２００４年のＥ３で、
『スティールダイバー』の原型になったソフトを
ニンテンドーDSのデモ用ソフトとして
お披露目したとき、じつはひそかに人気があって、
「面白かった」って言ってくださった人が
けっこういらっしゃったという意味で、
その時点で手応えはあったんですよね。

そうなんですよ。
ですから、具体的には、あれがはじまりですね。

ただ、あの潜水艦のゲームは
２００４年のＥ３で見せるために急に出てきた話ではなくて、
宮本さんにとっては、ゲームづくりの黎明期の時代から
やってみたかったこと。

うん、そうですね。

長い間、あたためていたもののひとつだったんですか？

うーん、あたたまってはいなかったですけど（笑）。
ずーっと、こう、引っかかっていたもの。

ああ（笑）。

あの、『鉄騎』^（※11）っていうゲームが出たでしょ？
専用のものすごいコントローラがセットで
ほんとうに巨大なロボットを動かすような。

はいはい。

あれが出たとき、悔しかったんですよ。

ああー。

何か、大きなものを、シミュレーターとして動かす。
やりたかったんですけど、先を越された、という感じで。

宮本さんのなかにそこまではっきりした動機がありながらも、
これまで、なぜ、かたちにならなかったんでしょう？

うーん、いくつか難関があるんですけど、
たとえば、大きな潜水艦を動かしたいなと思ったときに、
インターフェイスがないんですよ。
アクションゲーム的にコントロールするならいいんですけど、
フライトシミュレーションゲームのように操作するとなると、
やっぱり、たくさんの計器を見ながら、
それぞれのものを調整する、というふうにやりたい。

あーー。

十字ボタンとＡＢボタンだけで
カーソルを動かして・・・というふうにやっていくと、
ちょっと臨場感に欠けるんですよ。

シミュレーターとしては。

そうなんです。
あとは、ディテールになりますけど、
そういう大きなものを動かすとき、
運転席に欠かせない要素として
「スロットル」というものがあるんですね。
この「スロットル」がね、ボタン操作だけでは
どうにも代用がきかないんです。
というのは、スロットルって、ふつう、
ある場所にこう動かしたら・・・。

ああ、そこにとどまっている。

そうなんです。
ところが、コントローラのボタンというのは、
ボタンを押している間は効果があるけど、
はなしたらもとに戻る、というのがふつうなんです。

なるほど（笑）。

スロットルは、そこに止まっていてほしいんです。
で、いったん入れたスロットルを忘れてしまって、
「うわぁ、スロットル戻すの忘れてた！」
というのが、スロットルなのでね。

（笑）

そして、ニンテンドーDSに
タッチスクリーンがつきましたよね。
すると、そこにたくさん計器を置けるわけですよ。

スロットルも置けますね。

そう、スロットルも、
タッチスクリーンのなかに置いておけば、
タッチして上げ下げできる。
たくさんの計器や装置を並べておいて
サウンドミキサーのように
操作することができるんですよ。

それで、ニンテンドーDSの登場とともに、
潜水艦のゲームができたんですね。

そうですね。
潜水艦に限らず、ロボットやいろんな専用操作の
インターフェイスにつかえますよ。

でも、どうしてそれは、ニンテンドーDSのソフトとして
日の目を見なかったんでしょう？
Ｅ３でお披露目して、ある程度の手応えもあったのに。

うーん、なんでしょうね、
ぼくがほかのソフトで手一杯になってしまった
というのはあると思うんですけど・・・。

でも、それをいったら、
宮本さんはずっと忙しいわけで（笑）。
違う言い方をすると、なぜ、ニンテンドー3DSが出る
このタイミングで日の目を見ることになったんでしょう？

あの、いったん、プロジェクトが止まって、
ニンテンドーDSの発売から２年ぐらい経ったとき、
あるチームの手が空いたので、
DS用のソフトとして開発を再開したんですよ。
そして、それをつくっている最中に、
ちょうど、ニンテンドー3DSの仕様がかたまったんです。
で、つくりながら、
「あ、これは絶対3DSのほうがいい」って思ったんです。
というのは、基本的に横スクロールで、
潜水艦が、水槽のような海底を進んでいくゲームなんです。
これは、ワイド画面で奥行きが出たらすごくきれいやろうなと。

ああ、それはそうですね。

とくに、もともと地味なゲームですから（笑）、
この地味なゲームをどうやってみんなに
伝えていけばいいかなと思ってたところに、
「あ、３Ｄになったら、すごく華が出るな」と。

うん、うん。

で、まず、ニンテンドー3DS用のソフトとして
どんなふうに見えるか試してみよう、っていうので、
つくりかけていたゲームを、部分的に、
グラフィックだけを3DS用に仕上げて、
入れ替えてみたんですね。

はい。私も覚えてますけど、
一気に本格的になりましたよね。

そうなんです。
やっぱり、浮き上がって見える、
凹んでる、奥行きがある、っていうので、
品質というか、魅力がぐっと増したんですね。
じゃあこれは、本格的に仕上げよう
ということになったんです。