『ニンテンドー3DSカメラ』の撮影モードのひとつに、
自分と向き合った相手の顔を合体させる
『合体カメラ』^（※8）というのがありますけど、
あれはどういうアイデアから生まれたんですか？

今回の『3DSカメラ』は
インテリジェントシステムズ^（※9）さんといっしょに
開発を進めたんですけども、
３つのテーマで、まず試作をつくってみることにしました。
ひとつめのテーマとしては、顔認識ができるということは
画像のなかの顔部分だけを切り取ることができるはずなんです。
そこで、マンガの『おそ松くん』の六つ子のように、
全部を同じ顔にしてみたりとか、入れ替えたりとか、
そんな実験をしてほしいとお願いしました。

顔認識という技術を
どう応用するかということからはじまったんですね。

はい。で、もうひとつのテーマは、
単に３Ｄの写真を撮るだけでなく、
内カメラと外カメラを同時に使って、
何か新しい構造の遊びを考えましょうと。

通常は、内と外にカメラが付いていても、
どちらか一方しか使えないことが多くて、
同時に使えるというのは、たぶん珍しい構成なんですよね。

はい。あと、DSiには『似てる度カメラ』^（※10）というのがあって、
２人並んで写真を撮ることができて、
コミュニケーションが楽しめましたよね。
そこで、そのようなコミュニケーションをもっと促進させるような
機能を入れることが３つめのテーマでした。

つまり、まず大きなテーマを考えて、
インテリジェントシステムズさんに
ベースの部分をつくってもらうようお願いしたんですね。

そうです。
しばらくしてから試作があがってきたんですけど、
それが、答えとしてぴったりだったので、
それを元に、現在の『合体カメラ』として
仕上げていきました。

実際にできあがったものを触ってみると、
その場を必ずといっていいほど、
笑いの渦におとしいれる機能になりましたね。

人ってもともと、自分の顔に似合うヘアスタイルだったり、
ファッションをしていると思うんですけど、
顔の部分だけがほかの人と入れ替わってしまうので、
ズルッとずっこけた印象になったりするんです（笑）。

見慣れていない、アンバランスなものが
画面に映し出されるので、笑えるんですよね。

はい。観光地に行くと
忍者のかっこうをした板絵とか、ありますよね。

ああ、顔を板にハメて写真が撮れる看板ですね。

基本的にはあの発想で、人の姿を板絵にしてしまって、
合体した顔をピュッとハメるようなことをしたのが、
よくある｢合成｣とは違う方法なのかなと思います。

一般的な顔合成というと、
目はこの人、鼻はこの人というような合成の仕方をしますけど、
今回は違うんですよね。
今回の『合体カメラ』は強い顔が残ったりするんです。

あの・・・なので、僕の顔と合体させると、
誰もが水木になってしまうんです。

内カメラで写しても水木さん、
外カメラで写しても水木さん、ということですか？（笑）

（笑）

なぜなんでしょう・・・。

水木さんの顔は強いと、もっぱらの評判ですから（笑）。

でも、『合体カメラ』で写すと
「この顔、どこかで見たことあるなあ」
という感じになるのが、なんかスゴイですよね。

「この人、いるいる」って（笑）。

「この人、どっかで会ったことある」って（笑）。

普通の合成写真だと、
あり得ない顔になることが多いんですけどね。
ちなみに、カメラの関係で
これから先「こんなことをやりたい」という予定があれば、
この場で話してもらえますか？

はい・・・でも、それはすでに岩田さんから・・・（笑）。

あ、わたしがすでに言ってしまいましたか（笑）。

社長が訊く『ニンテンドー3DS』の初回にあたる
「そういうわけで、ニンテンドー3DSはできた。」
を読んだら、すでに動画に関することをお話しされていて、
わたしは「あ、ここに仕様が書いてある・・・」と思いました（笑）。
たとえば、「ＳＤカードにいっぱい撮れなきゃいけないんだ」とか。
でも、実際に３Ｄの映像を撮ることができたら、
すごく楽しいでしょうし、
大容量のＳＤカードのメリットも出ますし。

将来のバージョンアップを楽しみにしてください、
ということですね。

はい。現在、鋭意制作中です。

あと、秋房さんがかかわった『ニンテンドー3DSサウンド』のほうは
パッと見には、DSiとの違いがわかりにくいんですが、
実はいろいろ違うところがあるんですよね。

はい。今回はまず、すれちがい通信を使おうという企画がありまして、
自分がどんな曲を聴いているかを登録しておけば、
曲名やアーティストの方の名前を
お互いに交換できるようになりました。

それは、すれちがいリストに登録するんですね。

そうです。すると、すれちがった人と自分は、
実は同じ曲を聴いているだとか、
あるいは身の回りですれちがった人たちのなかで
どんな曲が流行っているかだとか、
そういうことがわかるようにしてみようということで、
ひとつの挑戦ということで取り組みました。

だから、曲をＳＤカードに入れたら、
すれちがいリストに登録して、
持って歩いてください、ということですね。

はい。街によっては違いとかも出ると思うんです。
渋谷を歩いているときと、秋葉原を歩いているときでは、
流行ってる曲が違うかもしれないですし。
なので、僕自身、いろんな街に行って、
すれちがってみたいなと思っています。
あとは、システムの内部的な話になりますけど、
DSiでは対応していなかった
ＭＰ３ファイルの曲も聴けるようになりましたし、
曲の続きから聴くという機能も
今回は入れることができました。

そもそも、続きから聴くというのは
普通のプレーヤーでは当たり前の機能ですからね。

今回はちゃんと実装できました。
それから、今回は録音した音声データを
ＳＤカードに保存して、とっておけるようにしました。

なので、ちょっとしたレコーダーにもなるんですね。

はい。ＳＤカードに保存しますので、
録音できる音の数自体も増えましたし、
ＰＣに詳しい方であれば、普通の音データとして
利用していただくこともできるかなと思っています。

そういう意味では、
サウンドソフトとしての汎用性は高まっていて、
みなさんにもっと使ってもらえるようなものになったんですね。

はい。岩田さんも言われたように、
見た目にはわかりにくいのですが、
内部はかなり手を入れました。
DSiのときと比べると、
基本的な使い勝手はよくなっていると思います。
あと、上画面に表示される「ビジュアライザー」も
内容を見直していますので、
楽しんでもらえたらうれしいです。