岩田
今作の特徴をひとことで言うと
どんな感じになるんですか?
堀井
今回はわりと終わりのないゲームなんですよ。
これまでの『ドラクエ』も
エンディングが終わってからオマケがちょっとあったんですけど、
今回はエンディングの後がすごいんです。
岩田
エンディングの後も
楽しめるようにしたかったんですね、堀井さんが。
堀井
はい。やっぱりずっと遊べるというのは大事で。
マルチプレイで人と遊ぶんだったら、
どのようなタイミングから入ってきても
みんながいっしょに遊べなきゃなんないですし、
自分がクリアしていても面白くなんなきゃいけないので。
岩田
堀井さんのていねいな手ほどきで、
どんな人も遊びこめば
ちゃんとゴールにたどり着けるのと同時に、
それが終わったあとも、
みんなで遊べる場所も用意したんですね。
堀井
今回、気合いを入れて
マルチプレイができるようにしたのも
『ドラクエIX』の物語を楽しんだあとは、
ユーザーのみなさんにも、人と人との
現実の物語をつくってほしいと思ったからなんです。
そもそも『ドラクエ』には
たとえば、子どもが攻略できなくても、
親が代わりに助けてあげたりとか、
遊んだ人それぞれに、
いろんな思い出があったと思うんです。
岩田
あそこでつまって、友だちに聞いて進めたりとか、
そういった話がとても多いですよね。
堀井
そういうコミュニケーションツールとしての
『ドラクエ』というのもあると思うんですよ。
で、今回はその傾向がより強くなったと思います。
4人で遊べて、すれちがい通信もできるようになりましたし。
岩田
そもそも、ゲーム機は
人と人とのコミュニケーションを生み出すための
キッカケになるということついては
わたしはすごく大きな可能性があると思っていて。
堀井
本当にそう思いますね。
岩田
わたしたちは、これまでずっと
そういうことに挑戦してきたつもりなんですけど、
DSを活かすとなると、
やっぱり堀井さんも
自然とそういったことをやりたいと。
堀井
だから、コミュニケーションのキッカケになるようなことは
いろいろ用意してるんですよ。
たとえば、すれちがい通信でも、
「え?こんなすごいプレイヤーもいたんだ!」とか
そんなことも起こるようになってますし。
すぎやま
すれちがい通信で、知らない人の
戦績などもわかるようになってるんですね。
堀井
そこで「僕も負けないようにガンバロー」とか(笑)。
そんなふうにして、いろんなドラマが生まれてくれば
楽しいなと思ってるんです。
そうやってみんなとも遊べるんですけど
もちろんこれまでのように
ひとりでも遊べるようになってるんですね。
岩田
今回は、終わりのない『ドラクエ』であり、
人との物語をつくる『ドラクエ』でもあり、
もちろんいままでの『ドラクエ』としての
練られたシナリオもたっぷり楽しめて
さらに、そういった新しい要素もあるということなんですね。
堀井
そうなんです。
岩田
それでは最後に、これを読んでくださってる、
お客さんになってくれるかもしれない人たちに、
ひとことずつオススメの言葉をいただきましょうか。
まずは、すぎやま先生からお願いできますか?
