1. 「空を見上げたくなるんです」
岩田
Wii UでGoogle マップ(※1)の
ストリートビュー(※2)機能を利用できるソフト、
『Wii Street U powered by Google』についてお訊きします。
今日はちょうど、アメリカのGoogle(※3)本社で
ストリートビューの製品責任者を務める
河合さんが一時帰国される機会にあわせて、
こうして、直(じか)にお会いすることができました。
お忙しいところ、ありがとうございます。
河合
いえいえ、こちらこそ。
今日はよろしくお願いいたします。
岩田
よろしくお願いします。
さっそくなんですが、河合さん。
今日は開発チームが「河合さんにぜひお見せしたい」と、
最新バージョンのROMを持ち込んでいるんです。
お話を訊く前に、わたしも一緒に
それを見せてもらおうと思いますが、よいですか?
河合
いいですね、ぜひ。
岩田
では、鈴木さんから。
簡単に自己紹介もお願いします。
鈴木
環境制作部の鈴木です。
ディレクションを担当しています。
今回はGoogleさん、チームラボ(※4)さんに
おしかけて、はじめての門を
たくさんたたく仕事をしてきました(笑)。
岩田
鈴木さんは先日アメリカのGoogle本社で
『Wii Street U powered by Google』の
プレゼンをしてきたんですよね。
鈴木
はい。今回、システムの基礎部分を
海外で開発している
Nintendo Software Technology(NST)(※5)の
スタッフと一緒に行ってきました。
河合
先日は、はるばる来ていただいて
ありがとうございました。
あれからみんな、リリースをすごく楽しみにしてますよ。
鈴木
ああ、よかったです!
大橋
チームラボの大橋です。
今回UI(※6)などのプログラムで、
お手伝いをさせていただいています。
岩田
大橋さんは、しょっちゅう鈴木さんにおしかけられては、
つぎつぎの未経験のことを「これやってください」と頼まれ、
そのうえ「明日までになんとかしてください」とか
いろいろ無茶な要求を引き受けていただいているんですよね(笑)。
大橋
はい、今日のROMも今朝ギリギリでなんとか(笑)。
今回は鈴木さんと一緒に、海外のNSTさんと
時差を利用して昼夜リレーをするようにつくるといった、
国際的な開発を経験させてもらいました。
高橋
企画開発本部の高橋です。
えー、鈴木の上司です(笑)。
河合さん、先日はお世話になりました。
やっとごあいさつができました。
わたしは、以前は別の部署で、
ゲームのディレクションやプロデュースを担当していたんですが、
ここ数年は「ゲームをつくる環境を整備するプロジェクト」や、
『脳トレ』(※7)のように、
以前はゲームの範疇(はんちゅう)には入っていなかったような
新しいジャンルの製品化プロジェクトを
広く見る役割を担当するようになり、
今回もそういったかかわりをしています。
河合
今日はみなさん、よろしくお願いします。
鈴木
はい、でははじめさせていただきます。
このように『Wii Street U powered by Google』は、
Wii U GamePadの画面をテレビの画面にも表示して
複数人でストリートビューを見ることができます。
あと、こうやって・・・
見たい方向に向けたWii U GamePadの画面と、
同じ風景がそのままテレビ画面に映ります。
河合
「見たい方向を向くだけ」というのが
直感的でわかりやすいんですよね。
PCやタブレットで見るよりも圧倒的に快適で、
サクサク見られる感じがすごくいいです。
岩田
はい、Wii U GamePadには、
ジャイロセンサーや地磁気センサー(※8)が搭載されていて、
見たい方向にWii U GamePadを向けるだけで
その向きに連動する風景がWii U GamePadの画面に映せるんです。
ちょうど、のぞき窓を通じて、
その場所にいるような感じが味わえるんですね。
この画像はテレビのほうにも映し出すことができるんですが、
ストリートビューの写真はかなり高い解像度で用意されているので、
テレビ画面で見ると、より細かいディテールが見えて
これがすごく臨場感があるんです。
鈴木
横360度のほかに、上も見上げられます。
こんな感じに・・・。
岩田
けっこう真上まで見上げられるんですね。
PCではあまり意識して見ていなかったんですが、
実際はここまでちゃんと撮ってあるんですね。
河合
みんな無意識に空を見上げたくなるようなんですよ。
なので、機材をアップデートした時に、
空をきれいに撮影できるように
カメラの角度なんかを工夫しているんですよ。
岩田
ああ、使っている人がどこを見ているのか、
Googleさんは、サーバーのログでわかるんですものね。
みんな、空を見上げたくなるものだ、ということですね。
河合
でもこうやって大きなテレビで見ると、
ちょっと古い写真が混じっていると
すぐわかってしまいますね(笑)。
これはもっと解像度を上げないといけないかな?
