岩田
今回、開発に時間がかかりましたけれど、
後半、加速しましたよね。
ゲームの開発現場で、終盤にガッと来るものは
いいものができることが多いんですが、
そのときに起こったことはなんだったんですか?
つんく♂
うーん、後半、みんなの意志が固まって、
「こっちの方向ね」みたいな感じに
なってからは確かに早かったです。
米
リミックスができはじめたころでしたよね。
そのときはどうつくったらいいか悩んでいたんですが、
そのころに正岡さんがリミックスをテストでつくってきて、
それがすごく手ごたえがあって、
「いけますね!」って話をしたおぼえがあります。
正岡
あれは1年以上前でしたかね。
岩田
あと、終盤に一気に人を増やしましたよね。
竹内
グラフィックチームは、前作から引き続き
関(今日平)(※5)さんと2人で終盤までやりましたが、
仕上げのタイミングで3人増やしました。
スタッフそれぞれの力が、
思っていた以上に効果的に出たと思っています。
※5
関今日平=企画開発本部企画開発部所属。前回の社長が訊く『リズム天国ゴールド』に登場。
岩田
前作はすごくコンパクトなチームでやっていましたから、
今作は当社比3倍ぐらいの感じになりました。
なぜ加わった人がうまくチームになじんで機能したと思いますか?
竹内
みんな若くて、純粋に前作のファンだったんです。
あと、バリエーションを持たせるために
軽く指示を出すだけで、基本ほったらかしでした。
(米さん、正岡さんを指しながら)
ここの関係と一緒ですけど(笑)。
つんく♂
みんな力を発揮できるから、自分で責任を持つんですよね。
竹内
そうですね。
岩田
なんだかみなさんを拝見していると、
自分の想像外のものが出てくることを
よろこんでいる感じがするんですよ。
つんく♂
はい、毎回、楽しみですねー。
「今日はどんな笑いが起こるんやろう!?」って。
岩田
過去のゲームを遊んで「ゲームの軸は何か」を
共有していたからこそ、いい感じでまわったんでしょうね。
米さんは、音がうまくいったのはどうしてですか?
米
サウンドに加わった2人も、前作のファンだったんです。
で、ぼくが「絶対、こうだ」と決めずに
その人の個性が出せるように指示しました。
岩田
普通のゲームとはちょっと違う、
やりがいのあるテーマだったのかもしれませんね。
米
そうですね。
プレイしたあとに頭の中でぐるぐるまわる、
インパクト勝負な音づくりが大事でした。
岩田
音楽をつくる方は、世の人々の頭の中で
ぐるぐるまわる音楽をつくったときに
最高の達成感を味わえると思うんです。
つんく♂
そのとおりです。
どこかでリフレインする何かがあります。
米
とにかくつんく♂さんの曲は、
頭の中でまわりやすい曲がすごく多かったんです。
岩田
『リズム天国』を遊ぶと、
ついもう1回やってしまうんですが、
そのとき頭の中で曲がずっとまわっているんですよね。
正岡さん、プログラム面でも人が増えたんですか?
正岡
後輩が1人入ってきて、メインゲーム以外の
エンドレスゲームとかをお願いしました。
けっこう言いたい放題に、意見をしてくる性格で・・・。
岩田
それ・・・褒めてるんですよね?
正岡
褒めてます、褒めてます!
これまで実装してなかったアイデアを
どんどん言ってくるんですよ。
しつこく、しつこく、言ってきたんで、
やってみたら・・・よかったんです。
岩田
・・・褒めてるときに「しつこい」って
言葉は普通は出ないんですけど・・・、
やってみたらよかったんですね(笑)。
正岡
はい、かわいい後輩なんです。
やっぱり、新しい人が新しい目で
言いたいことを言うと、変わりますね。
あ、ほんとに褒めているんですよ?
一同
(笑)
岩田
任天堂側のアウトプットは、定期的にどう見えましたか?
