岩田
今日はWii版の『みんなのリズム天国』のために
みなさんに集まっていただきました。
つんく♂さん、前回のDS版
社長が訊く『リズム天国ゴールド』(※1)のときに
お会いしてから、もう3年です。
つんく♂
早いですね。
※1
『リズム天国ゴールド』=2008年7月、ニンテンドーDS用ソフトとして発売されたノリ感ゲーム♪。シリーズ2作目。
岩田
『リズム天国』は、最初にゲームボーイアドバンスで発売して、
その次のDS版で、おかげさまでたくさんの方に遊んでいただいて、
もう随分時間が経ちましたけど・・・、
やっとWii版を世の中に提案できるときがきました。
まず、みなさんが今回、何をされたかということと合わせて、
自己紹介から始めましょうか。
つんく♂さんは改めて自己紹介していただくまでもありませんが(笑)。
つんく♂
いやいや、よろしくお願いします。
ぼくは前作と同じくプロデューサーとして
ゲームの総合プロデュースをさせていただきまして、
曲の大半の作曲を担当しました。
あとは“リズムゲームの楽しさ”という線から
外れないように旗を振ってきた、という感じです。
岩田
『リズム天国』はもともと、
「日本人のリズム感を変えるんだ!」という
つんく♂さんの使命感から始まったプロジェクトですから、
そのエネルギーは今回も健在ですよね。
つんく♂
そうですね、本当に。
「日本人、がんばらないと!」っていまも思ってますから。
鎌田
TNX(※2)の鎌田こーじと申します。
はじめましてです。
※2
TNX=東京都港区に本社を置く日本の総合エンターテインメント会社。つんく♂さんが代表取締役を務める。
岩田
はじめまして、ですね。
よろしくお願いします。
鎌田
よろしくお願いします。
ぼくはサウンドディレクターとして、
つんく♂さんがつくった曲を
リズム論に基づいてカタチにしていきました。
岩田
“リズム論に基づいてカタチにする”というのは、
どんな特別なことが要求されるんですか?
鎌田
つんく♂さんがつくるデモ曲には、
一般的な譜面上に書かれる音符では表現しきれない
メロディーやリズムにポイントがあるんです。
そのノリを忠実に再現できるように
すごく意識してつくりました。
飯田
どうも、飯田寛と申します。
ぼくはアドバンス版の『リズム天国』(※3)から今作まで、
つんく♂アシスタントとしてゲーム監修のお手伝いと、
京都のみなさんとTNXとの伝言板的な役割をしました。
岩田
飯田さんは、1作目からずっとのおつきあいですね。
今回も任天堂とのやりとりの前面に立っていただき、
大変お世話になりました。
※3
『リズム天国』=2006年8月、ゲームボーイアドバンス用ソフトとして発売されたノリ感ゲーム♪。シリーズ1作目。
竹内
企画開発部の竹内です。
キャラクターや世界観に関する
グラフィック全般のディレクションを担当しました。
米
企画開発部の米です。
一部のBGMと主に効果音などの
サウンド全般を担当しました。
正岡
企画開発部の正岡です。
今回もプログラマーとして参加しました。
ネタ出しやゲームの細かい調整など、いろいろやりました。
岩田
はい、ありがとうございました。
つんく♂さん、前回の『リズム天国ゴールド』は
200万本近い数が世の中に届いたんですが、
ゼロから始めたものが2作目にして、
これほどの商品に育つというのは
とても珍しいことだと思うんです。
前作が世の中に広がったとき、どう感じていましたか?
つんく♂
前作から初めてプレイされた方も多いと思うんですけど、
『リズム天国』は5分だけやろうと思えば5分で終われるし、
何度も楽しめるし、「ちょっと貸して」ができるし、
ゲーム本来の基本的な部分を持っていたんですよね。
あと、リズムという万国共通なものを
とらえていたので、子どもから大人まで、
広がっていったんだと思います。
岩田
じわじわじわーっと広がった手ごたえがありますよね。
つんく♂さんは以前、
「世の中に音ゲーはたくさんあるけれど、
『ここがボタンを押すところ?』
といったフラストレーションを感じていた」
とおっしゃっていましたが、
『リズム天国』では納得のいくところで
リズムを刻めたことで、「気持ちいい!」というのが、
感覚的に伝わったんじゃないかという気がしています。
つんく♂
そうだとしたら、本当にありがたいです。
岩田
それから、いままでの音ゲーを難しくする方法は、
むやみにテンポを上げて音数を増やしたり、
不自然なタイミングを要求したり、というように、
つんく♂さんからは少し理不尽に見えていたんですよね。
つんく♂
はい。『リズム天国』では、
難しいゲームのほうが、音数が少なかったり、
テンポが落ちたりするものもあるんです。
なので、できる人ほど気持ちいいんです。
できない人も、できたら非常に達成感があります。
岩田
そういう意味では「日本人のリズム感の向上に貢献したい」
という野望は、過去2作で部分的には果たされたと思いますが、
今回、つんく♂さんの次に向けての動機は何だったんですか?
