4. 「チームスポーツのように」
岩田
では、実際にできあがったものについて、
周りからどんな反応がありましたか?
嶋村
とくにE3の時に感じたのは、
「一言で魅力をお伝えするのが難しい商品だ」
ということです。
岩田
たしかに、テニスのラケットに見立てて
Wiiリモコンを振っている人を見れば、
『Wiiスポーツ』がどんなソフトかわかるのと比べて、
『Nintendo Land』は一言で伝えるのが難しいですね。
嶋村
ただ、最後の仕上げの段階で、
家族モニターを実施したんですけど、
5~6歳くらいのお子さんから70歳ぐらいの方に、
何も説明しないでさわってもらったんです。
そしたらお子さんたちはどんどん吸収して、
「おばあちゃん、違う違う」って説明しながら、
みんなでいつの間にか遊んでいるんですね。
さわっていただくと、ゲームに慣れておられない方も、
楽しそうに仲間内で解決しあっていただけるようです。
江口
「実際に体験して、はじめて理解してもらえる」
というもどかしさは、じつはいまも続いています。
ただ、遊んでいる方たちの様子を見ていると、
いままでのマルチプレイとは違う
コミュニケーションの起こりかたなので、
「場が盛り上がるはず」と強く思っています。
岩田
いままでの多人数ゲームは
同じくらいの実力ならすごく楽しいけど、
実力差があると「双方が同じように
楽しむことが難しい」と感じていました。
でも『Nintendo Land』の遊びのいくつかは、
技量の違う人がいても、遊べる感じがします。
山下
そういえば・・・この前、
宮本さんや手塚(卓志)さん(※14)と
みんなで「マリオチェイス」を遊ぶ機会があって、
宮本さんがこのゲームに慣れていないものだから、
動きがちょっと「素人」っぽかったんです。
岩田
マリオの生みの親なのに「素人」ですか(笑)。
江口
ただ、マリオが逃げ回っているのを、
われわれや宮本さんが追っかけるんですけど、
宮本さん、地形とか把握していないから、
どう追いかけたらいいのかわからないんですよ。
山下
「ああっ。宮本さん、どうしてそっちに・・・」
って思う気持ちを抑えつつ、
プレイを見守っていたんですけれど、
じつは宮本さんが意図していなくても、
それがマリオを追いつめる動きになっていたんです。
そういう意味で、
「下手だからうまくできない、という構造ではない」
ということが言えると思います。
岩田
しかも終わったあと、リプレイを見て、
また盛り上がれますからね。
江口
そうなんです。
逃げたり、追いかけたりするラインが
そのまま再生されるので、
みんながどんなふうに動いていたのか
すごくよくわかって、リプレイが本当に効いています。
宮本さんはひとりだけ、
チームワークとはかけ離れた動きで
ウロウロしていたんですけど、
逃げているマリオからすると、
それが「けん制の動き」に見えていたんです。
岩田
あははは(笑)。
阪口
あと、立場の違いから
「会話がたくさん生まれるところ」も面白いんです。
鬼ごっこで鬼の役なら
「ふっふっふっ、捕まえてやるぜ!」ってなりますが、
リモコンを交換して立場が入れ替わると、
みんなの口調が、急に逆転するんです。
だから、遊んでいると言葉がやたらにでます。
山下
そう。たしかにでますよね。
とくに「対戦アトラクション」のゲームは
その要素が強いです。
嶋村
よく山下さんが言うんですけど、
このソフトはゲームの中に攻略があるんじゃなくて、
ゲームの外に遊びがあるんです。
「あっち動け、こっち動け」とか、
「赤の外周行ったよ!」みたいなかけ声があって、
そこはチームスポーツに近いかもしれないです。
岩田
ああ、たしかにチームスポーツですね。
嶋村
チームワークがいいグループには勝てないですし、
逆にゲームが得意でも、
何も話さないチームを相手にすると
けっこう勝てちゃいます。
岩田
テレビとゲームの外にある部分から、
遊びを引き出す構造になっているんですね。
嶋村
みんなで遊んでいると、
「指示の出しかたの発明」もあるんです。
阪口
そうなんです(笑)。
鬼が逃げている方向を指して、
「時計回り、反時計回り」とか、
「外周! 内周!」とか、
言葉がどんどん発明されていきます。
そういう言葉を引き出すために、
地形を色分けしたり、わざとすりばち状にして、
「下」とか「上」って、
表現できる地形にしています。
嶋村
われわれ開発陣が一緒にプレイしたら、
「マリオ発見しました!
赤外周、時計回りに廻っております!」
とかになるんです(笑)。
岩田
なるほど(笑)。
短い言葉で指示が的確にできるので、
すべての動きが筒抜けになるんですね。
嶋村
はい。それから、
「マリオチェイス」だけでなく、
ほかもそうなんです。
山下
あと、手塚さんって、
普段はあまり激しい感じの方ではないんですけど、
「ルイージのゴーストマンション」が異常に強くて、
オバケ役をされると「暗殺者」のようになります。
岩田
ええっ?
手塚さんが暗殺者ですか?(笑)
これはすごいギャップですねぇ。
江口
いや、ホント、すごくびっくりするんですよ。
ちょっと姿が見えた時に
「右に行ったな・・・」と思っていたら、
左から急に来たりして。
まるで、こちらの動きを
2手、3手、先読みされているようなんです。
嶋村
「デカの『カン』ってあると思う」って、
『Miiverse』にコメント(※15)がありましたけど・・・。
山下
あー、そうなのかもしれません(笑)。