すぎやま
オススメの言葉と言ってもねえ、
たぶん、みなさんはもうわかってらっしゃる。
『ドラクエ』は、理屈抜きに面白いです。
岩田
(笑)
すぎやま
でも、僕がオススメの言葉としているのがあってね。
『IX』も面白いですよと。
岩田
これまでのシリーズと同様に
『IX』も面白いということですね。
じゃあ、堀井さん、お願いします。
堀井
いまの時代、インターネットとか
いろんな環境が整ってるじゃないですか。
だから、けっこう難しめにつくってあるんですね、実は。
いままでよりも、難しいですし、敵も強いんですよ。
なぜそうしたかと言うと、人に聞いてもらったり
ネットで調べたりするようなことも想定しているからなんです。
わかんないことがあればネットで調べる、
そういったことも一種のゲームだと思ってますし。
岩田
『ドラクエIX』のなかにある世界も
自分が存在する現実の世界も
それがキッカケで生まれる人とのコミュニケーションも、
その全部をひっくるめて
『ドラクエIX』というゲームになってるんですね。
堀井
そうなんです。
すぎやま
あ、それともうひとつ。
いままでの『ドラクエ』と違う部分があるかというところで、
遊びとして“着せ替え人形の遊び”というのも、
あると思いますよ。
堀井
マルチプレイもできますし、
やっぱり自分の格好を
人に自慢できるというのは大事でしょう。
岩田
それに、DSなので
いつでもどこでも人に見せることができますしね。
そもそも『ドラゴンクエスト』というソフトは、
日本中のゲームファンの心のなかで
ものすごく大きな存在であることは、
この20年間、何も変わってないと思うんです。
ただ、大きな存在であるからこそ
さまざまな人に、さまざまな『ドラクエ』があると思うんですね。
すぎやま
いまや、どこに行っても、
『ドラクエ』世代がいたりしますから。
岩田
そうなんですよね。
すぎやま
昔は、仕事の現場にいる人は、
『ドラクエ』を知らない人ばっかりだったでしょう。
ところがいまは、あらゆる仕事の現場に
『ドラクエ』をやったことのある人がいるの。
それはもう、しみじみ思いますね。
岩田
たとえばどんなときですか?
すぎやま
先日は、自動車免許のことで警察に行ったんですけど、
そこの人がとても親切にしてくれて、
聞いてみたらその人、
『ドラクエ』で遊んでいたと言うんです(笑)。
岩田
(笑)
すぎやま
それから和食を食べに行ったときも
板長さんが最後にお見送りに出てきてくれて、
「実はわたくし、『ドラクエ』やってます」と。
そんな感じで、あっちこっちに
『ドラクエ』世代の人たちが
ずらっといるように感じるんですよね。
岩田
それはまさに『ドラクエ』による
ユーザー拡大の成果だと思うんですよね。
そのなかには、もちろん初代の『ドラクエ』から
ずっと遊び続けている人たちもいれば
20年前には物心がついていなくて、
最近になって『ドラクエ』を遊びはじめた人もいれば、
ここ数年はなんらかの事情で
ひょっとしたらお休みしてる人もいるかもしれないんですよね。
堀井
そうなんです、いろんな人がいるんですよね。
だからこそ、DSで出す意味もあるかなと。
いろんな世代の人たちがDSを持ってますからね。
岩田
『ドラクエ』がDSで出ることになって
わたしがいちばん楽しみにしていることは
最初の話にも出た、“先生”や“宣教師”の物語なんです。
かつて、『ドラクエ』を遊んだ人が、
どんどん宣教師になって広まっていったようなことが
もう1回、いまの時代に
『ドラクエ』のゲーム人口拡大というカタチで
起こらないだろうかと期待してるんです。
堀井
それはありますね。
ボスを強めにしたのも、そういうことなんですよ。
どうしてもボスを倒せない子どもや彼女がいると。
そんなとき、かつて『ドラクエ』に親しんだ人に
助けてあげてほしいんです。
しかも、かつてのように
ただアドバイスを言うだけではなくって、
自分が強いキャラクターをそのなかに送り込んで、
いっしょに戦って、助けることもできるんですね。
そうすると、やっぱりドラマが生まれると思うんです。
岩田
「お父さんが来てくれてたから、助かった」と
感謝されるようなことも起こるんですね。
堀井
でも、そこでヘマをやったりして。
「何やってんの、お父さん」とか(笑)。
そういったこともまた面白いんです。
そんな笑い話も生まれたりとか、
今回の『ドラクエIX』で、
いろんな世代の人たちに、いろんな物語が生まれると
すごく楽しいなと思ってるんですね。
岩田
そうですよね。
わたしも発売日が本当に楽しみです。
堀井
ホントにね、今回は楽しみなんだけど、
ちょっとドキドキなんです。
どうなるんだろうみたいな(笑)。