岩田
『うつす』は、ゲームというよりは
おもしろい動画をつくるツール
と言ったほうがいいかもしれないですね。
森
そうです。
ですから、変な写真を撮るためには、
どんな動作をしたらいいかみたいなところから
ゲーム部分を考えるようにしました。
岩田
ふつうのゲームのつくり方と
主客が完全に逆だったんですね。
森
たとえば首をぶるぶるふるとき、
人にはあんまり見られたくないですし、
自分でもそのときの表情は見る機会がないですよね。
そこで、首をふるゲームを考えたりとか。
岩田
そういうことは理詰めでつくれるんですか?
それともつくったものをいろんな人にさせて
それを観察していたんですか?
森
観察しました。
でも社内からどんどん人が減っていきますので・・・。
岩田
ワナをかけられる初心者が(笑)。
一同
(笑)
森
そんな厳しい状況のなかで、
初心者を見つけては、ちょっとやってもらって、
やりにくそうなところを観察して
何の説明がなくてもできるように調整しました。
岩田
ちなみに印象的な反応をした人はいますか?
森
1人、怒った人がいました、やったあとに。
最初は「なんだなんだ!?」とか言いながら、
遊んでくれてたんですけど、
最後に自分の顔が写っているのを見たときビックリしたみたいで、
「何だよバカヤロー!」と、
DSiに向かって怒ってたんです(笑)。
一同
(笑)
岩田
誰がですか?
森
竹内高さんです。
岩田
竹内高さんって、うちの?
森
はい。
岩田
『メイドインワリオ』や『リズム天国』の
キャラクターを描いた竹内高さん?
森
はい。
「こんなの聞いてないよー!」と叫んでました(笑)。
たぶん、純粋な人ほど怒ると思います。
岩田
熱いなあ、怒り方も(笑)。
一同
(笑)
岩田
これは人にやらせるのがおもしろいゲームなんでしょうね。
自分でやる以上に。
森
人がやってる姿を見ていて、
その人が最後に自分の表情を
見たときのリアクションがご褒美です(笑)。
岩田
ゲームの新しい構造ですね。
自分が費やした以上のものが返ってくるから
ゲームっておもしろいものだったのに
これはちょっと違う。
阿部
そういった面でも
手品に近いのかな、と思っています。
岩田
うん、なるほど。
阿部
ただ、怒らないまでも、
やっぱり撮られるのはイヤだ、という人も
出てくるかもしれないと思うんです。
そこで、次のゲームをはじめると
前に遊んだ映像はすべて消えるようにしました。
森
DSiのフタを閉じただけでも消えちゃうんです。
その場で笑って終わりにしようと。
岩田
たしかに写真が消えてしまえば、
あとからこっそり見られることもないですしね。
わたしみたいに(笑)。
一同
(笑)
阿部
それと、DSiのガイドラインのなかに
カメラで写真を撮るときは
必ず音を出さなきゃいけないという決まりがあるんですが、
今回の『うつす』では、ゲーム中に音が鳴りはじめると、
遊べなくなってしまいますよね。
そこで、撮影した映像や写真を消してしまうことで、
その問題に対応するようにしました。
さらに、もうひとつの仕様として、
ゲームが成功しないと
映像や写真は撮れないようにしています。
森
ですからたとえば、電車のなかとかで
隣に座った見知らぬ人を撮ろうとしても
ゲームが成功しないから
撮影は不可能なんです。
岩田
ただ、せっかく撮った楽しい映像を
残したいという人もいるでしょうね。
森
逆に残せないというところから、
次はもっとおもしろいのを撮ってやろうとか、
そんな気持ちにもなりますし、
今回はゲームの数は少ないんですけど、
逆に何回もトライしてみようという
モチベーションにつながるかなと。
映像や写真を残せなかったことが、
いい意味で一期一会感につながっていると思います。
岩田
阿部さんはDSiウェアで出すことについて
どう思いましたか?
阿部
もしDSiウェアがなかったら、
たぶん「社長が訊く」には呼ばれていないでしょう(笑)。
今回は、プレイ中の写真を撮るというアイデアから
開発が進展していったわけですけど、
1本のパッケージソフトにするとなると
出口がなかったでしょうね。
森
パッケージで出すには、
それなりのボリュームが必要ですしね。
でも今回は、DSiウェアで
500ポイントで配信されることが決まってましたので、
その価格に見合った満足感が得られるように、
ゲームの仕様を決めることができて
作り手としてもやりやすかったです。
岩田
わたしは、このソフトのことを
「大型一発ゲー」という言い方をするようにしたんですけど、
森さん、それを聞いてどう思いましたか?
森
DSiウェアの区分には
「ツール」か「ゲーム」だけだと聞いていたので、
びっくりしました。
コレだけ「大型一発ゲー」。
なんか特別な感じがしてうれしかったです。
岩田
それくらい「やられた!」と思ったんです。
別に恨んでいるわけじゃないですからね(笑)。
外出先でも新しい人に会うたびに
「すぐに終わるからやってみて。おもしろいし」と
言いたくなるソフトですよね。
まぁ、「おもしろい」の意味が違うんですけど。
森
おもしろいのは、やらせたほうなんですよね(笑)。
岩田
ちなみに、どんな人にやらせるのが楽しいんでしょうね。
森
わたしは、ふだんゲームをやらないような
例えばご年配の方々にもプレイしていただきたいですね。
たぶん、すごい画が撮れるんじゃないでしょうか(笑)。
岩田
わたしは、やらせていちばん楽しいのは
やっぱり会社の上司だと思いますよ。
ねえ、阿部さん(笑)。
阿部
・・・はい(笑)。
一同
(笑)
岩田
それにしても『メイドインワリオ』は
新しいハードが出ると必ず登場する
代名詞のようなソフトになりましたね。
さわって、おどって、今回はうつすと。
この商品をどんなふうにお客さんが使ってくださるのか、
わたしもとても楽しみです。
ただ・・・イタズラっ子のように
いちばんワクワクしているのは
これをつくった、ここにいる人たちでしょうね(笑)。
みなさん本当にお疲れ様でした。