それでは最後に、それぞれのお立場から、
『ファイアーエムブレムif』のお客様に対して、
アピールポイントをお伺いしたいんですけど、
今回、初めて加わっていただいた樹林さんからお願いします。

はい。物語のおもしろさというのは
やっぱり“意外性”だと思ってるんです。

予定調和だと作業になりますからね。

そうなんです。その“意外性”を
３本それぞれのラストに用意しましたので、
最後まで遊んでほしいですね。
それが僕の言いたいことのひとつで、
もうひとつは、自分は
「こっちの国を選んだけど、
　あっちにつけばよかったかな」ということを、
つねに考えながらやってほしいですね。
そのような葛藤があるなかでプレイすると、
あの世界にどっぷり入れるような気がします。

敵の言葉にも、味方の言葉にも、
それぞれ深く共感できるということなんですね。

ええ。裏切りとか
“意外性”がつねにある物語になっていますので、
最後までやりこんでほしいですし、
できれば、何回もやってもらえるとうれしいですね。
掘れば掘るほどいろんなものが出てきますし、
「これって、伏線だったんだ」
と気づくこともあると思います。

ありがとうございます。
では、前田さん。

ゲーム面でのアピールポイントになるんですが、
今回も「結婚システム」^（※32）を入れていまして、
プレイヤーの分身であるマイユニットは、
すべての仲間と結婚できるようになっています。

前作と変わったところはあるんですか？

結婚相手の兵種になれるようになりました。
たとえば、アーマーナイト（重騎士）の結婚相手が
忍者であれば、その忍者になれるんですね。
なので、結婚相手も、より悩みながら
選んでいただけたらなあと思っています。

結婚相手を選ぶときも、
「もしも誰と誰を結婚させたら」みたいな
“if”が入るんですね。

そうですね。
あと、先ほどお話しした「マイキャッスル」で
相手のお城を訪問して、アクセサリーをプレゼントすると、
だんだん仲良くなれるんです。
その仲の良さが最大限に達すると
２人の絆の結晶として、
「絆ユニット」というものが仲間になります。
なので、本編だけでなく
「マイキャッスル」のほうも楽しんでほしいですね。

なにしろ、「マイキャッスル」だけでも
ゲーム１本分あるわけですからね。

はい（笑）。

僕の言いたいことは
樹林さんの話につながるんですけど、
僕自身、開発中に何度もプレイしたのですが
物語に奥深さがあるので、
何回遊んでも飽きないんです。
なので、僕自身も発売するのがすごく楽しみで、
発売後もはじめからプレイしたいな
と思える商品になったと思います。

仕事でとことん遊び倒したのに、
まだ遊び足りないんですね。

はい。あと、先ほどの
「・・・・しばらくお待ちください」の話で
思い出したことなんですけど、
前田さんは、ずいぶん前に考えたネタを
今回の『if』に入れているんです。
たとえば「固有スキル」というのがありまして、
キャラクターの個性を出すために、
そのキャラの性格に応じたスキルを覚えるんですが、
そのアイデアは『覚醒』をつくっているときに、
僕がお願いしたことだったんです。

そのとき、前田さんは
「・・・・しばらくお待ちください」と？

はい（笑）。でも、今回の『if』には、
最初から入っていたんです。
あと、「竜脈」^（※33）というのがあって、
地形に変化を与えると、たとえば川が干上がって、
歩兵でも川を渡れるようになるのですが、
それも『覚醒』の企画中に考えていたアイデアだったんです。
前田さんはそういうことを忘れずに・・・。

かつて生まれたネタを忘れずに、
長い時間、じっくり考えて、
今回の『if』に反映させているんですね。

そうなんです。

さすがは
“ミスター・しばらくお待ちください”ですね（笑）。

（笑）

はい。樋口さん。

４月２０日に『ファイアーエムブレム』は
２５周年^（※34）を迎えることができました。
今回の『if』は、２５周年を飾るにふさわしい
大作になったと思いますので
ぜひ遊んでほしいと思っています。

