岩田
もともと、3DSに加速度センサー(※24)を搭載することは
早い段階から決まっていましたが、
それに加えてジャイロセンサーを足すことが決まったのは
ずいぶん後になってからでしたよね。
紺野
あれは、いつくらいでしたかね・・・?
杉野
確か2010年の2月か3月くらいでした。
梅津
その前に「これで3DSの仕様はフィックスです」と
わたしも言っていたくらいですから(笑)。
岩田
確かに「もうこれ以上、何も入りませんよ」と言ってましたね(笑)。
杉野
ですから、E3に間に合うかどうか
まったく保証ができなかったんです。
梅津
で、そのときも紺野さんからジャイロのデモがあったんです。
岩田
またしてもデモで攻められたんですか(笑)。
紺野
説得はまず触ってもらってからと(笑)。
あのデモは、たまたま別の案件がありまして
WiiリモコンとWiiモーションプラス(※25)をセットにしたものを
わたしの部署で実験していたんです。
その機材を台車に乗せて、会議室にガラガラと持ち込んで、
「こんなのがあるんですけど、どう?」と。
岩田
でも、「どう?」と言われてもねえ(笑)。
一同
(笑)
岩田
そもそもジャイロは、すでに実績があった
Wiiモーションプラスがなければ
たぶん出なかった話なんですよね。
紺野
なかったでしょうね。
それに、わたしとしては、梅津さんが
「これで仕様はフィックスです」と言ってるのを聞いてましたし、
時期的にも実現するのはちょっと難しいだろうなとは思っていたんです。
岩田
ところが諦めなかった人がいたんですね。
紺野
はい(笑)。そう、宮本さんです。
岩田
宮本さんは絶対に入れたいときは、
「遅らせてもいいから入れよう」と言う人なんです。
それでわたしは「ダメです、遅らせちゃあ」と言ったんですよ。
梅津
わたしも言ったんです。「遅れますよ!」と(笑)。
紺野
ですから「今回は無理かな?」と思って
わたしは黙っていたんですけど、
宮本さんたちがデモの機械を積んだ台車をガラガラと押してきて、
「こうやって操作したら、面白いやろ?」とか、
「これを標準搭載するのと、そうでないのとではぜんぜん違う」
とか言うものですから(笑)。
岩田
でも、あの時期にジャイロを搭載することにしたのは、
Wiiが量産に入る前の「そろそろ船が出るぞ」という時期になって、
Wiiリモコンにスピーカーを付けたのと同じくらい
強引だったと思いますね。
なので、たぶんどっかで役に立つと思います。
あとで「付けといてよかったでしょ?」と、
証明するためにも、宮本さんはきっと何かすると思います、きっと。
一同
(笑)
紺野
実際、いろいろアイデアが出ていますし、
たとえば『ゼルダの伝説 時のオカリナ 3D』(※26)や
『スティールダイバー』(※27)という
潜水艦を操作するアクションゲームにも対応していますしね。
岩田
『スティールダイバー』では、回転イスに座って回ると、
360度をグルッと見渡すようなこともできるんですね。
紺野
あんまりやりすぎると目が回るんですけど(笑)。
『ゼルダ』でも同じように、パチンコを打つときに
360度を見渡すようなことができます。
あと、3DS本体内蔵ソフトでも
『顔シューティング』というのがありまして。
岩田
(ジャイロを)さっそく使ってますね。
紺野
なので、結果的に入れてよかったと思います。
岩田
『顔シューティング』以外にも、
今回の3DSには多くの種類の内蔵ソフトが入ってますよね。
そもそも、開発当初は内蔵する予定をしていなかったソフトを
次々と本体に内蔵していく決定をすることになりましたからね。
こんなにたくさんのソフトを
最初から本体に入れようと考えたのはどうしてなんですか?
紺野
風呂敷を広げすぎましたか(笑)。
岩田
いやいや(笑)。
デジタルガジェット好きが出たんですか?
