岩田
ほかにWii版『リズム天国』を進めるうえで
任天堂とどんなキャッチボールをしましたか?
つんく♂
“対戦”にこだわらないようにしました。
いくつか2人でプレイするゲームは入っていますけど、
基本的には1人で遊んでいるところを、
横で見ていただきたいんです。
岩田
確かに対戦すると自分のプレイに精いっぱいになってしまって
いちばん面白い“人が失敗するところ”を
見られなくなりますからね。
つんく♂
ま、これは誰かが餌食になるゲームですから(笑)。
一同
(笑)
岩田
遊んでいるのは1人でも、
まわりの人も参加しているように楽しいゲームなので、
全てを多人数同時プレイにする必然がなかったんですよね。
米
そうなんです。
あと、なるべく耳に残るように
インパクトのある効果音を意識しました。
お母さんが近くを通ったとき、かけ声とかが聞こえてきて
「あんた、何やってるの?」ってなればいいなぁって(笑)。
岩田
偶然そばを通りかかった人を引き込む効果音の魔力ですね。
逆に、いままでやってきたことから、
あえて変えたことはありますか?
飯田
画面が大きくなったので、
アホなお遊び部分がよく見えるようになりましたね。
たとえば飛んでいったボールを後ろでキャッチしたり・・・
ああいうのは、DS版では小さすぎて
表現できなかった部分なんです。
つんく♂
メインキャラクター以外で
「くすっ」って笑える部分だね。
飯田
それこそ、まわりで見ている外野のほうが気づくかも・・・。
岩田
外野を楽しませる要素が充実しているのが
今回のポイントかもしれませんね。
それから、今回の『リズム天国』は
大と小の激しさというか、ダイナミックさを感じました。
飯田
ミジンコみたいなのが出てくれば、
ロケットも出てくるし・・・。
岩田
そういう案は、どうやって出すんですか?
竹内
今回はみんなで案を持ち寄りました。
岩田
・・・みんなで出すんですか?
竹内
そうです。
岩田
へえー、すごく変わったつくり方ですね。
つんく♂さんがつくった大きな軸の中で、
あえてこういう言い方をしますけど・・・、
みんなが好き勝手やって、要素を足している感じがします。
つんく♂
ゲームの基本からブレることがないので、
ぼくら(TNX側)もできあがってくるキャラクターを見るのが
毎回楽しみでした。
でも、「なんでこの音に・・・この絵?」
なんて思うこともたくさんありました(笑)。
竹内
だって、そういうイメージですもん・・・。
つんく♂
えーっ、ぼくらのイメージと全然違うんだけど!(笑)
竹内
「つんく♂さんの曲は、そのイメージなんです」
って、ぼくはいつも返します。
つんく♂
でもね、ほんと面白いんですよ・・・。
洋食をつくったつもりなのに、いきなり
中華料理や和食のソースをバンバン入れられるから、
「なんじゃこれはーー!」って思うんですね(笑)。
岩田
「フランス料理をつくったのに、
いきなり豆板醤がかかって出てくる」
みたいな状態なんですかね。
つんく♂
でもね・・・それが許せるんですよ。
なんか知らないけど・・・それが非常に面白いんです。
岩田
鎌田さんは、曲をつくられている立場からどうでした?
鎌田
あ、ぼくも同じです。
ヨーロピアン的な曲なのに絵が中華風だったり、
「着物を着て刀を振るゲームに・・・この曲使うの!?」って
おどろいたり。
でも、つんく♂さんが絵について何も触れないから、
「あれ、違和感を持っていないのかなぁ?」と思いつつ、
最後までいってしまった感じです。
つんく♂
でもね、もしそれを否定したら、多分・・・
全てが終わっちゃうと思うんです。
飯田
でも・・・まさか、ボサノヴァとバレーボールが
一緒になるとは思わないですよねーー?
「ボッサレシーブ」ってゲームですけど。
つんく♂
しかもターンテーブルに乗ってるって、
意味わからんやろ!(笑)
飯田
で、さらにちょっとエロい。
入っているかけ声が・・・エロい!
もうーーめちゃめちゃですよね(笑)。
つんく♂
でも・・・なぜか違和感がない。
鎌田
一見、ミスマッチなんだけど・・・。
つんく♂
ミスマッチじゃないんです。
米
ゲームではバカバカしいことをやっているのに
曲はものすごくかっこいいところが
『リズム天国』の独特さ、なのかもしれないです。
岩田
一見、変なバランスに見えるのに、
味わうと妙に調和がとれているのはなぜなんでしょうね?
正岡
なぜなんでしょう・・・。
けっこう、本当に好き勝手やっているんです。
たとえば竹内さんが絵を描くときは、
何も相談なしに、先に絵が上がってきて、
「これ、入れといてー」って言われるんです。
米さんもまったく同じで、
「よろしくー」って来ることが、すごく多い。
岩田
不安におののきながら、
正岡さんが組み込むんですね。
正岡
「負けてなるか!」と思ってやります(笑)。
でも変にすり合わせないで、
つくったイメージをそのまま組み込むから、
逆に面白いものになっているのかもしれないです。
岩田
普段はわかれて仕事をしているつくり方だからこそ、
できる一面かもしれませんね。
つんく♂
こっちも曲をつくって渡すだけで、
お互いに“無責任な責任”を持ちながら進めていって、
それで生まれた面白さというのがあります。
岩田
だから、仕事のかけあいそのものに
ノリ感があるのかもしれませんね。
でもそれは、つんく♂さんのリズム論がゲームの根底にあって、
そこに妥協がないからこそ成立しているんですよね。
ちなみに、それぞれのゲームには
名前がついていますが、誰がつけるんですか?
米
みんなでです。
岩田
・・・それもみんなで決めるんですか?
米
みんなで決めます。
・・・・・・だめですか?(笑)
岩田
いやいや(笑)。
普通は1人で決めるものなんですけど、
名前も“みんなで”っていうのも珍しいですよ。
ゲームの名前って、みんなで決めると収拾がつかなくなるから、
決める役の人を決めるんですが、
このゲームはそうじゃないんですね。
正岡
絵や音やプログラムは個々の責任者がいるんですが、
ゲーム自体のアイデアに関しては、
本当に“みんなで”って感じです。
岩田
やはり『リズム天国』という軸がしっかりと
立っているからこそ、成立しているんですねえ。
つんく♂
ま、“無法地帯”とも言えますけど(笑)。
一同
(笑)