前作の『覚醒』のときに、
「これが最後だ」と覚悟したのに、
無事に２５周年が迎えられました。

はい。おかげさまで。
２５年前は前田のＴシャツのように
「リセット上等」が当たり前のシリーズでしたが、
初心者の方にも遊んでいただけるようにと、
ゲームの難易度を下げつつ前々作から
「カジュアルモード」^（※35）を用意しまして・・・。

カジュアルモードというのは
仲間が一度倒されても、次の面で
復活するモードですね。

はい。そのモードで
本編をなぞるだけでも、１００パーセントの人が
エンディングを迎えられると思ったんです。
ところが、それでも最後まで
遊んでいただけない方がいらっしゃったんですね。
そこで、今回の『if』では
さらに難易度を下げるという選択肢はとらず、
「フェニックスモード」^（※36）を用意しました。
このモードは、その名のとおり“不死鳥”のモードで、
キャラクターがやられても、
次のターンのときに生き返るのですが、
じつはこれも、前田の提案で実現したんですよね。

はい。

このフェニックスモードを選べば、
シミュレーションＲＰＧが苦手な方でも
『ファイアーエムブレム』の世界を楽しめますので
ぜひ最後まで遊んでいただければと思っています。

はい。では最後に山上さん。

わたしは、
「買う前に、どちらにするか、
　みなさんにじっくり考えてほしい」と思っています。
もちろん、どちらのバージョンもおもしろさは保証しますが、
いろんな情報をチェックして、
「自分はどっちを遊ぼうか」ということを悩んで、
選択を楽しんでほしいと思います。
「ゲームを購入する前から遊びがはじまっている」ことを
ぜひ体験していただきたいんです。
ネットの情報を見ると、
「『暗夜王国』のほうが難しい」というようなことが
書かれていたりしますけど、大丈夫です。
僕は、『暗夜王国』からはじめたんですけど
最後までふつうに遊べましたから。

もともと山上さんは、プレイヤーとして
シミュレーションが得意なわけではないですよね。

はい、そうなんです。
性格的に、１ユニットを動かすのに、
そんなに長考できないタイプなんです。
なので、安易に動かしてしまって一撃で倒される、
みたいなことが多いんですけど、
それでも最後まで遊ぶことができました。
なので、安心して、好きなほうを選んでほしいです。

ちなみに、
「ストイックでないと
　『エムブレム』ではない」という
エムブレマーの方もいらっしゃいますよね。

はい。

そんなエムブレマーの方たちが
ストイックに遊べるような仕掛けも
ちゃんと用意されてるんですよね。

もちろんご用意しています。
「ルナティック」^（※37）というと、
難しすぎるかな・・・。

そうですね、ルナティックはかなり・・・（笑）。

ルナティックは、開発した人でも、
「どうやって解くのか？」というくらい
難しいんでしょう？

そうなんです。そういった
高難易度を選んでいただくこともできますし、
あと「クラシックモード」^（※38）がありまして、
そのモードを選ぶと、倒されたユニットは、
二度と戻ってこないんですね。
なので、仲間を全員、生き残らせたいと思うと、
一手一手を慎重にやらなければいけませんし、
それでも、もし倒されてしまったら・・・。

「リセット上等」なんですね。

はい（笑）。

ですから「骨太の『エムブレム』をやりたい」
というエムブレマーの方は、
クラシックモードを選んでいただくと、
すごくやりごたえのある、
『エムブレム』らしい遊びができますので、
ぜひ試してほしいと思います。

はい。それにしても、樹林さんには、
結果的に、ものすごい量の多い、
無茶な仕事をお願いしてしまったわけですけど、
それでも、楽しんでやっていただけたと
いうこともわかりましたので、
今回、話をお訊きすることができてよかったです。

やっぱり楽しい仕事はいいですね。
いろいろといい経験もできましたし。

・・・ということは、
次回作も書いていただけるんでしょうか？（笑）

あっ、「・・・・しばらくお待ちください」
って、言わせたいんでしょう？（笑）
そのときのスケジュール次第ですので、
いまは何とも言えないんです。
でも、今回の仕事はホントに楽しかったしなあ。

（笑）