6. “三種の神器”

岩田

石原さんは、『ポケモン』が大事にしていることは
なんだと思いますか?

石原

なんでしょうね・・・。
いまおふたりが話したような、
世界観のディテールや、遊びのロジックとか、
面白さは、すごく大事だと思います。
先ほど話題に出たマッギョなんかも、
ポケモンセンター(※19)で、
大ヒット商品になりましたし(笑)。

※19

ポケモンセンター=『ポケットモンスター』関連商品を販売する専門店。株式会社ポケモンが運営を行う。現在は全国7か所。

岩田

あえて言いますが、普通に考えたら
マッギョ単独だと売りづらいですよね(笑)。

石原

はい(笑)。
でも“マッギョせんべい”みたいに
平たいことに意味があるものにすることで、
「これはありだ!」となったんです。
そこが商品開発の面白さと言いますか。
メタルチャーム(メタル製のミニチュア)をつくったときも、
主人公が最初に選ぶポケモンの3個セットが
いちばん売れると思っていたら、
実際にはヒトモシ、ランプラー、シャンデラ
の3個セットが、ダントツに売れたんです。

岩田

あのとき、生産が追いつかないと
おっしゃっていましたよね。

石原

はい。「えっ、どうして?」って思ったんですが、
「売れるに決まってるじゃないですか。
 だってヒトモシはかわいいし、シャンデラは強いし」
とポケモンセンターの店舗運営担当者から言われて
「あっ、そうなの?」って・・・(笑)。
こんなふうに、みんなが“強い”とか“かわいい”とか
多様な理由でポケモンを好きになってくれるところが、
『ポケモン』の魅力なんですよね。
商品開発においても、新鮮さを発見し、
発明しつづけることが大事だと思います。

岩田

『ポケモン』に好意を持つ方はたくさんいても、
「なぜそう感じられるのか?」ということを
考える機会は少ないので、
みなさんのお話は興味深いです。

石原

それからもうひとつ、
3DSでプレイされるお客さんに対する新しい提案ということで、
→『ポケモンARサーチャー』(※20)という、
3DSならではのダウンロードコンテンツをつくりました。

※20

『ポケモンARサーチャー』=2012年6月23日(土)より、『ニンテンドーeショップ』で配信開始予定のニンテンドー3DSダウンロードソフト。ニンテンドー3DSのカメラとジャイロセンサー機能を使って、ポケモンを撃ってつかまえる体感シューティング。捕まえたポケモンは、『ポケットモンスターブラック2・ホワイト2』に連れていくことができる。

岩田

『ポケモンARサーチャー』というのは
どんなものですか?

海野

3DSのAR(※21)技術を使って、
→現実世界を飛び回るポケモンを捕まえる遊びです。
そもそもは「もし、この世界に目に見える形で
ポケモンが存在していたら、どう見えるだろう?」
っていう疑問が、企画の発端になります。
・・・あと素朴な感想として、
ポケモンたちが、DSから
ポケモングローバルリンクの世界に向かっている間、
「もしかしてこの世界を通っているのでは?!」
なんて、へんてこな空想をしていまして・・・(笑)。

一同

(笑)

※21

AR=Augmented Reality(拡張現実)の略。現実の映像に仮想の情報を重ね合わせる技術。

海野

また、ちょうど同じタイミングで、
グラフィックデザイナーのひとりが、
『ポケモンブラック・ホワイト』に登場する伝説のポケモン、
トルネロス、ボルトロス、ランドロスの
フォルムチェンジを考えてきたんです。
そのデザインが非常によかったので、
「このポケモンたちを飛ばせてつかまえたい!」と思いました。

石原

『ポケモンARサーチャー』は
3DS専用ダウンロードソフトですが、
見たことのないフォルムの
ポケモンがつかまえられるだけでなく、
『ポケモンブラック2・ホワイト2』に連れていくことができます。
ほかにも「えっ、こんなポケモンまで?」っていう
意外なポケモンが出てきます。

岩田

もともとクリーチャーズ(※22)さんが
AR技術を研究していて、
→『ポケモン立体図鑑BW』(※23)で実装済みだったので、
スムーズにつながりましたね。

※22

クリーチャーズ=株式会社クリーチャーズ。『ポケモン』関連のゲームソフトやカードゲームの制作に関わるほか、『のののパズルちゃいリアン』(ゲームボーイアドバンス)や『歩いてわかる 生活リズムDS』(ニンテンドーDS)なども開発。1995年設立。

