岩田
では今作の魅力を、それぞれの言葉で
お客さんに伝えてもらえますか?
まずは正岡さんからお願いします。
正岡
そうですね・・・今回、
「いままで以上に間口を広くしたい!」という
思いがあって、いろんなお手本が見られたり、
練習中にガイドがついていたり、
最初に正しいリズムがわかるまでの
フォローをたくさん入れています。
だから「少し難しいかな?」と思った方も、
今回はぜひ、くらいついていただければと思います。
岩田
最初はできなかったものが
できるようになったときは、たまらないですよね。
つんく♂
ですね。ただ単にクリアするという点は、
それなりにできると思うんです。
でもハイスコアから、パーフェクトねらいになると、
相当リズムをわかっていないととれないですから。
そういうところのフォローは本当にたくさん入っているので
前回よりもていねいになっています。
岩田
では、飯田さんのオススメは?
飯田
1発目の打ち合わせの雑談で、
「子どもたちの遊びって、音楽になってますよね」
っていう会話が出たんですね。
「♪なーになにちゃーん、あーそびーましょー」という
かけ声ひとつでも、音楽になってるんです。
それがいわゆる“くり返してもあきないリズム”で、
Wii版にはそういうものが多く入っているんです。
あと画面を共有することで、
まわりと面白さを共有できるところが、子どものころの、
すぐ遊びにとけ込める感じと似ているんですよ。
むかし、ドリフ(※6)のコントを見たあと、
笑えて楽しいフレーズを
何度もくり返して歌ったりしていると親に怒られる・・・
そんなギリギリの楽しさが、今回のポイントかなと思います。
※6
ドリフ=ザ・ドリフターズ。日本のミュージシャン・コントグループ。
岩田
なるほど。本当に見ているのが面白いゲームですよね。
わたしの定義する「いいゲーム」の要素のひとつに、
「まわりで見ている人が楽しい」というのがあって、
任天堂でもともとつくってきた伝統的なテレビゲームの中でも
そういうものがたくさんヒットしてきたんです。
だからタイトルの「みんなの」の意味は、
「コントローラが4つあって同時にプレイする」
じゃなくて、1人が遊んでいるのをまわりのみんなが、
固唾をのんでみたり、失敗したら笑って餌食にしたり(笑)、
「みんなの」の意味は「みんなで楽しむ」なんですよね。
つんく♂
ああ、ほんまですね!
うーん・・・面白いです。
飯田
けん玉とかヨーヨーと一緒で
「ちょっと貸してみ」みたいな感じですよね。
岩田
そう、気軽に「ちょっと貸してみ」と言いたくなる感じがあるんです。
でも、パーフェクトを極めようとすると、
すっごくストイックなゲームで、その両面性が面白いですね。
「全部パーフェクトにしなさい」って言われたらひるみますもんね。
つんく♂
前作では、知り合いのミュージシャンやドラマーは
買った翌日の夜ぐらいまで、とにかく全部
パーフェクト出るまでやりつづけていたらしいです。
「つんく♂さんにここで負けるわけにはいかない!」
っていう対抗意識の中で(笑)。
岩田
ではまた、そのみなさんに徹夜してもらいましょう。
一同
(笑)
岩田
米さんは?
米
シンプルなボタン操作に戻ったところが、
ある意味、魅力的なところかと思います。
『リズム天国』のリズムは、
まわりで見ているお父さんやお母さんも、
むかし自分が小さいころ、何かしらのかたちで
経験しているリズムのはずなんです。
だからそれを聴いて、自分と関係あることを感じて、
自然とゲームに引き込まれていくといいなあと思います。
岩田
鎌田さんは?
鎌田
とにかく、立ち上がりたくなるゲームなんです。
実際に打ち合わせのときも、
つんく♂さんが横でやっていると、
横で飯田がノリノリになっているわけです。
それほど、そこにいるみんながノれるゲームなんです。
みんなで立ち上がってノッているシーンが
見られたらすごくいいなあと思います。
岩田
竹内さんは?
