岩田
では、『スーパーマリオ 3Dランド』の開発を担当した
東京制作部のみなさんに集まっていただきました。
どうぞよろしくお願いします。
一同
よろしくお願いします。
岩田
いろいろとチャレンジの多い開発だったと聞いていますが、
まずは自己紹介からお願いします。
林田
ディレクターを担当した、東京制作部の林田です。
今回の企画の言い出しっぺです。
ゲームを立体映像でプレイするのは
子どもの頃からの夢でした。
ですから、立体映像のマリオを
どうしてもつくりたかったんです。
岩田
林田の野望、ですね。
林田
はい(笑)。
さまざまな仕様の作成や全体調整を行いました。
元倉
同じく東京制作部の元倉です。
デザインリーダーを担当しました。
デザインのとりまとめや、マリオの動きの設計、デモ設計、
大まかなストーリー決めなど、いろいろ担当しました。
菅原
同じく東京制作部の菅原です。
今回はプログラムリーダーを担当したり、
個人の仕事としては、クッパやクリボーのような
敵キャラクターのプログラミングを担当しました。
よろしくお願いします。
辻村
同じく東京制作部の辻村です。
プランナーリーダーとして
プランナーメンバーのとりまとめと、
チームメンバーから引き出したアイデアを
商品に反映させる橋渡しなどをしてきました。
岩田
このチームは、『スーパーマリオギャラクシー』シリーズ(※1)など、
長年3Dマリオを制作してきたチームですよね。
ちなみに、ここでいう3Dマリオとは
ポリゴンでつくられた空間の中で遊ぶマリオのことで、
今回はそれに立体映像が加わったということになります。
今回は林田さんの子ども時代からの夢である「立体映像のマリオ」で、
どのような遊びをつくろうと思ったのか、
そのとっかかりから教えてもらえますか?
林田
僕らは『マリオサンシャイン』(※2)から
『ギャラクシー2』まで
ずっと3Dマリオをつくってきたので、
普通なら『ギャラクシー』をそのままニンテンドー3DSへ・・・
と考えるんですが、
「はたしてそれでいいのかな?」と思っていました。
だから、今回、僕がいちばんはじめにチームに言ったのは
「リセット」でした。
岩田
キーワードは「リセット」ですか。
林田
そうです。
これまでのルールをすべて一から見直して、
いろいろ考えてみようと思いました。
岩田
3Dマリオのリセットでもあるわけですね。
林田
はい。そもそも、僕たちはずっと、
据置機のソフトをつくってきたので・・・。
岩田
あ、そういえば・・・携帯機初仕事ですか?
林田
ええ、初仕事です。
だから、いろいろとわからないこともありました。
たとえば、携帯機は持ち歩けるから、
通勤中の電車の中でプレイする方もいますよね。
僕、自宅の最寄り駅から会社まで数駅なんです。
だったら、その時間でクリアできるくらいのもの・・・
いつでも電車を降りてやめられるくらいの
手軽なコースを目指すのがいいんじゃないか、
とはじめに思ったんです。
岩田
『ギャラクシー』シリーズとの、大きな違いのひとつですね。
林田
そうです。
『ギャラクシー2』は僕の中で、
中華料理の“満漢全席”のイメージなんです。
岩田
はい(笑)。
林田
「こんなにいろいろありますから、どれでも食べてください!」
というゲームですね。
全部食べるには何時間もかかるし、
食べおわるとお腹がいっぱいになる。
『サンシャイン』から蓄積していったものを
すべて詰め込んだので、
それこそ「何でもあります!」というゲームを
『ギャラクシー2』でつくったつもりだったんです。
岩田
次はもっと、次はもっと、とした結果、
どんどん大きく、豪華になっていった、ということですね。
でも一方で、「それはお客さん全員にとっていいことなのか」
という課題が生まれたわけですよね。
林田
ええ。ですから、今度は“満漢全席”じゃなくて、
手軽にサクサク食べられる
“ハンバーガー”みたいな気軽なゲームを目指そう、と。
そこから考えていくことにしました。
岩田
携帯機ならではのゲームづくりですね。
林田
それともうひとつ、『ギャラクシー2』からの課題として、
「『2Dマリオのお客さん』と『3Dマリオのお客さん』の乖離」
がありました。
岩田
確かに、
「わたしは2Dマリオは遊ぶけれど、3Dマリオは遊ばない」
と言い切る方もいらっしゃいますよね。
わたしが『ギャラクシー2』のときに
「はじめてDVD」(※3)をつける提案をしたのも、
3Dマリオに慣れ親しんだ人と
そうでない人の差がすごく広がっていて、
触る前から「3Dマリオなんてわたしには無理無理!」
というお客さんが多かったからなんです。
これは、林田さんたち3Dマリオ一筋の人からすると、
かなり寂しいことですよね。
林田
僕らは「3Dマリオはおもしろい!」という強い思いがあるので、
「もっと多くの人に、このおもしろさをわかってもらいたい!」
と感じていました(笑)。
だから今回は、そんな『ギャラクシー2』のときよりもさらに、
これまでつくってきた3Dマリオへの入り口となるような
ゲームを目指すことにしたんです。