1. 「早くWii Uで遊びたい」
岩田
じつは7年前に初代の『Wii Sports』(※1)が出た時、
わたしは会社から帰宅すると、
毎晩のようにムキになって(笑)、遊んでいたんです。
あんなに軽いWiiリモコンを振るだけでも
こんなに汗をかくのかという
不思議な感覚を、当時は味わっていて、
そういうことがかなり長く続いていたんです。
嶋村
汗をかくまで、ですか?(笑)
岩田
もちろん自分では、
Wiiリモコンは軽く振るだけでいい、
ということはわかってるんです。
まあ、少しだけですけど、
本物のテニスをしたこともあったので、
かなり真剣に足でステップを踏んで、
腰を入れて遊んでいました。
それがたぶん、自分なりに
いいストレス解消になっていたんでしょうね。
それで、今日は『Wii Sports Club』について
いろいろと話をお訊きするんですが、
「ああ、久しぶりにあの日々が帰ってくる」
と思うと、とてもわくわくしているんです。
それに、今日は実際に触ることができるんですよね?
嶋村
はい。「テニス」と「ボウリング」の2種目が
すぐにでも触れる状態なんですけど、
ゲームの特徴を伝えやすいということで
「テニス」で遊んでいただくことになっています。
岩田
Wii U版の『Wii Sports』ははじめて触るので
とても楽しみにしています。
その模様は、これから
動画で撮影することになっていますので、
これをお読みのみなさんには
「うごく社長が訊く」として
ご覧いただければと思っています。
それでは、みなさん、自己紹介をお願いします。
嶋村
制作部の嶋村です。
岩田
嶋村さんは、『Wii Sports』、
『Wii Sports Resort』(※2)に続いて今作も担当して、
『Wii Sports』から逃れられない人なんですよね(笑)。
嶋村
はい(笑)。
先に言われてしまいましたけど、
『Wii Sports』シリーズの初代から
『Wii Sports Resort』、それに今回の『Wii Sports Club』でも
ディレクターを担当しました。
岩田
「また自分が担当するの?」と思いましたか?
嶋村
いえいえ、そんなことはないです(笑)。
やっぱり思い入れのあるソフトですし、
ほかの人にディレクターをお願いして、その結果
「これって『Wii Sports』じゃないな・・・」
と、あとから後悔するよりは、
ぜひ自分でやってみたいという気持ちもあって、
自分から「やります」と手を挙げました。
岩田
ただ今回は、これまでの構造と
かなり変わりましたけど、そのことについては、
のちほどたっぷりお訊きすることにします。
嶋村
はい。
牧野
企画開発部の牧野です。
今回は、バンダイナムコスタジオ(※3)さんに
開発をお願いしていまして、
最初はコーディネーターの立場で
このプロジェクトに参加しましたが
最終的には“何でも屋”みたいになりまして。
主にネットワーク部分を担当していたんですが、
「ここはこういう仕様にしませんか?」ということも
提案したりしていました。
岩田
コーディネーターといいながら、
仕様も書いていたんですか?
牧野
はい・・・かなり。
鈴木
企画開発部の鈴木です。
僕も最初はコーディネーターとして、
バンダイナムコスタジオさんの窓口になったり、
海外版のローカライズのために
海外の子会社ともやりとりをしていたんですが、
最終的には、牧野さんと同じように、
自分にできることは何でもやっていた、
という感じになっていました。
嶋村
牧野さんと鈴木さんのふたりは
途中からは、完全にプランナーの役割も果たしていましたね。
あと、今回の開発は
バンダイナムコスタジオさんにお願いしましたけど、
任天堂のネットワーク開発運用部や、
このふたりの所属する企画開発部、
それに僕の所属する情報開発本部のみんなが
ちょっとずつ手弁当で手伝ってくれたんです。
岩田
任天堂の社内でも
いろんな人が手伝ってくれたんですね。
嶋村
はい、総力戦でした。
牧野・鈴木
そうでしたね。
岩田
なぜ手伝ってくれたんですか?
嶋村
それはやっぱり
『Wii Sports』だったからなんだと思います。
みんなそれぞれに、このソフトに対する想いが強くて、
「ここまでやらないとダメでしょう」と、
いろんな人が手伝ってくれて、
本当にありがたかったですね。
そのおかげもあって、
なんとかここまでたどり着けたというのが
正直な気持ちです。
岩田
さて、今回の
『Wii Sports Club』をつくるにあたっては、
いくつかのポイントがあったと思います。
まず、「Wiiリモコンプラス(※4)を使って、
『Wii Sports』をつくったらどうなるのか?」
というのがひとつですね。
嶋村
はい。初代の『Wii Sports』は
ジャイロセンサーの機能が付いていない
Wiiリモコン対応のソフトでしたから。
岩田
それから、
「Wii U GamePadをどこで活用するか?」
というのがひとつ。
そして、前作の時は、
お客さんから強く切望されていた、
「ネットワーク対戦をどうにか実現できないか?」
といった開発テーマがありましたよね。
嶋村
はい。
岩田
そういったテーマに加えて
「売りかたも刷新しよう」という話もあって、
けっこういろいろな要素があったと思います。
もともと初代の『Wii Sports』という
土台があったにしても、
まず何からはじめたんですか?
嶋村
いま、岩田さんがおっしゃったように、
切望されていたインターネット対戦を
どう楽しくつくるか、ということに、
まず注力しようと決めました。
岩田
でも、インターネット対戦をするといっても、
プレイヤーが交互に操作する
「ゴルフ」や「ボウリング」であれば
すぐにできるだろうとは思いましたけど、
「テニス」はどうするの? とか、
「ボクシング」はどうするの? とか、
ちょっと考えただけでも、
そう単純にはできないはずなんですが・・・。
嶋村
そうですね。やっぱり、
「テニス」のインターネット対戦に関しては
かなり試行錯誤をしまして・・・。
けっこう前の話ですけど、岩田さんがメールで、
制作部の江口(勝也)さん(※5)に対して
「できるだけ早くWii Uで『Wii Sports』を遊びたい」
と伝えられたことがありましたよね。
岩田
はい、ありました。
嶋村
そのメールには、
「ボウリング」と「ゴルフ」の2種目は
インターネット対戦を行うことが必須で、
ほかの種目については「可能であれば」
ということが書かれていましたよね。
岩田
はい。そう書きました。
わたしはプログラマー出身ですから、
何が難しくて、何がそうではないかは、
一応わかっているつもりですから。
嶋村
でも、Wii Uという新しいハードで、
『Wii Sports』を楽しんでいただくことを考えたときに、
切望されていたネットワーク対戦は
ちゃんとやらないわけにはいかないだろうと思いました。
そこで、『Wii Sports』の象徴的な種目である
「テニス」のインターネット対戦を実現させることを、
まず最初の目標にして、それで開発を進めていきました。
岩田
わたしは、その話をはじめて聞いたとき、
「ホントに? それっていつできるんですか?」
と聞き返したくらいなんですけど(笑)。
嶋村
だから「開発が延びるんじゃないか?」
と思われたかもしれませんが(笑)。
岩田
すぐにメドが立ちましたか?
嶋村
いえ、まったく(キッパリ)。
一同
(笑)