岩田
今日はニンテンドー3DSに最初から内蔵されている
ソフトに関してお話をお訊きしたいと思います。
よろしくお願いいたします。
一同
よろしくお願いいたします。
岩田
まず、みなさんがそれぞれ何を担当したのか、
説明してもらおうと思います。
黒梅さんからお願いします。
黒梅
はい。環境制作部UIデザイン制作グループの黒梅です。
わたしはこれまで、各ハードの本体機能の開発にかかわってきました。
最初に手がけたのはゲームキューブのメニュー画面でした。
岩田
本体機能としてソフトをつくることが当たり前のような時代になってから、
ずっとこの仕事にかかわってきました、ということですよね。
黒梅
はい、そうです。
それで、今回の3DSの本体機能では、
ほかのメンバーが頑張って実開発をしてくれましたので、
わたしは、開発現場の周辺を調整したり、
サポート的なことを担当してきました。
高橋
環境制作部UIデザイン制作グループの高橋です。
Wiiのときは『似顔絵チャンネル』(※1)ですとか、
『みんなで投票チャンネル』(※2)といった内蔵ソフトを担当して、
今回は、ここにいるみなさんといっしょに本体機能の仕様を考えつつ、
3DSのスイッチを入れたときに、いちばん最初に表示される
HOMEメニューのディレクションをしました。
秋房
高橋さんと同じく、UIデザイン制作グループの秋房です。
僕は今回、立体写真を撮ることができる『ニンテンドー3DSカメラ』と、
音楽を聴いたり、録音ができる『ニンテンドー3DSサウンド』の
ディレクションを担当しました。
岩田
カメラと音のソフトを担当したんですね。
秋房
はい。前回の『DSiサウンド』(※3)にかかわったこともあって、
今回はその流れで、2本のソフトを担当しました。
河本
環境制作部ソフト制作グループの河本です。
今回は、たくさんのMiiが集まってくる『すれちがいMii広場』と、
付属のARカードを使った『ARゲームズ』のディレクションをしました。
それと、いろんな人のMiiをつくることができる『Miiスタジオ』を
横から見守るような役目もしていました。
鈴木
同じく環境制作部ソフト制作グループの鈴木です。
今回は、自分や友だちの顔で遊ぶことができる、
『顔シューティング』のディレクターを担当しました。
水木
ネットワーク事業部ネットワークソフト制作グループの水木です。
今回の本体機能は、主に環境制作部とネットワーク事業部の、
2つの部が協力しながら開発をしましたので、
わたしはネットワーク事業部側の
とりまとめのようなことを行っていました。
岩田
それではまず、はじまりの話から訊きたいんですけど、
ニンテンドー3DSの本体機能をつくるにあたって、
最初にどんなことを話していたのか、
高橋さんからお願いできますか?
高橋
はい。はじまりは2009年の6月頃から、
本体機能分科会という会合が開かれることになって、
秋房さんとわたしが議長をつとめながら、
「3DSの本体機能というのはどういうものなのか」
「どういうアプリケーションや内蔵ソフトが入っているべきなのか」
といったことを、みんなで相談していました。
岩田
任天堂というのは変な会社で、
高橋さんがディレクターをした『トモダチコレクション』(※4)は、
たくさんのお客さんに受け入れていただけましたけど、
「すぐにその続編をつくれ!」と言われるのではなく、
突然、3DSの本体メニューのチームにさらわれて、
本体機能分科会の議長をさせられたり、
UI(ユーザーインターフェイス)のチームのみなさんといっしょに、
HOMEメニューをつくることになったりするんですよね。
高橋
はい(笑)。
岩田
とはいえ、今回の本体機能のなかでは
Miiがすごく大事な役割を果たしましたので、
『トモダチコレクション』をつくった高橋さんが加入したのは、
極めて自然な流れだったような気もします。
高橋
そうですね。
※4
『トモダチコレクション』=2009年6月に発売されたDS用ソフト。自分や友だちなどのMiiを登録し、架空の島のマンションで生活しながら、住人とのコミュニケーションを楽しむことができる。
岩田
それで、本体機能分科会では
どんなことを話し合っていたのですか?