一同
(笑)
鈴木
NASAのケネディ宇宙センター(※9)に来ました。
格納庫にはスペースシャトル(※10)が置かれています。
ここで上を向くと、つばさのウラ側を
見ることができます。
ズームアップして見ると、こんな感じに・・・。
河合
タイルがはがれかけているのがわかります。
岩田
本当にいろんなところに出かけて、
すみずみまで撮っておられるんですね。
Googleのみなさんががんばって撮ったところが、
これでぜんぶ見てもらいやすくなるんじゃないですか?
河合
ありがとうございます。
でもこの間、本社で見たものから
どんどん変わっていますね。ビックリしました。
岩田
このプロジェクトって、
企画が立ち上がってからこうして
ご紹介できるまでの時間が、すごく短いんですよ。
ゲームをつくるときには、
画面に映すデータもぜんぶ自分たちでつくる必要があるんですが、
今回は、データはもう世界中の街並みの風景画像が
Googleさんのサーバーに準備されているので、
ウェブ技術に親和性のある仕組みが準備できると、
どんどん進むんです。
こういったスピード感ある開発は、
わたしたちも最近まであまりなかったので、
すごくワクワクしているんです。
河合
このWii Uで見るとき何がいちばんいいかって、
リビングでリラックスして
ゆったり見られるところだと思うんです。
実用目的でつくったものが、
こんなふうに楽しめるものになったのが
すごくうれしいですね。
わたし、Wii Uを買ったばかりなんですけど、
早く家でも見たいなぁ(笑)。
一同
ありがとうございます!
河合
じつはわたしも今日、
お見せしたいものがあるんです。
最近やっと量産化したもので、
おとといはじめて、日本に持ってきました。
岩田
これは・・・?
わぁ・・・人が背負って撮影する機材ですか!
河合
はい。ストリートビューを撮影する機材は、
車や三輪車など数種類あるのですが、
今回持ってきたのは、せまいところも撮影できるようにと
小型軽量化した、できたてほやほやの最新機材です。
500万画素のカメラが15個付いているんですが、
それをあとでパノラマ状にくっつけると
7500万画素のストリートビューの写真になります。
岩田
これ、見た目はちょっと愛嬌ありますよね。
名前はあるんですか?
河合
トレッキング(山登り)から取って、
“トレッカー”と呼んでいます。
いままでは階段や山道の撮影は難しかったんですが、
これから行けるところが飛躍的に増えると思います。
先日はこれでグランド・キャニオン(※11)を歩いてきたんです。
岩田
「ハードからつくってしまおう」
というのはうちと一緒ですね。
それが民生用か業務用かのちがいくらいで。
河合
市販の機材でできるといいんですが、
いろいろ余計なものが付くので
どうしても重くなってしまうんですね。
だからバッテリーも特注して、
密度の高い電池をグラム単位で軽くしたり・・・。
あの、もしよろしければ、岩田さんも背負ってみますか?
岩田
えっ、いいんですか?
じゃあ担いでみようかな(笑)。
(席を立って)これは何kgくらいあるんですか?
河合
40ポンド(※12)なので、18kgくらいですかね。
岩田
では、ちょっと失礼して、よいしょ、っと・・・。
「社長が背負う(しょう)」ですね。
こんな感じでいいんでしょうか?
河合
はい、そんな感じです。
岩田
これは、人がいろんなところを歩くと、
そのまま写真を撮っても当然ブレますよね。
それは自動補正されるんですか?
河合
複数の慣性のセンサーが付いているんですけど、
歩くときの上下、左右の揺れや、
山を登るとき傾いたカメラの向きを水平にしたり、
いろんな補正をあとで行います。
岩田
なるほど・・・いや、それをぜんぶ
ちゃんと補正するのは、
想像するとすごくたいへんですよね。
わたし一応、プログラマーでしたので、
そこが気になりました(笑)。
河合
あ、そうですよね(笑)。
完全な自動補正ではないんですが、
ちょっとした技術を使ってあとでいろいろやってます。