうのことをしただけでは
お客さんに納得していただけないわけですよね。

※4
『Newマリオ2』=『New スーパーマリオブラザーズ 2』。2012年7月に、ニンテンドー3DS用ソフトとして発売されたアクションゲーム。

足助

はい。

岩田

そんなふうに開発のハードルが高くなって、
いちばん苦悩をされたのは
竹本さんだったと思うんですけど、
「何を新しくするの?」というところで、
まずどんなことを考えて、開発をはじめたんですか?

竹本

今回はWii版の素材を使って、
コースをつくるところからはじめました。

岩田

まだ、Wii Uの開発機材が存在しない頃から
つくりはじめていましたよね。

竹本

そうでした。
新しい『マリオ』をつくるにしても
基本的な遊びが変わることはないので、
まずはコースからつくりはじめたんですけど、
それと同時に
「どうやって新しい遊びを入れたらいいのか?」と
そのことをずっと考え続けていました。
 
そうしていたところに
Wii U GamePadの話があって、
自分のなかでいろんなアイデアを洗い出しして、
手塚(卓志)さん(※5)や木村(浩之)さん(※6)
相談していきました。

※5
手塚卓志=『スーパーマリオ』シリーズや『ヨッシー』シリーズ、『どうぶつの森』シリーズなど、数多くのゲーム開発にかかわる。情報開発本部制作部統括。過去、社長が訊く「スーパーマリオ25周年」『スーパーマリオ』生みの親たち 篇社長が訊く『ゼルダの伝説 大地の汽笛』携帯機ゼルダの歴史 篇社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ Wii』その2社長が訊く『スーパーマリオ 3Dランド』プロデューサー 篇E3 2012 特別篇 社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ U』E3 2012 特別篇 社長が訊く『New スーパーマリオブラザーズ 2』に登場。
※6
木村浩之=情報開発本部制作部所属。『スーパーマリオアドバンス』シリーズや『New スーパーマリオブラザーズ』『New スーパーマリオブラザーズ Wii』などの開発にかかわる。過去、社長が訊く「スーパーマリオ25周年」『スーパーマリオ』シリーズ開発経験者 篇 その1に登場。

岩田

そのときはどんな話になったんですか?

竹本

「4人のプレイヤーがいて、
 さらにもうひとりがWii U GamePadを
 タッチするだけでブロックを出せる」
という話をしていました。

岩田

じゃあ“相棒”とのプレイを意味する、
「バディプレイ」のアイデアは
わりと最初のうちから入っていたんですね。

竹本

そうですね。
でも、実現できるかどうか、
不安なところがありました。
というのも、じつはDS版の『Newマリオ』を
つくったとき、下画面をタッチして
いろんな遊びを試してみたんですが、
「『マリオ』の遊びとしてはイマイチだなあ」
という経験があったんです。

岩田

「それを実現させるのはかんたんじゃない」
ということは、最初からわかっていたんですね。

竹本

そうです。でも、その一方で、
「なんの説明をしなくても遊べるものをつくりたい」
というテーマがずっと、自分のなかにありました。
以前、DSを発売するときに、
お客さん向けの体験イベントを開きましたよね。

岩田

「Touch! DS」(※7)ですね。

※7
「Touch! DS」=「ニンテンドーワールド Touch! DS」。ニンテンドーDSの発売を前に、2004年の11月に、全国5か所で開催された、任天堂主催の体験イベント。

竹本

そうです。僕は当時、
『キャッチ!タッチ!ヨッシー』(※8)
開発にかかわっていて、
その説明員として会場に行ったんです。
そのとき、2歳くらいのお子さんが遊びに来られたので、
「こうやって線を引いて遊ぶんだよ」
と説明したんですが、
ぜんぜんわかってもらえなかったんです。

※8
『キャッチ!タッチ!ヨッシー!』=2005年1月に、ニンテンドーDS用ソフトとして発売されたタッチペンアクションゲーム。

岩田

まぁ、2歳くらいのお子さんだと、
ちょっと難しすぎたのかもしれませんけど・・・。

竹本

でもその経験から、なんの説明をしなくても
すぐにわかってもらえる操作にすることが、
自分のテーマのひとつになったんです。

岩田

「直感で遊べるものをつくりたい」ということですか。

竹本

はい。言葉が理解できないようなお子さんでも
「何か反応が起きるようなものをつくりたい」、
そう思いました。
そこで、Wii U GamePadのタッチスクリーンを使って、
「『マリオ』というアクションゲームにどう活かせるか」
いろいろ検討してみたんですけど、
単純にマリオを動かそうとすると、
タッチ操作は、Wiiリモコンの操作に劣ってしまうんです。

岩田

マリオのアクションは、
ボタン操作のほうが適していますからね。

竹本

そうなんです。
そこで、タッチをしたときに
ブロックが出ればわかりやすいですし、
実際に試してみると、遊びになることもわかったんです。
そこで、その遊びをどんどん詰めていくことにしました。

岩田

でも、ブロックを好きに出せるようにすると、
マリオがいろんなところに行けるようになってしまって、
難易度が劇的に変わったり、
ゲーム性を破壊してしまう、というような
恐怖を感じたりはしませんでしたか?

竹本

その不安はもちろんありました。
最初はブロックを出すと
元の地形がまったく不要になって、
かといって、複雑な条件をつけていくと・・・。

岩田

ぜんぜん直感的ではなくなりますよね。

竹本

そのとおりです。

岩田

それに「ブロックを自由に出せる」ということは、
初心者を救済する機能につながっても、
ゲームがうまい人にとっては、
「こんなの自分には関係ない」
というふうになるじゃないですか。

竹本

はい、そこがネックでした。

岩田

ところが、このゲームは最終的に、
ゲーム初心者の人も、熟練者の人も
「両方が満足できるバランスになった」
という印象があるんですが、
それはどうやって実現できたんですか?

竹本

そこを足助さんに助けてもらいました。

岩田

お、“良き相談役”の登場ですね(笑)。

足助

(笑)