※23

『ポケモン立体図鑑BW』=2011年6月より、『ニンテンドーeショップ』で配信が開始されたニンテンドー3DSダウンロードソフト。『ポケットモンスターブラック・ホワイト』で新たに登場したポケモンを好きな角度から立体で観賞することができる。なお、『ポケモン立体図鑑BW』の配信は、2012年6月17日(日)をもって終了する。

石原

そうですね。
だから3DSで遊ばれる方は
『ポケモンブラック2・ホワイト2』だけでなく、
『ポケモンARサーチャー』もダウンロードしていただき、
その1か月後に出る→『ポケモン全国図鑑Pro』(※24)
ぜひダウンロードして、“三種の神器”として遊べば、
もっと楽しく『ポケモンブラック2・ホワイト2』を遊べます。

※24

『ポケモン全国図鑑Pro』=『ポケモン立体図鑑BW』のパワーアップ版として、2012年7月14日(土)より『ニンテンドーeショップ』で配信開始予定のニンテンドー3DSダウンロードソフト。『ポケットモンスターブラック2・ホワイト2』のイッシュ図鑑に新たに加わったポケモンをはじめ、これまでに登場したすべてのポケモンの情報を最初から見ることができる。

岩田

まさに“三種の神器”ですね(笑)。

海野

はい。
実際に『ポケモンARサーチャー』で捕まえた
めずらしいポケモンを
『ポケモンブラック2・ホワイト2』に持っていくことができますし、
『ポケモン全国図鑑Pro』では、
出会ったポケモンの情報を手軽にチェックしながら
『ポケモンブラック2・ホワイト2』をプレイすることができます。

岩田

そういえば、映画(※25)の直前に
本編の新作を出すのは、
じつははじめてのチャレンジですよね。

海野

はい。ドキドキしているんですけど(笑)。

※25

映画=2012年7月14日(土)から全国公開予定の劇場版ポケットモンスター『キュレムVS聖剣士 ケルディオ』、同時上映『メロエッタのキラキラリサイタル』。7月14日(土)〜9月30日(日)の映画上映期間中、『ポケモンブラック2・ホワイト2・ブラック・ホワイト』のいずれかのDSカードをさしたDSや3DSを持っていけば、幻のポケモン「メロエッタ」を劇場で受け取れる。また、2012年7月13日(金)まで販売している特別前売券では、前売券に付いている引換券と引き換えに幻のポケモン「ケルディオ」を『ポケットモンスターブラック2・ホワイト2・ブラック・ホワイト』で受け取ることができる。

岩田

映画館に『ポケモンブラック2・ホワイト2』の
ソフトを持ってきてもらうんですね。

石原

はい。今回は6月にソフトを遊んでから映画館へ、
という流れになっています。
もちろん『ポケモンブラック・ホワイト』を持っていく人も、
『ポケモンブラック2・ホワイト2』を持っていく人も、
映画館でポケモンを受け取れる仕組みを用意しています。

岩田

いまでこそ映画館の連動は当たり前になっているんですが、
映画館でポケモンを受け取ることをはじめたとき、
前例のないことを映画館のみなさんにご理解いただくのは
大変なハードルでしたよね・・・。

石原

ええ、本当に大変でした。
一軒ずつ、映画館に説明に行ったんですよねぇ(笑)。

岩田

でも、本当に全部の映画館を回ったからこそ、
協力してくださったんです。
最初は半信半疑だった関係者のみなさんも、
実際にたくさんの方が喜んでおられるのを見て
「来年はやらないんですか?」と、変わっていきました。

石原

最初は「日本には、映画館はいくつあるんですか?」
ってところからはじまりましたから(笑)。

増田

映画のエンディングロールに、
映画館の名前が全部のっていますけど、
「なんで映画の中に映画館が入っているんだろう?」
って、事情を知らない方は疑問に思われるでしょうね。

石原

協力していただいた映画館が全部のっています。

岩田

映画館の名前がたくさんのっているエンディングロールは、
確かに珍しいでしょうね。
でもそれも含めて、『ポケモン』の映画体験なんですよね。

石原

そうです。

岩田

ほんとうに実現までいろいろありましたから、
この映画館との連動話だけでも、1時間以上語れるくらいですね(笑)。
今後も、『ポケモン』で新しいことに取り組んでいきましょう。
今日はどうもありがとうございました。

一同

ありがとうございました。