つんく♂
音楽を何十年もやっていても、
リズムについては、毎回つくっていて新鮮で、
「こんなリズムにチャレンジしたい!」っていうものがあるんです。
前作は“タッチして、はじく”というアクションがあったので、
Wii版に関してはアドバンス版のように、
“押す、叩く”という打楽器的な感覚に集中しました。
あと、今回はテレビ画面を共有できるので、
家族でやるときの「貸して貸して!」感を大事にしました。
岩田
確かに、リズムゲームには人がプレイしているのを見て、
「なんでこんな簡単なのに失敗するの?
ちょっと自分にもやらせて!」となって、
でもやってみると意外とできない、といった面白さがありますよね。
つんく♂
今回の『みんなのリズム天国』は家の中が湧くと思います。
計算ではないミステイクが、家族中をハッピーにすると思うんです。
たとえば恋人同士で遊んでも、
いつも偉そうな彼氏が、彼女に頭が上がらなくなるかもしれない(笑)。
で、3〜4回やれば、絶対にうまくなるんです。
それも重要なポイントなんです。
岩田
自分で上達も確認できるし、まわりに自然と笑顔が生まれるし。
そういう意味では、携帯型で育った『リズム天国』が
据置型ゲームになるのは、必然だったのかもしれませんね。
竹内さん、今回、Wii版『リズム天国』の可能性を
任天堂としてどのようにして進めていったんですか?
竹内
まず、Wiiリモコンでボタン操作にするのか、振るのか、
どちらが『リズム天国』に適しているのかを検証してみました。
ただ・・・正岡さんに試作品をつくってもらったんですけど、
熱くなってWiiリモコンを振ると、手が疲れるんです。
正岡
そうなんです。
ずーっと振っていると疲れて、
だんだんしんどくなるんです・・・。
米
やっぱり、ほかのゲームに比べて
どうしても振る回数が多くなりますから・・・。
岩田
最初は、「Wiiリモコンは振るもの」
という意識から始まったでしょうから、
振る操作と『リズム天国』との相性を
どうやって解決するかが悩みだったんでしょうね。
つんく♂
そうなんです。
でも、振ることにこだわりすぎたら
このゲームはできないので・・・。
岩田
『Wiiスポーツ』(※4)のようなゲームと比べると
時間あたりの入力回数は
『リズム天国』のほうが圧倒的に多くなりますからね。
じつはわたしは「Wiiリモコンだから振らないといけない」
とは、全然思っていなかったんですが、
みなさん、すごく言いにくそうな顔で
「ボタンだけの操作がいいんです・・・」って
言ってきたんです。なので、
「別にボタンだけでいいんじゃない?」って言いました。
つんく♂
そういうゲームがないと面白くないですもんね。
※4
『Wiiスポーツ』=「テニス」「ゴルフ」「ボウリング」「ベースボール」「ボクシング」の5種目を収録したスポーツゲーム。2006年12月、Wii本体と同時発売。2009年6月には、その続編となる『Wiiスポーツ リゾート』が発売された。
竹内
今回は、ボタンだけで、しかもグラフィックも2Dです。
・・・・・・すいません、本当に(笑)。
岩田
いや、いいじゃないですか(笑)。
いまのテレビゲームの流れとは明らかに違いますが、
だからこそ個性が引き立つわけです。
正岡
3Dのモデルで実験もしてみたんですが、
2Dの絵のほうが、ボタンを押したあとすぐ反応するし、
よりキレのある動きがつくれるんです。
米
絵がリアルすぎると、逆に違和感があるんですよね。
岩田
たとえば、ボタンを押してパンチを出す場合、
構えのポーズから、パンチを出すポーズまでの
腕を動かす時間が一瞬だと、
リアルな絵ほど不自然に見えるんですよね。
でもデフォルメされた絵ならその部分がOKになって、
人間が感覚的に許容するような動きになるんです。
だから、じつはいろんな試行錯誤があって、
ここに行き着いているわけですよね。