岩田
グラフィックのほかに
N64版と大きく変わったのはどんなところですか?
天野
いちばん大きいところでは
モードがふたつになったことです。
そのひとつ、「ニンテンドウ64モード」は、
ファンの方々に向けて
N64版の遊びをそのまま再現して、
さらに、グラフィックがよくなり
3Dも体験できるモードになりました。
岩田
それはつまり、
14年前に出た『スターフォックス64』が、
ニンテンドー3DSの最新技術を使って
より高密度に再現されたということなんですね。
天野
はい、そうです。
で、先ほども言いましたけど、N64版は
人によっては「難しい」と感じる方もいると思うんです。
そこで今回は、携帯ゲーム機ということもありますし、
もっと手軽に遊べるようにしたいということで
「ニンテンドー3DSモード」をつくりました。
岩田
それは、難易度を下げたんですか?
天野
最初は難易度を単純に下げたものを用意しました。
ところが、そこから続きの話があって・・・
ディランさん、あれは完成する1カ月くらい前でしたっけ?
ディラン
そうそう、1カ月くらい前です。
天野
「これでそろそろ完成かな?」と思ってるところに、
宮本さんから「ジャイロを入れへんの?」と。
岩田
ああ・・・また出たんですね(笑)。
天野
出たんです(笑)。
岩田
伝家の宝刀、ちゃぶ台返しが(笑)。
天野
あ、いや、でも、それは・・・、
つくりはじめた頃から
宮本さんから言われていたことではあったんです。
ディラン
そうでしたね。
宮本
・・・ああ、よかった。
岩田
(笑)
天野
ただ、僕らが3DSで
ソフトをつくるのは初めてのことでしたし、
N64版をちゃんと再現して、
グラフィックをよくするだけで手一杯だったんです。
で、そろそろ完成が見えた頃になっても、
宮本さんから、ジャイロについては
何も言われませんでしたので、
「あれ? 入れなくて大丈夫なのかな?」と・・・。
ディラン
うん。でも後半になると
さすがに心配になってきたね(笑)。
天野
そうそう(笑)。
それで完成する1カ月くらい前になって、
宮本さんから改めて指摘されたんです。
N64版はWiiのバーチャルコンソール(※19)で遊べるわけだし、
せっかく3DSで出すんだから、
新しい魅力が必要でしょうと。
岩田
それがジャイロだったんですね。
天野
はい。そこで急きょ、キュー・ゲームスさんの
プログラマーのふたりとディランさんに
情報開発本部の部屋に来てもらって、
2日間カンヅメ状態で対応してもらったんです。
ディラン
そうでしたね。
でも、あれをやって、よかったですね。
天野
ジャイロに対して
手ごたえのあるものにできましたからね。
岩田
はじめてから2日間で、
手ごたえがあるところまでいったんですか?
天野
そうなんです。
岩田
さすが、仕事が早いですね。
天野
だからすごく助かりました。
キュー・ゲームスさんは
外国のスタッフの方も多いのですが、
みんな『スターフォックス』が好きで、
全員がよいゲームにしようとする気持ちが強かったので
かなりいろんな場面で助かりました。
岩田
ただ、ジャイロを使って遊ぶのは、
世の中の人が誤解しそうなところもあると思うんです。
とくにボタン操作に慣れている人たちにとっては、
「3DSを傾けるだけで遊べますよ」と聞かされても、
「それってどうなの?」という気持ちになると思うんですね。
天野
そうですね。
岩田
その点について
天野さんは最初、どう思いましたか?
天野
これは、今回つくりはじめるときに、
宮本さんとじっくり話したことでもあったんですけど、
そもそも3Dシューティングを操作しようというとき、
根本的な課題があるんです。
たとえばN64では、スティックを上に倒すと
アーウィンは下降しますけど、
人によっては、スティックを上に倒すのだから、
上昇するほうが正しいと考える人もいて。
岩田
はいはい。
それは宮本さんが
ずっと抱えている、長年の課題なんですよね。
宮本
そうです。僕は『スターフォックス64』で遊ぶとき、
N64のスティックは操縦かんだと思ってるので、
上に倒すと、アーウィンは下降するはずなんです。
岩田
ところが、それに共感しない人もいるんですよね。
宮本
そうなんです。
「上に倒すから上昇するのが当然だ」
と思うような人もいて・・・
だから、世界はこのふたつの派閥に分かれるんです。
岩田
世界統一ができないんですよね。
宮本
そうなんです。
それがすごく悩ましいところで・・・。
僕としては、操縦かんを
手前に引いたつもりになっているのに、
飛行機が下降するのはすごく気持ちが悪いんです。
天野
ところが今回は3DSになって、
スライドパッドで操作するようになりましたので。
ディラン
これがまた問題で・・・。
天野
N64のときは、スティックを上に倒すと
下降すると思っていた人も、
3DSでは、スライドパッドになることで、
上にスライドさせると、アーウィンも上昇すると考えて
操作する人もいるんです。
岩田
さらにややこしくなったんですね。
天野
そうなんです。
人によって考え方がマチマチですので、
「やっぱりこれは迷う」という話になったんです。
岩田
なぜそのように個人差が出てくるんでしょうか。
ディラン
たぶん、なんですけど、
“画面のどこを見ているか”で
決まるんじゃないかと思うんです。
カーソルを見ているか、自機を見ているかで。
岩田
ああ、なるほど。
カーソルを見ている人は、
スライドパッドを上にスライドさせると、上昇し、
アーウィンを見ている人は、下降すると思うんですね。
宮本
そうなんですよね。
僕はいつも自機を見ているんです。
岩田
そう言われると、すごく納得いきます。
ようやく長年の疑問が解けました(笑)。
天野
ただ、そんな感じで人によって違うので、
設定を変更できるようにすることで、
自分の好みの操作方法を選べるようにしようと。
宮本
そこでジャイロの話になるんです。
3DS本体を上に傾けたら上昇するし、
下に傾けたら下降するので、万人に共通なんですよ。
岩田
カーソルを見ているか、
自機を見ているかに関係なく、誰もが共通に、
しかも直感的に操作できるようにしたんですね。
ディラン
だから、触っているとすごく気持ちがいいんです。
高野
そう、すごく気持ちよくなりましたね。
岩田
そのように、気持ちよさが出るというのは
どうしてなんでしょうか?
直感にしたがって、ダイレクトに動くからですか?
高野
たとえば『マリオ』もそうなんですけど、
ゲームに集中してくると、
コントローラをジャンプしたい方向に
思わず振ってしまうことがありますよね。
岩田
はいはい。
高野
だから、自分の動きが
3DSにそのまま伝わるような感じで・・・。
岩田
それが操作にちゃんと反映されるんですね。
高野
はい。だから気持ちがいいんだと思います。
宮本
低いゲートをくぐるときはとくにね。