岩田
ふだん「社長が訊く」は
任天堂社員の話を訊くことが多いんですけど、
今回はイズ((株)インテリジェントシステムズ(※1))さんから
お2人お越しいただいています。
『メイドインワリオ』シリーズへの関わりを含めて
最初に自己紹介をお願いします。
まずは杉岡さんから。
※1
(株)インテリジェントシステムズ=『ファイアーエムブレム』シリーズや『ペーパーマリオ』シリーズなどの任天堂ソフトや、歴代ハードの開発支援ツールの開発をしている会社。
杉岡
インテリジェントシステムズの杉岡と申します。
『メイドインワリオ』シリーズで最初に関わったのは、
ゲームキューブの『あつまれ!! メイドインワリオ』(※2)からです。
そのときはプログラマーとして参加しました。
そのあと『さわるメイドインワリオ』(※3)、
『おどるメイドインワリオ』(※4)では
イズ側のディレクターとメインプログラマーとして参加しました。
そして今回のDSiウェア『うつすメイドインワリオ』では
企画立案と試作段階のディレクションに加え、
検証作業も行いまして、
本制作のマネジメントを担当しました。
※2
『あつまれ!!メイドインワリオ』=ゲームキューブ用ソフトとして、2003年10月発売。シリーズ2作目。
※3
『さわるメイドインワリオ』=ニンテンドーDS用ソフトとして、2004年12月発売。シリーズ4作目。
※4
『おどる』=『おどるメイドインワリオ』。Wii用ソフトとして2006年12月発売。シリーズ5作目。
岩田
阿部悟郎さんとのつきあいも長くなりましたね。
杉岡
そうですね。
(阿部さんに)何年くらいになるでしょうか?
阿部
初代の『メイドインワリオ』(※5)が出て、
その半年後に『あつまれ!!』が出たので、
およそ6年のおつきあいですね。
※5
『メイドインワリオ』=初代『メイドインワリオ』。ゲームボーイアドバンス用ソフトとして2003年3月発売。
岩田
あの時の、半年後に『あつまれ!!』を出すというのは
本当に無茶でした。
頼んだのは、わたしです(笑)。
「何としても初代の『メイドインワリオ』を
ゲームキューブで出してほしい」と。
「しかもすぐにほしい」って。
「“すぐ”ってどういうことですか?」
「いやすぐしたいんだ」って、
そんな押し問答のようなやりとりがあって
『あつまれ!!』の開発がはじまったんですけど、
しばらくして阿部さんから
「イズさんに優秀なプログラマーさんがいて
メドがつきました。できそうです!」って話があって。
そのとき初めて杉岡さんの名前をお聞きしました。
杉岡
自分としても、そんなに短期間で
ホントにできるんだろうかと不安で不安で・・・。
岩田
無茶を言うなぁと思いました?
杉岡
でも、やってみると何とかなるもんなんですよね。
そのときにやったことがいい経験になって、
次の開発にもつながっていると思っています。
岩田
今日は触れませんけどDSソフトの『メイドイン俺(※6)』も
阿部・杉岡さんのコンビが担当してますよね。
※6
『メイドイン俺』=2009年発売予定のニンテンドーDS用ソフト。『メイドインワリオ』シリーズに登場するプチゲームを作って遊ぶことができるソフト。
杉岡
はい。『俺』の開発が本当に大変で、
実は今回の『うつす』の仕事は、
隣の森さんに任せっきりだったんです。
岩田
じゃあ、任された森さん、
自己紹介をお願いします。
森
インテリジェントシステムズの森です。
わたしが『ワリオ』に関わった歴史は
最初は『あつまれ!!』で、
アートディレクターを担当しました。
その次に『さわる』ではデザイナーとして関わり・・・
あ、その前に『まわる』(※7)だ。
※7
『まわる』=『まわるメイドインワリオ』。ゲームボーイアドバンス用ソフトとして2004年10月発売。シリーズ第3作目。
岩田
『まわる』も。
森
はい。で、その次が『おどる』ですね。
そのときはアートディレクターを担当しました。
岩田
あつまったり、まわったり、さわったり、
おどったりして、ずっと忙しくされてたんですね(笑)。
森
はい(笑)。そして今回の
『うつすメイドインワリオ』では
イズ側のディレクターを担当しました。
岩田
じゃあ阿部さん。
阿部さんの『メイドインワリオ』シリーズへの関わりを
ここで語る必要はないと思うんですが、
この『うつす』がはじまったキッカケは何だったんですか?
