デザイナーの仕事エフェクトデザイン
エフェクトデザインとは?
ゲームにおけるエフェクトの役割
ゲームにおけるエフェクトの役割は、大きく次の3つに集約されます。
- ・ゲームの手応えを良くする
- ・ゲーム内で起こっていることを分かりやすくする
- ・ゲーム画面をにぎやかにする
エフェクトというと「画面をにぎやかにする」イメージが真っ先に思い浮かびますが、ゲームにおいては「手応えを良くする」「起こっていることを分かりやすくする」ことも、同じく非常に大事にしています。
それぞれの役割について、実際のゲームのムービーで見てみましょう。
(視覚効果の紹介ですので、効果音が含まれない映像で解説します)
『スプラトゥーン2』での動くインク表現のほとんどは、エフェクトで制作されています。弾丸、着弾、インクに潜るなどの表現がそれにあたります。ピチャピチャとインクを塗りながら動き回るだけでも楽しく感じられるような「手応え」を、視覚的に与えています。
前半:『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』ではあらゆるものを燃やすことができますが、その炎はエフェクトで表現されます。さらに、炎が密集したところでは上昇気流が発生し、その風に乗って上昇することができます。この上昇気流も、エフェクトで制作されています。
後半:『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の戦闘シーンです。敵がビームをチャージするときのリング状エフェクトにより、お客様は攻撃の予兆を知ることができます。ビーム自体や着弾表現もエフェクトです。剣で敵を斬ったときのヒットエフェクトは、実際には存在しない「手応え」をデザインして表現しています。
『スーパーマリオ オデッセイ』のストーリーデモシーンと、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』で祠(ほこら)をクリアしたときの演出になります。
このようなシチュエーションでは、豪華なエフェクトによってお客様が高揚感や達成感を得られるよう、特に力を入れて演出しています。
エフェクトを消してみたら…?
前出のゲーム画面で、エフェクトを消してみたらどのように見えるでしょうか。
続いてエフェクトを非表示にしたムービーをご覧ください。
エフェクトによるインク表現を消してみると、インクをピチャピチャ塗る「手応え」が大きく損なわれていることが実感できませんか。
細かい部分では、風船の出現や破裂もエフェクトで表現されていますので、全体的に「何が起こったか」が分かりにくい画面になってしまいました。
前半:炎が見えないだけでなく、お客様にとって重要な上昇気流も見えません。このような「遊びにかかわる自然現象」を表現するのに、エフェクトが非常に有効であることが分かります。
後半:敵の攻撃の予兆が見えなくなったことで、いつ攻撃してくるかが分からなくなっています。剣で斬ったときのインパクトや手応えも弱く、爽快感のない戦闘になってしまいました。
随分と寂しい見た目になってしまいました。
エフェクトによって、「映像を派手に、にぎやかにする」ことが効果的に行われていたことが、この映像から分かります。
任天堂のエフェクトデザインが
大切にしていること
映画などの映像作品と異なり、ゲームはお客様が操作できるインタラクティブな媒体です。そのため、エフェクトは「にぎやかにする」だけでなく、ゲームの手応えを良くしたり、ゲームの中で起こっていることをお客様に対して「ビジュアルで直感的に」伝えたりする役割を担う、「機能性」や「記号性」が強く求められるデザインジャンルでもあります。
- ・「触っていて楽しい、気持ちいい!」
- ・「遊んでいてわかりやすい!」
- ・「高揚感や達成感があって、うれしい!」
エフェクトの本質は、このようなユーザー体験をデザインし、強化するところにあります。その意味では、ゲームのようなインタラクティブな媒体ならではの、ほかにはないデザイン要素といえるのではないでしょうか。
どうやってエフェクトは作られているのか?
エフェクトは、一般的なDCCツールと自社製エフェクトツールを使用して制作しています。
使用する各種ツールの使い方やエフェクト制作に必要となる知識については、入社後に新人研修や実務を通じて身につけていただけますので、エフェクト制作が未経験の方でも問題ありません。
任天堂ではたらくエフェクトデザイナーに求められること
学生時代にエフェクトを作ったことがある、勉強していた、という方は少数派だと思います。ではいったいどういった人がエフェクトデザイナーになっているのでしょうか?
- ・CGや実写を用いた映像制作をしていた
- ・手描きアニメーションを作っていた
- ・メディアアートなどのインタラクティブな作品を作っていた
- ・プローシージャルな手法を用いて作品を作っていた
- ・理工系専攻でCG関連の研究をしていた
などなど、任天堂の「エフェクトデザイン」セクションでは、多種多様な背景をもつ人たちが、お互いの「得意」を持ち寄ってエフェクトの制作を行っています。
エフェクトの制作経験は必須ではありませんが、映像制作をしている方なら、「タイミング」や「テンポ」「リズム」といった、映像的な感覚を活かせると思いますし、CG技術を学んできた方なら、「カタチのないエフェクト表現をどう実現するか?」といった「手法からのアプローチ」に対して、ユニークな技術的アイデアが活かせるはずです。
また、メディアアートなどで「インタラクティブな作品」を作ってこられた方は、エフェクトによるインタラクションをどう表現するかといったことに、アイデアや経験を活かせるでしょう。
このようにエフェクト業務において、求められる特性にはいくつかの特徴があります。
どれかに当てはまるものがあり、見たこともない表現でお客様を驚かせたいというモチベーションのある方は、エフェクトデザイナーに向いていると思います。