飯田
いや、もう・・・、
(東京・京都間の)遠距離恋愛の楽しみを
誰よりもぼくが楽しませてもらいました。
遠距離恋愛って、しばらく会わないと
彼女の髪型や化粧が変わっていたり、
洋服や小物の趣味が変わっていたり、
些細な変化に感動したりしますよね。
そんな感覚でいつも打ち合わせをしていたので、
何から何まで楽しかったです。
ぼくらも、ものをつくる仕事をしているので、
任天堂さんの引き出しや発想を見るたびに、
自分らの仕事の中で「こういう発想もありか」という
ヒントもいっぱいいただいて、すごい楽しかったです。
つんく♂
そういえば、今回、彼はイラストも描いてるんですよ。
岩田
あ、そうなんですか!
飯田
あ、はい。ぼくは音楽の仕事で東京に出てきたんですけど、
大阪ではデザインの学校に行ってまして・・・。
岩田
すいません、デザインの学校に行った方が、
どうして音楽の仕事をされてるんですか?(笑)
飯田
・・・ちょっと長くなってもいいですか?
岩田
どうぞどうぞ。
たまにこういう質問をするんです(笑)。
飯田
両親がそういう人だったんです。
父親は絵が好きで、建築設計の仕事をしながら
若い頃はジャズバンドをしていて、
母親も音楽が好きで、学生の頃は歌やマリンバをやっていて、
ぼくら子どもは兄弟3人とも小学1年から
エレクトーンを習っていたんです。
父親は、日曜日にぼくらがミニカーで遊んでいると、
そのミニカーを立体的にチラシの裏に描いて見せてくれるような人で、
ぼくはいずれどちらかに進もうと思って、
音楽と絵の両方をやってたんです。
それで高校を卒業して、
デザインの勉強をしつつバンドをやってまして、
19歳のときにつんく♂さんと出会ったんです。
岩田
じゃあ、その学校に通っているころから、
つんく♂さんと出会われて、道が決まったんですね。
飯田
はい。で、デザインの学校を卒業したと同時に
音楽の仕事として東京に来る機会があって、
いまの自分がいるんです。
そういうお話をさせてもらったときに、
「じゃあ、飯田さんも描いてみる?」って
竹内さんに言っていただいて、
エンドレスゲームの「まんざい」に出てくる、
漫才師役の鳥2匹の絵を描かせていただきました。
あと、その中に出てくるかけ声もやらせていただきました。
岩田
ああ。そういえばこのゲームは声も自家製なものが多いですね。
竹内
そうですね。
“スタッフみんなが声優”って感じですね(笑)。
岩田
ほぼ全員なんですか?
米
全員ではないですが、けっこうな数です。
岩田
声優のキャスティングはどうやって決めるんですか?
米
たまたまスタッフの声色が、すごくバリエーション豊かなので、
「このキャラクターなら、この人がいい」とか、
そういうキャスティングになりますね。
岩田
自分の声が入り、自分の絵が動くゲームを遊ぶと、
いままでとはまた距離が変わりますか?
飯田
近くなるというよりは、より客観的になります。
発表会でピアノを弾いている子どもを見る親の気持ちというか、
「お客さんは楽しんでいるだろうか・・・」
ってそんな気持ちで確認していました。
岩田
ははは。「あの子、浮いてないかしら」っていう感じですか?
飯田
ええ、「あの子、だいじょうぶかしら?」って。
あと、ぼくらが普段接するときの
任天堂スタッフのみなさんって、声が小さいんです。
でもゲームの中に入っているかけ声とかを聞くと、
「めっちゃ元気やん!」っていう面白さもあります。
つんく♂
そうそう、「声、張れるんや!」ってね(笑)。
岩田
ギャップが大きいんですね。
みなさん、なんで普段は声が小さいんでしょう?
米
すいません・・・。
なんかいつも、緊張しちゃって・・・(笑)。
一同
(笑)