阿部
まだ、DSiの話が出ていない頃に
イズさんから持ち込まれた企画書がキッカケです。
『大人のDS 顔トレーニング』(※8)に
顔を認識するためのカメラがついていましたので、
それを使って『メイドインワリオ』みたいなことができないか、
といったものでした。
※8
『大人のDS 顔トレーニング』=ニンテンドーDS用の表情筋トレーニングソフト。2007年8月発売。
岩田
ちなみに『顔トレ』をつくったことは、
DSiをつくる上でもすごく役立ってるんですね。
たとえば「DSiカメラ」は実は、
『顔トレ』のカメラを使って延々とつくっていたんです。
ハードがありませんでしたから。
今回の『うつすメイドインワリオ』も
そのひとつだったんですね。
杉岡
はい。もともと『顔トレ』の開発には
イズも関わっていましたので、
『顔トレ』のチームからカメラを借りて
試作品をつくることにしました。
阿部
そこで最初につくられた試作品は、
とても変わったスタイルで遊ぶものでした。
左手でDSiを持ち、外側カメラに
右手をかざして遊ぶようになっていて。
杉岡
『メイドインワリオ』シリーズは
スピード感がキモのゲームですから、
処理速度を上げるために
カメラで写した手は
シルエットで見えるようにしました。
岩田
どんな風に遊べたのですか?
杉岡
たとえば崖があって、
渡れなくて困ってる人たちがいる、
そこで指のシルエットで橋を架けると、
無事に渡れるようになる、
そんなゲームをつくっていました。
ところが実験をはじめてみると、
カメラで検知することが
とても難しいことがわかったんです。
森
照明によって手の影ができて、
それを誤って検知してしまうんです。
杉岡
そこで影が写らないようにするために
下に黒いマットを敷いてみたんですが、
たとえば日焼けして真っ黒になった人は
検知されないんです。
森
黒いマットと一体化しちゃって(笑)。
杉岡
そこで、指サックを用意することにしました。
指サックを人差し指につければ、
肌の色の違いがあっても、誰でも遊べるようになると。
森
手袋をつけていたときもありましたよね。
杉岡
それで指サックと黒いマットを同梱して
販売するようなことを
真剣に検討しはじめたんですが・・・。
岩田
そういうの、絶対に買わないでしょうね(笑)。
杉岡
ですよね(笑)。
一同
(笑)
阿部
そもそも、片手でDSを持ちながら、
もう一方の手を動かして遊ぶことに無理があったんですね。
そこで、足を写しながら遊ぶのはどうだろうか、と
いろいろ試したんですけど・・・。
岩田
足まで写しちゃったんですか(笑)!?
阿部
はい、自分の足を(笑)。
すると両手でDSを持てるからいいかなと思いつつも、
やっぱり遊び方としてはどうだろうと。
森
遊んでる姿もおかしいですし(笑)。
阿部
向き合った人の顔をこっそり写して、
ゲーム中の鼻の穴にその人の頭を突っ込んでみたりとか
そういうことをやってみたりもしたんですけど、
どうもしっくりいかなかったんですね。
杉岡
それでもう、外側カメラは諦めて、
内側カメラを使って、
自分を写してみることにしたんです。
阿部
DSを置いて遊ぶようにして、
試作品をつくってみたら
それなりにおもしろみがあったんです。
でも、いままでの『メイドインワリオ』のように
スピード感のあるゲームにするのは難しかったんですね。
で、企画が次第に煮詰まってきて・・・。
そんな中、置いて遊ぶことが決まってから、
最後の最後でもう一度、企画提案をいただいたんです。
それが『さわらない!? メイドインワリオ』というもので。
岩田
さわらない?(笑)
阿部
その企画書には、
プレイスタイルの提案と共に、
最後のページに「おまけ」がついてたんです。
岩田
おまけ?
阿部
変な写真がおまけのように載っていて・・・。
ああ、どうしてもアレの話になっちゃうな・・・。
岩田
アレというのは?
阿部
このゲームの最後に出てくるアレです。
岩田
ああアレですね(笑)。