高橋
人って、楽しいものを見たりすると、
どうしても友だちや家族に見せたくなりますよね。
ですから今回の3DSの本体機能にも
そういった要素を盛り込もうということになりました。
ところが、たくさんのアイデアがどんどん出てきてしまって、
すごく膨大なものになってしまったんです。
岩田
いきなり、うわーっとふくらんでしまったんですね。
高橋
そうです。
岩田
「誰か、風呂敷をたたまないと大変だぞ!」
ということにはならなかったんですか?
高橋
はい。そうなりかけました(笑)。
なので、選りすぐりのものに絞ることにしたんです。
岩田
高橋さんがディレクションをした
HOMEメニューに関しては、
どうやって決まって進んでいったんですか?
高橋
メニューに関しては、本体機能分科会のなかで、
黒梅さんが監督になって、ここにいらっしゃるみなさんといっしょに
どのようなメニューにしようかと相談していたんですけども、
DSiの操作性を継承しつつも、
ちょっと面白いことをしようと思ったんです。
そこで、まずはDSiよりも、もっとたくさんのアイコンを
同時に出せるんじゃないかという話になりました。
岩田
DSiのときに同時に表示できたアイコンの数は5個でしたよね。
高橋
はい。でも今回は
アイコンの拡大・縮小ができるようになりましたので、
黒梅さんが「どうせだったら、50個くらいを
一度に大量に出せたら面白いんじゃないか」と言うので、
ちょっと試しにつくってみたら、
60個のアイコンが同時に出せるようになったんです。
すごくちっちゃいアイコンになっちゃうんですけど(笑)。
黒梅
ちっちゃくても意外とアイコンがどのソフトか認識できたんです。
秋房
あれはWiiの『写真チャンネル』(※5)からも
ヒントをもらっていましたよね。
岩田
ああ、なるほどね。
確かに河本さんが担当したWiiの『写真チャンネル』の感じと
ちょっと近い感じがありますね。
河本
自動的に並び替えつつ、サイズも変えると。
動きもわりと似ている感じですね。
高橋
『写真チャンネル』はずいぶん参考にさせていただきました。
で、そのような通常のソフトのアイコンとは別枠で、
上のほうに、『おしらせリスト』や『フレンドリスト』、
それに『ゲームメモ』などを並べました。
岩田
そうしたのは、
いつでも呼び出せるようにしたい、ということなんですね。
高橋
そうです。
たとえば、ほかのゲームで遊んでいるときでも、
一時的にHOMEメニューを呼び出して、
『ゲームメモ』をタッチすれば
ゲームに関するメモをとることもできますし、
『フレンドリスト』をタッチすれば、
フレンドのコメントを読むことができて、
その人がネットワークにつながっていれば、
どんなソフトで遊んでいるのかもわかるようになっています。
岩田
ちなみに、わりと最初の段階から、
Miiが重要な役割をするということが
議論されていたような気がするんですけど、
そうだったですよね?
高橋
はい。そこで友だちのMiiを登録できる
『フレンドリスト』を強化しようということになりました。
この機能を使って、一度フレンドになった友だちとは、
フレンド機能がついているソフトであれば、どんなゲームでも・・・。
岩田
DSやDSiのときのように、ソフトごとに
フレンド登録をする必要がなくなったんですね。
高橋
そうです。
新たに登録することなく通信対戦ができたり、
通信機能が使えるようになります。
そもそも、この『フレンドリスト』の構想は、
わたしがこの3DSの企画に入る前から
社内でずっと温められていたんです。
岩田
まさに、リアル『トモダチコレクション』を
実現しようということですね(笑)。
高橋
はい(笑)。『トモダチコレクション』では
友だちを100人まで登録できるんですけど、
今回の『フレンドリスト』でも100人まで登録できます。
しかも、そのフレンドは、自分の本当の友だちですので、
まさにリアル『トモダチコレクション』になると思います。