社長が訊く
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社長が訊く『ニンテンドー3DS』

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社長が訊く『ニンテンドー3DS』

発売前に宮本さんに、訊いておきたいこと。

目次

8. あのハイラルを3Dで味わってみたい

岩田

今回、『スターフォックス64』と、
『ゼルダの伝説 時のオカリナ』という、
NINTENDO64のソフト2本をリメイクして
ニンテンドー3DSでリリースしますよね。

宮本

はい。

岩田

どうして、いま、この2本なのか。
宮本さんの考えを教えてください。

宮本

そうですね、いろいろと理由はあるんですけど、
やっぱり大きいのは、当時、あの2本は
ポリゴンの数にしてもフレームの処理にしても
ほんとにギリギリで動かしてたわけですよ。

岩田

はい、それが当時の限界だったわけですからね。

宮本

で、もっと上を目指したいなぁ
っていう思いはあったんです。

岩田

いつか、つくり直したいという思いが、
ずっとあったということですか?

宮本

ありました。
ただ、まぁ、タイミングが難しいんですよね。
すぐに出すというわけにもいきませんし。
それで、まぁ・・・あれから何年になりますかね。

岩田

『オカリナ』は1998年ですから、ほぼ13年前ですね。

宮本

うん。そのくらい経つと、世代も一回りして、
当たり前ですけど、いまの小中学生は、
『オカリナ』のことなんてぜんぜん知らない。
小学生のときにNINTENDO64を遊んでた人たちは、
もう二十代半ばくらいになってる。
じゃあ、そろそろリメイクしてみてもいいかな、
と思ったのが、理由のひとつですね。

岩田

なるほど。

宮本

でも、まぁ、それは、どちらかというと、
冷静に語れる部分での話で、
自分のなかでいちばん大きい理由を言うと、
あのハイラルの壮大な感じというのを
立体視で見たかったんですよ(笑)。

岩田

ああー。
これまで、宮本さんがつくってきたいろいろなもののなかで、
とくに、あのハイラルの風景を。

宮本

うん。
あの臨場感を3Dで味わってみたいっていうのが
じつは、とても大きな理由ですね。

岩田

ああ、それは、なんというか、
とても腑に落ちる理由です(笑)。

宮本

そうですか(笑)。

岩田

というのも、私のなかでは、
『スターフォックス64』のリメイクというのは
すごくわかりやすかったんです。
あのゲームを、新しい3Dの奥行きを持つ、
ニンテンドー3DSというハードに載せたら、
遊びそのものが活き活きとよみがえる、
というのがすぐに想像できたんですよ。
でも、『オカリナ』はどうしてだろう、って
気になっていたので。

宮本

ああ、確かに、『スターフォックス64』は
いま言われたようなことが大きいですね。
あのゲームは、奥行きというか、距離感が、
わかればわかるほど、遊びやすいんです。
クリアしやすくなるということではなくて、
浮かんでいるものを撃つときとか、くぐるときとか、
アイテムをとるときに、すごく気持ちがよくなる。

岩田

はい、はい。
輪くぐりとか、あきらかにそうですよね。

宮本

もう、物理的な恩恵、みたいなものがありますから。

岩田

それが気持ちよさにつながる、というのは
確かにあります。
一方の『オカリナ』のほうは、
おっしゃったように、臨場感が。

宮本

そうですね、あの臨場感は、うれしいですね。
それから、つくってみての手応えで言うと、
ニンテンドー3DSの『オカリナ』は
アイテムの持ち替えがすごく気持ちよくできるんです。

岩田

ほう。

宮本

ぼくはよく、現場の人たちに、
「『ゼルダ』シリーズの歴史は
 インターフェイスの歴史なんだ」
というようなことを言ってるんですけど。

岩田

はい。

宮本

つまり、たくさんのアイテムを使った操作を
いかにシンプルに、ストレスなく表現できるかというのが、
シリーズの大きなテーマのひとつなんです。

岩田

ちょっとのことを覚えただけで、
いつのまにか、たくさんのことが
当たり前にできるようになっている、というのが
『ゼルダ』で遊ぶときの醍醐味なんですよね。

宮本

そうなんです。
で、NINTENDO64の『オカリナ』は
コントローラにあるCボタンの
3つのボタンにひとつずつアイテムを割り当てる、
ということをしましたけれども。

岩田

はいはい。

宮本

ニンテンドー3DSの『オカリナ』では
ABボタンやXYボタンも使いながら
タッチスクリーンのなかにスペシャルボタンも置いて
アイテムを即座に持ち替えるっていう
とっても快適な仕上がりになっているんです。
なかなか、口で言っても伝わらないんですが・・・。

岩田

(笑)

宮本

マップやメニューの切替も含めて、
かなり快適になっています。
それは、つくっていて手応えがありますね。

岩田

つまり、もともとは、
ハイラルを3Dで見てみたいっていう気持ちと、
『オカリナ』のクオリティーを追求したいっていう
動機からはじまったリメイクだけれども、
実際につくってみたところ、それらに加えて
遊びやすさが大きく向上しているということですね。

宮本

そういう感じです。