竹内
ぼくは“笑い”です。
シンプルに、ボタン1個で広がる、
しょうもない世界観なんですが・・・。
岩田
自分でつくっといて、しょうもないもないけど(笑)。
竹内
自然と顔がにやけてくるというか(笑)。
その感じを家族や友だちと共有してもらいたいし、
ぼくもまず、(全員を見まわして)ここにいる仲間たちを
笑わせるつもりで描いていましたから、
ぜひ遊んで笑ってもらいたいなと思います。
岩田
はい、つんく♂さん。
つんく♂
いまの話も面白いですね。
音楽を伝えるときも、
ぼくがプロデュースしている子たちには、
「みんなにしゃべりかけると、いちばん弱くなる」
と教えているんです。
たとえばコンサートのステージで
「会場にいる1万人のみなさんに届けます」
という台詞でも、歌うときは“1対1”なんです。
見ているお客さんにとっては、
“オレとあなた”じゃないですか。
岩田
1万人のそれぞれの人が“オレとあなた”なんですね。
つんく♂
でもどうしても、つくっていると
“オレ対みんな”になるときが多いんです。
でもそういう歌は、パワーがないんですよ。
1万人いると、1万分の1にパワーが散っちゃうんです。
だからゲームをつくるときも同じで、
「まず仲間に見せたら、どんなリアクションをするかな?」とか、
「ぼくがつくった曲にどんな絵をはめてくるかな?」とか、
つねに身近なリアクションを求めることが大事で、
ゲームをする相手が的確に見えていたことが
ひとつのパワーになっているなと思いました。
岩田
遊んでいる人の、具体的なイメージがあるんですね。
つんく♂
そう、そうです。
でも、ぼくが本当に思うのは、リズムというものが
いかに人間の生活に大事なものであって、
文化の成長にも必要なものであるかということです。
それを単純にバカバカしく、難しくなく、
理論とかも感じさせないゲームとして入れているのが、
『リズム天国』のよさかなって思っています。
だから日本人のリズムが、本当によくなればいいですね。
岩田
そう思いますね。
つんく♂
このあいだ、ぼくの知り合いと町でパッと会ったときに、
小学2〜3年生ぐらいの子どもを連れていたんです。
で、お父さんが
「ほら、モーニング娘。のつんく♂さんじゃん」
って言っても、子どもがきょとーんとしてて、
「おまえ『リズム天国』やってるやろ。あれつくった人や」
って言ったら、「へええーっ!」みたいな顔になって。
岩田
へえー! そのお子さんにとっては、
“モーニング娘。のつんく♂さん”じゃなくて、
“『リズム天国』のつんく♂さん”なんですか!
それはすごいです。
つんく♂
はい、急にパアーッと尊敬する顔に変わって(笑)、
「あのゲームをつくったおじさんなんや〜!」って。
今回もそんなふうに広まれば、
ぼくも本当にやりがいのある結果になると思っています。
岩田
最後につんく♂さん、最初に企画書を
書かれたときに提案してくれたことは、
いままで3回ご一緒してどれくらい実現できましたか?
つんく♂
この『リズム天国』で、5〜6年前から
リズム感をすり込んできたので、まぁ、あと何年かして、
このゲームで遊んだ子どもたちが成長したら、
ぼくはかなり結果が出てくるような気がしているんです。
岩田
では、じつはもう種は蒔かれていて芽は出ているはず、
という手ごたえをお持ちなんですね。
つんく♂
そうですね。ま、あと何年かして
「『リズム天国』世代なんです」って子たちが入ってきて、
次にぼくがプロデュースする仕事に
つながっていければいいなあと思います。
「『リズム天国』のほら、あの曲のリズムや」
って説明できれば話が早いじゃないですか(笑)。
一同
(笑)
飯田
できていなければ、
「アドバンス版からやり直してこい!」っていうことですかね(笑)。
岩田
わたしは、つんく♂さんが最初に提案してくださったことは
かなりかたちにできたんじゃないかという手ごたえがあります。
これをたくさんの人にお伝えして、
またみなさんの話題にしていただけたらうれしいですね。
つんく♂
がんばりますので、よろしくお願いします。
岩田
また、つんく♂さんを尊敬の目で見る子どもさんが増えるように、
任天堂もがんばりたいと思います(笑)。
一同
(笑)
岩田
みなさん、今日は本当にありがとうございました。
一同
ありがとうございました。