廣野さんは今回、
キャラクターをつくったわけですよね。

はい。

キャラクターをつくるとき、はじめから
けっこう細かく設定が決まっているものなんですか？

いえ、細かくないです。
「◯◯っぽい感じにしてください」と
けっこうざっくり言われることもありました。

最初はざっくりと注文を受けたものが、
最終的にどうしてあんなに濃いキャラクターになるのか、
わたしにはちょっと興味があるんですが。

・・・いろいろと妄想してみるんです、最初に。

へえ、妄想ですか（笑）。

わたしがこのプロジェクトに参加したときは
地形もまだできていませんでしたので、
たとえばゼルダのコスチュームを考えるとき、
「空」を舞台にしているから
「バックの青空に映える赤がいいかな」とか。

はい。

しかも鳥に乗るので
「マントがなびくとかっこいいかな」とか、
「スカイロフト」は高い場所にあるので
「気候はちょっと寒いのかな」とか
自分でいろいろ妄想して、
地形担当の人やデザインリーダーといっしょに相談しながら
「じゃあこういう服を着ている世界にしよう」ということで
キャラクターをつくりあげていきました。

デザインリーダーは、
「どんどん妄想しなさい」と
背中を押してくれるんですか？

そうですね（笑）。
それに、キャラクターを考えるにあたっては、
いろいろなパターンのイラストを用意するんですが、
それをもとに、ネタをかぶせてくれることもありますし、
そこから絞り込んでいったモデルに対して、
プランナーさんやシナリオ担当の人が
個性的なセリフを付けてくれたり、
サウンド担当の方が、実際に声を付けてくれたりして、
ひとつのキャラクターに、
いろんな人のアイデアとかネタとかが、
最終的にはギュッと詰め込まれる感じなんです。

つまり、みんなで寄ってたかって、
キャラクターをどんどん濃くしていくんですね。

そうですね。

まるで襲いかかるように？（笑）

はい。だから濃くなるんです（笑）。

ちなみに、「濃い」といえば、
あのギラヒムのことなんですが、
そもそもあの敵は、どうしてあんなに濃くなったんですか？

最初はあんなふうな設定はもちろんなくて・・・。

最初はどういうお題だったんですか？

剣戦闘をする敵で、
何か目的を持って暗躍する魔族長、
性格はちょっとキザで、ナルシストのような・・・。

お題はそれだけなのに、
最後はあんなふうに仕上がっちゃうんですか？（笑）

そうですね。
大事なキャラなんですけど、詳細がわからないので、
みんなでアイデアをいろいろ出しあって、イメージを固めていきました。
デザイン的には、キャラクターのシンボルになるような図形があると
印象が強くなるという意見があったので、
ひし形を多く取り入れたデザインになりました。
衣装だけでなく、エフェクトにも取り入れてもらいました。

さらに、先ほどの話にあったような感じで、
シネマシーンやシナリオ担当の人たちも
乗っけられるだけ乗っけていくんです（笑）。

やっぱり寄ってたかって、という感じで、
最初は「くねくねと変な動きをするんだよ」と
文字だけで書かれていたのが、
絵コンテを描く人の手にかかると
その数段上をいくような絵に変わっていたりしていました。

で、敵担当の人からは不気味さを強調するために、
「舌なめずりをさせたい」という話があったんです。
そこで、舌に骨とかを入れて^（※12）。

わざわざ舌に関節まで入れたんですか？

はい。それで、最初に登場したときの
舌をしゃーと出すシーンができたんです。

サウンドの人たちも
「もっとこんな声を！」ということで、
すごく気合いが入ってました。

ホントにそうでした（笑）。

その結果、全身タイツ姿で、
こんなふうな感じで・・・
（ギラヒムが登場するときのポーズをとりながら）
「ふっふっふ」と高笑いをしながら出てくることに（笑）。

（笑）

なので、ギラヒムは
みんなで育てたようなところがあるんです。

みんなで寄ってたかった結果、
あのような濃いキャラになったんだと思います。

でも・・・ああいったナルシストのような敵って、
女性の目から見て、どうなんですか？

みんなから愛されています。

（そろってうなずく）うんうん。

そうなんですか（笑）。

自分から、
「ギラヒム様と呼んでくれて構わないよ」
とか言うんですけど・・・。

なかには「ギラ様」と呼ぶ人もいますからね。

そう（笑）。

なので、大人気です（笑）。

すごく愛されてると思います。

・・・かぶせ合いのクリエイティブで、
女性からも愛される敵になったんですね（笑）。

そう思います。
何度も出てきますし、セリフも個性的ですので、
ぜひ楽しみながら戦ってほしいです。

わかりました。
では、ここで話題を変えて、
プランナーの保坂さんにお訊きします。
保坂さんは「火山」を担当したということですけど、
もともとどういうテーマではじまったんですか？

わたしがプランニングを担当したのは、
「火山」の２回目だったんです。

つまり、１回目を遊んでいるので、
基本はすでに学んでいる状態での
「火山」の遊びを考えたんですね。

はい。それに１回目に苦労して倒した強い敵でも、
すでに倒し方がわかっているので
「普通の敵として、いっぱい出してもいい」とか
「その代わりに新しい敵をつくってもいい」とか・・・。

ああ、そのお題の出し方も面白いですね。
そういうふうに言われて、何から考えるんですか？

まず、ダンジョンで入手できるアイテムを使ってできる遊びを
思いつく限り書き出します。
で、それをパズルのように並べ替えながら、
まずここで基本をマスターしたから
その応用の遊びをこっちでやって、みたいに
遊びの流れを考えるようなことをしていました。

まず構成要素を用意して、
ダンジョンを進む流れを考えていくんですね。

そうです。
でも、ダンジョンを考えるにあたって、
わたしがどうしてもこだわったことがあったんです。
そもそも、ときどき岩が落ちてきたり
たくさんの怖い敵が襲ってきたりするような場所に、
あんな小さな身体のリンクが
単身で乗りこんでいくということに、なんだか・・・。

「どうして独りでそんな場所に？」と思いますよね。

そうなんです。
こんなこと、自分ではできないと思ったんです。
もちろんゼルダを助けるという大きな目的があるとはいえ、
もしわたしだったら、途中でキレてしまうかもと。
そこで、ダンジョンに登場する
キャラクターたちに協力してもらうことにしました。

キャラクターたちがほめてくれるんです。

ほめる？ リンクを？

（うれしそうに）はい、そうです（笑）。