社長が訊く
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社長が訊く『Wii U』

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社長が訊く『Wii U』

Nintendo×JOYSOUND Wii カラオケ U 篇

目次

4. 「歌い込み」

服部

コンセプトは山上さんが
お話しされたとおりなんですけど、
わたしもカラオケに行くほうではなかったので、
とりあえず、まずはひとりでカラオケに行ってみました。

岩田

え、ひとりで行ったんですか?

服部

はい。それでひたすら2時間ぐらい
選曲をして、歌わずに帰ってきました。

一同

(笑)

服部

わたしが比較的、
カラオケに行っていた高校生くらいの時は、
まだリモコンで番号を入れる時代でしたから、
「最近のカラオケってこんなに進化しているのか・・・!」
という衝撃からはじまりました。

岩田

あの、すみません、エクシングさん。
失礼なことを申しまして・・・。

中谷・伊神

いえいえ(笑)。

服部

あ、そうですよね。
申し訳ありません!(笑)
あとはひたすらさわって研究したんですけど、
カラオケには長い歴史があるぶん、
昔つくった機能にさらに機能を追加するという形で、
キョクナビが進化してきたんじゃないかと感じました。
ですから、実際にさわってみるとすごく魅力的な機能なのに、
「わかりにくい部分があるなぁ」と感じたんです。

岩田

パソコンソフトがバージョンアップを重ねると、
どんどん複雑化していくのと似ていて、
前にあった機能をそのまま残しつつ、
だんだん新しい機能がたまっていくと
新しいお客さんにはわかりにくくなってしまうんですよね。

服部

だから、1回要素をすべて分解して、
それを組み立てなおすところからはじめました。
1回バラバラにして、必要な機能を抽出して
わかりやすいところにまとめたんです。
でもそれと同時に、いままでカラオケボックスに
親しんでこられたお客さんが使いやすいように、
基本操作はなるべく、いままでの感覚で
操作できるようにするということも設計のポイントでした。

伊神

いまおっしゃった話はそのとおりでして、
もともと「キョクナビ」というのは、
選曲本を置き換える役割で、
「曲を知っている人が探せる機能」が中心でした。
だから「曲を探す楽しみ」とは、
ちょっとベクトルが違うスタートだったんです。

岩田

「いかに早く歌いたい曲を探せるか」という視点で、
検索端末はつくられていたんですね。

伊神

だから今回のインターフェイスを見たとき、
商品企画のうちのスタッフが
「やられた!」と言っていました。
やはり「探しかた」の視点が違っていて、
われわれは昔からの「業界の常識」に
沿う形でしかつくれていなかったんです。

岩田

どんな仕事であっても、
いまのお客さんの要求に応えることが
優先度の高いことに思えますし、
いまあるものを変えたら不便になりそうなので、
変えにくくなるんですよね。
それはゲームでも同じことなんです。

伊神

ええ。今回で感覚が大きく変わったので、
今後、「業務用にも取り込んでいきたい」と思います。

岩田

逆に吉満さんは、
日々カラオケには慣れ親しんでいますよね。

吉満

そうですね。
わたしはよくカラオケに行きます。

岩田

なにせ「Wii U GamePadがキョクナビに見えた」
くらいですからね(笑)。

吉満

はい(笑)。ですから慣れすぎてしまい、
「ここがわかりづらいです」と服部さんに言われて、
はじめて気づく部分もありました。
じつはわたしも、服部さんと同じように
2、3時間カラオケボックスにこもって
タッチパネルを眺めてですね・・・。

岩田

あの~・・・どちらも
エクシングさんと仕事をしているんだから、
ひとりでカラオケボックスにこもらず、
エクシングさんのところでさわらせてもらえば
いいんじゃないですか?(笑)

服部

はい。ですので開発の途中からは、
業務用のカラオケ機材をお借りして、
会議室の一室をカラオケボックスにしていました。

岩田

えっ、そうだったんですか?

服部

でも、もちろん防音設備なんかはなくて、
ふだんはちょっと恥ずかしいので、
土日の出勤のときに歌っていました。

吉満

ああ、うちも同じです。
スタッフが帰ってフロアーに人が少なくなったら、
「じゃあ、そろそろ歌うか!」と。

岩田

あははは(笑)。
開発途中に「歌う」というのは、
ほかではあまりないですよね。

伊神

われわれの場合はそれが仕事ですから、
開発途中に「歌い込み」の時期がありますよ。

岩田

「歌い込み」ですか?
「歌い込み」ってなんですか?

伊神

音質をいかに高めるかとか、
気持ちよく聴こえるかとか、
感覚的なものをつきつめないといけないですから、
パラメーターをいじりながら何度も歌って、
歌った声がどう聴こえるかを
チェックしていきます。
そういうのを「歌い込み」といいます。

岩田

へえー・・・!

伊神

ほかにも歌のテロップとか機能面とか、
とくに採点機能を確認するときは
きちんと歌わないといけないので、
自分自身のレベルも上げないと、
高得点のテストができないんです。

岩田

じゃあ、開発している方は
みんな、歌がうまくなるんですか?

伊神

うーーーん・・・それは、人それぞれですね(笑)。
ただ、採点のロジックを知っていると、
有利に働きます。

岩田

なるほど(笑)。

吉満

とにかく、どこかで誰かが歌っている状態でして、
送られてくるデバッグの映像も、
基本的にスタッフが本気で歌っている映像なんです。

服部

デバッグルームは異様な雰囲気でした。
テスターさんがずらりと並んで、
ヘッドフォンをつけて、みんなが
それぞれの曲を歌っているんです。
デバッグ室に電話をすると、
後ろから歌声じゃなくて、ものすごい
うなり声が聴こえてくるという(笑)。

山上

しかも音楽は流れていないから、
生声なんですよね。

岩田

それ・・・すごすぎます(笑)。
でも、吉満さんも、服部さんたちから
次から次へと改善のリクエストをされて、
現場はすさんだりしませんでしたか?

吉満

いえ、大丈夫でした。
もちろん大変な時期もありましたが、
いただくアイデアは納得できるものでしたので、
スタッフも前向きにつくっていましたし。
なにより・・・、ストレスを感じたら、
いつでも歌って発散できる環境にいましたから。