社長が訊く
IWATA ASKS

社長が訊く『ニンテンドー3DS』

シリーズ一覧

社長が訊く『ニンテンドー3DS』

本体コンセプト 篇

目次

6. 自分の眼で現物を見てほしい

岩田

梅津さんは、最初はひとりで孤独に考えていた時代から、
ニンテンドー3DSがいまこのようなかたちになって、どう思いますか? 

梅津

まず、試作品がきれいに塗装されたものを見たときに、
自分で言うのもなんですけど、
「あ、いいものができたな・・・」というのは正直、感じました。
いままでのDSシリーズよりも、今回はさらに外観にこだわっていると。
まあ、その話は・・・。

岩田

その話は次回、外装のデザインを担当した
開発者から訊くことにしましょうか。

梅津

そうですね。
細かいところでのディテールのこだわりもいっぱいありますので、
それも次回、いろんなお話が訊けると思うんですけど(笑)。

岩田

はい(笑)。

梅津

それから、システム設計を担当したわたしが
まず見ていただきたいのが、グラフィックスの部分です。
DSの画質ではちょっと物足りないなと思っていた方も、
今回は満足していただけるんじゃないかなと思います。
もちろん3Dで見ていただくのがいちばん驚きがあるのですが、
液晶の基本性能も上がりましたので、
2Dで見ていただいても、ご満足いただけるのではないかなと思います。

岩田

杉野さんはどうですか?

杉野

僕は、任天堂らしい
ハードとソフトがうまくマッチした商品になったと思います。
さっきの話にありましたけど、顔の合成ができたり、
3Dの写真がパッと写せたりすることは、ほかではあまりないような・・・。

岩田

そのような単体の機能でいうと、
別に3DSが初めてではないんですけど、
こういうふうに統合され、
きっとお子さんも遊べて、20代のお兄さんも遊べて、
たとえばわたしと同世代の女性の方でも
ある部分ではすごく楽しめてしまうものになったという意味では、
とてもいい提案が、今回の3DSでできたと思いますし、
同時に手ごたえを感じますよね。

杉野

はい。バランスのとれた商品になったと思います。
あと、デザインを担当した立場で言いますと、
今回はいろんなスイッチが増えまして・・・。

岩田

スイッチだけでなくランプも増えましたね。

杉野

それにカメラも外側2つ、内側1つの合計3つです。
でもこのように完成して、実際に触ってみると、
どれひとつ無駄なものはつくらなかったなと思います。

岩田

外側だけでなく、内部のほうも
無駄なスペースが一切ないほどぎっしり詰まっていますしね。

杉野

それから、今回のプロジェクトでは、
紺野さんといっしょに仕事をしてすごく勉強になりました。
視点が違うなあと。

岩田

「いちいちデモをつくって説得するなあ」と?

杉野

いやいや、それは(笑)。

一同

(笑)

杉野

ある機能を実現しようとすると、
われわれのような技術者は、「小さいほうがいいだろう」とか
とかくテクニカルな方向に走りがちになるんですが、
紺野さんたちは、レスポンスや手触り感を
すごく大事にしていると思ったんです。

岩田

ハード部隊というのはついつい理屈で考えていくし、
そもそも理屈がないとモノはできないんですよね。
ただ、理屈でいえばこっちのほうがいいんだけど、
触った感性でいうと、こっちの勝ちみたいなところがあって。

杉野

そうですね。

紺野

3Dボリュームでのやり取りもそうでしたね。
最初は「ソフトでの制御でいいんじゃないか」というところからはじまって、
杉野さんからは「+と-のスイッチがいいんじゃないか」という話があって、
で、僕らは「いや、アナログ感覚でスライドできないとダメ」みたいに・・・。

杉野

今回はそのような発想の仕方に接することができて、
ハードを専門にやってきた僕らからすると
とても新鮮に感じたんです。

岩田

何しろソフト屋さんは、ハード屋さんの都合を一切考えずに
しゃべってますからね(笑)。

紺野

すみません、思いつきばかりで(笑)。

岩田

でもわたしは、Wiiを開発したときにも
つくづく感じたことなんですけど、
任天堂には、ハード屋さんとソフト屋さんが同じ建物にいて、
あっちがこう来れば、こっちは次にこう返し、という
そんなやりとりを繰り返しながら、ものづくりをするという意味では、
先ほど杉野さんも言いましたけど、
すごく任天堂らしいものづくりができた印象があります。
 
それに、裸眼で立体視ができる商品としては、
今回のニンテンドー3DSが、たぶん何百万というまとまった数量が
短期間にお客さんの手に渡る最初のデバイスになるチャンスがあって、
「え? 3D? 大丈夫?」と言っていたような人たちでも、
一度でもご覧になると、
「お? いいぞ・・・」に変わっていくように思うんです。
それは、3Dゲームがトラウマになっていた杉野さんでさえ、
「いいかも」と変わっていったわけですから(笑)。

杉野

そうですね(笑)。

岩田

ところが、3DSという商品は
雑誌や新聞、テレビやインターネットなどのように
従来のメディアを通じて見たときの印象と、
現物を見たときの印象が大きく違いますので、
とにかく実際に見ていただかないとはじまらないんですよね。
そのために、2011年1月8~10日の3日間、
幕張メッセで、3DSの体験会を開いたわけですけど、
3Dに対して最初から前向きだった方から懐疑的だった方まで、
いろいろなお客さんにご来場いただきましたが、
あらためて、「3DSは現物をご覧いただくことで
初めてその価値が理解いただける商品だ」ということを実感しました。
多くのお客さんが、実際にご覧になって
「3Dの画面が想像以上に自然に立体的に見える」と言ってくださったので、
体験会を開いた手ごたえがありましたよね。
あと、ARやジャイロの使い方など、
わたしたち作り手が面白いと感じていたところは
お客さんにも感じていただけることも確認できました。
インターネット中継でご覧になったお客さんが
来場された方より遥かに多いんですけど、
これからも発売に向けて、
実機をご覧いただく機会を増やしていきますので、
興味を持たれた方には、
ぜひ、実際にご自身の眼で確かめていただきたいですね。

紺野

そうですね。

梅津

わたしは先日、初めてメニュー画面を見たんですけど、
メニューが立体視になっていたんです。
それを見るだけでも面白いんです。
メニューがただ並んでいるだけなんですけど、
全部のメニューを見たくなってしまったんです。
ここまで立体視を使ってもらえるとは思いませんでしたので。
なので、メニューだけでも人に見せたくなるんですよね。

岩田

メニューだけでなく、
人に見せたくなる材料はたくさん本体に入ってますし。

紺野

はい、内蔵ソフトはいろいろ入ってます。
ですから、3DSを買っていただいて、ソフトは・・・。

岩田

ソフトを買わなくても、
本体だけでけっこう遊べてしまいそうな感じがありますね。
それでは、わたしたちは困るんですが(笑)。

紺野

はい。逆に「買っていただけるんだろうか」と心配になるくらい(笑)。
それくらい本体でいろいろ遊べますし、
ぜひとも楽しんでいただきたいと思います。

岩田

そんなふうにハードのほうは固まりましたけど、
ソフトもハードの魅力に負けてはいられませんね?

紺野

頑張ってハードの魅力に負けない面白いものをつくってますので
ぜひ楽しみにしていただきたいですね。

岩田

はい、期待してます(笑)。
今日はみなさん、ありがとうございました。

一同

ありがとうございました。