岩田
今日は、『マリオ』シリーズを語るのに
欠かすことのできないメンバーのみなさんに
集まっていただきました。
林田さんは2度目の登場ですね。
前回、みなさんのお名前がたびたび登場しましたので、
今日はさらに踏み込んだ話をお訊きしたいと思います。
よろしくお願いします。
一同
よろしくお願いします。
岩田
では、いきなり本題に入ろうと思います。
『スーパーマリオ 3Dランド』がいよいよ発売になりますが、
まず、この企画はどのようにはじまったんですか?
小泉
『ギャラクシー2』(※1)のあと、林田さんが
「これまでつくってきた3Dマリオへの
入り口となるようなゲームをつくりたい」
と言ってたんですけど・・・林田さん、覚えてる?
林田
はい、覚えています。
岩田
前回の「社長が訊く」で、
企画の言い出しっぺは林田さんだったと聞きました。
小泉
そうです。
それで『ギャラクシー2』がおわった年の
夏から秋ぐらいにかけて、方針を定めていきました。
宮本
秋の時点で、マリオが走り回るところまでの
試作品ができていたよね?
林田
はい。ただ、その時点では、プレイヤーと地形の関係がわかるように、
簡単なものだけを組んでいたくらいでした。
地形をつくって、コインとブロックだけを配置して、
そこでマリオを動かして・・・。
小泉
マリオというよりブロックみたいなものが
跳んでいたような気がするけど?
林田
あ、そうですね。
正確に言うと、マリオの代わりに
四角いブロックを動かして確認していました。
小泉
ちなみに『ギャラクシー』(※2)のときはキノコでした。
岩田
え? キノコが動いていたんですか?
小泉
「これはマリオだ」ってみんなでイメージしながら、
画面ではキノコがジャンプしていましたから(笑)。
岩田
へえ~、そうなんですね。
では、実際にソフトをつくりはじめるとき、
どんなことをお題としましたか?
小泉
「誰でも遊びやすい2Dに近い3Dマリオにしたい」
というお題は、早い時期からあったと思います。
2Dと3Dの大きな違いのひとつはカメラですけど、
『ギャラクシー2』でも使った並行カメラを利用して
操作しやすいように調整しながら進めました。
岩田
「並行カメラ」とは、
マリオの位置から一定方向に一定距離を保って移動する
カメラのことですね。
林田
はい。その、並行カメラなら、
映像の方向が決まっているので迷いにくいんです。
『ギャラクシー2』で、
3Dマリオでの並行カメラの実績もつくれたので、
最初からそれで展開しようという読みはありました。
読みといえば、いままで3Dで積み上げてきたものと
従来の2Dマリオのルールをミックスすれば、
何か面白いものができるんじゃないか、とも思っていたんです。
岩田
前回は「2Dマリオと3Dマリオの架け橋」
という言い方をしましたが、
2Dマリオと3Dマリオの魅力をうまく混ぜられないか、
という構想は、最初から意識していたんですね。
林田
はい。あと、これはあくまでも個人的なことなんですが、
当時、マリオを手がけられた宮本さんや手塚さんが
どのようなものづくりをしていたのか、
ということに僕は非常に興味があったんです。
岩田
林田さんは、とくに研究していますよね。
いつも、宮本語録を持ち歩いていますし。
林田
あ、はい。じつは今日も持ってきています。
宮本
記憶にないことも書いてあるけど(笑)。
一同
(笑)
林田
ちょうど昨年は、
ゲームセミナー(※3)の講師も担当しましたので、
宮本語録を生徒さんに伝えたり、自分で分析したりしていたんです。
それで、ファミコンの『マリオ』(※4)のつくりを分析して、
今回のゲームで展開させようと思いました。
それがものすごく自分のモチベーションにつながっています。
小泉
それ・・・まるで学者さんみたいだよね。
林田
そうかもしれません(笑)。
岩田
『マリオギャラクシー2』という
3Dマリオの最新作をつくったあと、
今度は最新のハードに、2Dマリオをつくったときの手口を
反映させたらなにができるのかを、考えていったんですね。
考古学のように、いろいろなやり方を発掘しながら。
小泉
考古学の林田博士だね(笑)。
林田
はい(笑)。
あの・・・あくまで僕の分析なんですが、
『サンシャイン』(※5)や『ギャラクシー』などのつくり方を見ていると、
小泉さんは新しいものを次々に突きつめるタイプだと思うんです。
その新しいものを、ずっと僕も一緒に面白がってつくってきましたし(笑)、
ただ僕は別の話として、こと“ゲーム性”に関しては、
子どものころに遊んだ昔のマリオのような、
いわゆるマリオとしての“ゲーム性”が
今後に継承されて、発展していく必要があるとも思っているんですね。
あ、すみません、なにか大それたことを言っていますけど・・・。
小泉
いや、論文みたいで面白いよ(笑)。
林田
すみません(笑)。
だから、僕らが昔、子どものころに遊んで楽しかったことも、
いまの子どもたちにも伝わったらいいなと思っているんです。
岩田
かつて自分が面白かったと感じたその“思い”を
いまの人たちにも感じてほしい、ということですね。
林田
はい、それが僕の気持ちなんです。