紺野
はい、そうかもしれません。
たとえば『ARゲームズ』のようなソフトはぜひ入れたいと。
岩田
『ARゲームズ』の「AR」とは「Augmented Reality」のことで、
直訳すると「拡張現実」という意味ですね。
紺野
はい。たとえばテーブルの上にカードを置いて、
それを立体カメラに映すと、突然モンスターが現れて・・・、
みたいに、現実の世界にあるものの上で
ゲームのキャラクターなどが動くような遊びができるんですけど、
最初にそのサンプルを見せていただいたときに、
「これはいい!」と、とてもインパクトがありまして。
岩田
『ARゲームズ』は、パッケージにして
1本のソフトとして出すこともできたわけですよね。
紺野
そうですね。でも、最初から本体に内蔵して、
あのような立体視を使った遊びを、3DSを買っていただいた
すべてのお客さんに体験していただきたいと思ったんです。
それは『合体カメラ』を入れたのも同じ考えです。
岩田
任天堂カンファレンス(※28)のときに
宮本さんとわたしの顔写真を合成しました。
紺野
はい。あれも自分で触って合成したとき、
すごくインパクトがあるんです。
岩田
『合体カメラ』の面白いところは、
誰とやってもその人の顔になるという
強い顔の人がいるんですよね。
紺野
はいはい、いますね、強い顔の人が(笑)。
岩田
誰と合成してもその人の顔になるそうですね。
誰とは言いませんけど(笑)。
紺野
(笑)。
それからわたしのオススメなのが『Miiスタジオ』です。
Miiに関しては、『マリオカートWii』でも使えるようにしましたし、
自分の似顔絵をつくるのは面白いと思っていましたから、
ぜひとも今回は携帯機でも楽しめるようにしたいと思ったんです。
岩田
『トモダチコレクション』(※29)で、
Miiと携帯ゲーム機の相性の良さは実証済みですしね。
紺野
はい。そこで今回は写真を撮ったら、
自動的にMiiがつくれるようになりました。
岩田
似顔絵に苦手意識のある人には、ちょっと夢のような話ですよね。
ただ、正確に言いますと、すごーく似るときと、
似ないときがあるんですね。
紺野
そうなんです。でも、それほど似なくても、
それはそれで「ああ、なーんだ」みたいな楽しみ方もあると思います。
スタッフは「似る度は何パーセントまでだったらいいんでしょうか」
みたいな議論になりがちなんですけど、
わたしのようにもともと絵心がなくて、
Miiをつくることすら、ふだんはあまりしないような人でも
写真を撮るだけでMiiができるのであれば、
それはそれですごく便利ですし、ちょっと似ていなくても、
そのMiiを元にいくらでも修正できますから。
岩田
それに似たときはとてもうれしいですしね。
あと、今回はMiiの交流に関しては、
すごくエネルギーを注いでいますよね。
紺野
そうですね。「すれちがい通信」にも
Miiを交流する機能がありますから、
3DSを持ち歩いて、外ですれちがいをしていると、
どんどんMiiも交流されるような仕組みも考えています。
岩田
そもそも紺野さんは、『nintendogs』で初めて
「すれちがい通信」を実現させた当事者ですよね。
紺野
はい。本当は『nintendogs』やそれに続くタイトルで、
もっともっと「すれちがい通信」を楽しんでいただきたかったんですけど、
そのタイトルごとに、そのモードにして遊ばなければならないとか、
けっこう手間がかかりますので、
なかなか流行るところまでいかなかったんです。
岩田
「すれちがい通信」モードにして持ち歩かないといけないので、
同時に同じソフトを遊んでいるお客さんがたくさんおられないと
なかなか機会がないんですよね。
紺野さんは、『ドラクエIX』(※30)の
「すれちがい通信」が社会現象になったとき、
ものすごく悔しい思いをしたんですよね?
紺野
それはもうすごく(笑)。
ぶらぶら歩くだけで、どんどん来たときには、「ああ、やられた!」と。
それに、わたしには子どもがいて
いっしょに買い物に行くようなことはあまりないんですけど、
『ドラクエ』の「すれちがい通信」をやりたいがために・・・。
岩田
「お父さん、いっしょに行く」と(笑)。
紺野
そうなんです。「行く行く」と言うんです。
とくに人がたくさん集まる場所に出かけようとすると。
一同
(笑)
岩田
本当は、そういうことは、自分がつくったソフトで
ぜひやってもらいたかったんですね。
紺野
そうなんです。そういうことがありましたので、
今回の3DSでは、1度遊んだゲームであれば、
3DSカードをさしていなくても、
「すれちがい通信」ができるように強化しました。
また、おでかけしなくても、朝起きたら、何かのコンテンツが
自動的にやってくるようになるといいということで
「いつの間に通信」(※31)を入れましたので、
3DSを開くたびに、いろんな変化が楽しめるようになると思います。