岩田
今日は『ファイアーエムブレムif』(※1)の
開発に携わったみなさんに集まっていただきました。
よろしくお願いいたします。
一同
よろしくお願いいたします。
岩田
前田さんがひとりだけ
「リセット上等」のTシャツ(※2)を着てますけど、
『スプラトゥーン』(※3)に対抗ですか?(笑)
前田
いえいえ(笑)。
岩田
やっぱり『ファイアーエムブレム』は
「リセット上等」を代表するタイトル(※4)ですからね。
前田
はい。
岩田
では、自己紹介からはじめていただきましょうか。
樋口
インテリジェントシステムズ(※5)の樋口雅大です。
前作の『覚醒』(※6)では、
プロジェクトマネージャーを担当しましたけど、
今作ではプロデューサーとして、開発にかかわりました。
岩田
プロデューサーは初めてですか?
樋口
はい。初めてです。
僕は入社してから、ほとんど
『エムブレム』シリーズにかかわってきましたけど・・・。
岩田
『エムブレム』一筋でつくってこられましたが、
ついにプロデューサーに・・・?
樋口
でも、やってることは
プロジェクトマネージャー時代と
ほとんど変わらないです。
ただ、変わったことがあるとすると、
ちょっとだけ心労が増えたかなと・・・。
岩田
肩書きと心労が変わったんですね。
樋口
はい。そんな感じです。
前田
インテリジェントシステムズの前田耕平です。
今作ではディレクターを担当しました。
『覚醒』のときもディレクターだったのですが、
同時に3本(※7)つくったというのは、
今回が初めてのことになります。
岩田
本当に3本つくりましたからね。
前田
そうですね。
岩田
3本を同時につくるという、
一見、無謀にも思えるチャレンジが、
どのように進んでいったのか、
あとでじっくり訊こうと思いますけど、
「3本つくるなんて言わなきゃよかった」と、
少しくらいは後悔しませんでしたか?
前田
いえ、ぜひつくりたいと思っていました。
岩田
まあ、せっかくつくった舞台ですから、
もっとたくさんの物語がそこでは表現できると、
いつも考えておられたでしょうからね。
前田
はい。
岩田
で、樹林さん、はじめまして。
樹林
はじめまして。
岩田
今作から加わっていただいたとお聞きしていますが・・・。
樹林
はい。ストーリーを担当しました、樹林伸(※8)です。
岩田
原作者や脚本家でもいらっしゃる
樹林さんのことを、ご存じの方も多いと思うのですが、
その一方で、作品と樹林さんのお名前が
つながっていない方もいらっしゃると思いますので、
これまでのお仕事を簡単に話していただけますか?
樹林
はい。もともと僕は編集者で、
長らく出版社にいたんですけど、
そこから独立して、漫画の原作を・・・
たとえば『金田一少年の事件簿』(※9)や
『サイコメトラー』(※10)、『GetBackers-奪還屋-』(※11)、
それにワインの漫画の『神の雫』(※12)などの
原作を書いたり、編集をしたりしました。
岩田
テレビのお仕事もされてるんですよね。
樹林
そうですね。たとえば『HERO』(※13)という
木村拓哉くんのドラマの企画をやってみたり、
映画の企画をやったこともあります。
また、小説もけっこう書いていまして、
『ビット・トレーダー』(※14)や『陽の鳥』(※15)、
それに、まだ本にはなっていないんですけど、
『ドクター・ホワイト』(※16)を
角川書店さんの『野性時代』に連載しています。
岩田
はい。
樹林
あとは、たまに舞台の仕事もしていまして、
市川海老蔵(※17)くんといっしょに、
『石川五右衛門』(※18)という
歌舞伎のストーリーを担当しました。
そのように、基本的には、
物語を考える仕事をやっています。
岩田
樹林さんは、
いろんなエンターテインメントのなかで、
メディアの形態を問わず
物語を考える仕事をされてきたんですね。
樹林
そうです。メディアが違っても
物語を表現することは同じだろうと考えています。
岩田
で、ゲームの世界では・・・?
樹林
ゲームの仕事では、いくつか、
ちょっとずつかかわったことはあります。
でも、今回のように、こんなに深く、
本格的にストーリーをつくったのは初めてです。
岩田
いろんな分野で活躍されている樹林さんが、
ゲームの物語を書くにあたって、どんなことを感じたのか
とても興味がありますので、
のちほどお訊きしたいと思っています。
樹林
はい。ぜひ。
岩田
では、横田さん。
横田
『覚醒』に引き続き、
任天堂側のディレクターをしました、横田弦紀です。
岩田
アウトプットの時期がちょうど
『ゼノブレイドクロス』(※19)と重なりましたね。
横田
そうですね。それで、ちょっと苦労しましたけど、
楽しく開発ができたと思っています。
岩田
前作の『覚醒』は、ポジティブな評価を
たくさんいただけたところがありましたので、
いいムードでつくることができたんじゃないですか?
横田
はい。かなりいいムードでした。
なかには厳しいご意見もいただきましたので
そこは真摯に受け取って、
前田さんとバトルを繰り返しながら
今作をつくりました。
山上
任天堂のプロデューサーの山上仁志です。
岩田
山上さんは、久しぶり(※20)になりますね、
「社長が訊く」に出るのは。
山上
そうですね。
やっぱり、若手がどんどん育ってきていますので、
僕は後ろのほうに引っ込んでいてもいいかなと。
でも、今回の『if』では、
ゲームの根幹にかかわるところで
意見をしたりしましたので
久しぶりに出てみようと思いました。
岩田
はい。
それでは最初に、物語の部分で
樹林さんに加わっていただくことになった
ご縁や経緯の話からお訊きしたいのですが・・・。
どうやって樹林さんに行き着いたんですか?
というのも、樹林さんは、
原作を書かれている作家さんのなかでも、
そうとうお忙しい方だと思いますので・・・。
樋口
そうですね。
では、どこから話しましょうか・・・。
山上
まずは、シナリオがダメだった話から・・・。
樋口
はい?
山上
『覚醒』のシナリオが批判された話から
はじめてもいいんじゃないでしょうか?
樋口
あっ、はい。そうですね・・・。