6. 3Dを活かした『マリオカート』
岩田
ジャイロ操作は別として、
通常の操作で遊ぶときのことを考えると、
『マリオカート7』は3Dの恩恵をもっとも自然に受けて、
もっとも違和感なく受け入れられるソフトのように感じています。
『スーパーマリオ 3Dランド』(※22)の制作スタッフも、
『マリオカート7』を参考にしたと言っていましたし。
今回の『マリオカート7』が3Dとの相性がいい理由を
みなさんはどうとらえていますか?
矢吹
やっぱり、視線が安定しているからですね。
周囲の景色がふだんの世界と同じように流れていきますから、
自然さを感じられると思います。
それと、飛び出しすぎないようにとか、
視差がつきすぎないようにとか、
ひとつひとつ調整していったのがよかったと思います。
白岩
矢吹さんがすごく調整を頑張ってくれたので、
僕自身も3Dにしたときの違和感がなかったんですね。
あと、お客さんがカートのちょっと先を見ているので、
視点がブレないのではないでしょうか。
岩田
そうですね。お客さんの見る場所を
あらかじめ想定しやすいというのはありますよね。
専門外かもしれませんが、永田さんはどうですか?
永田
ゲームを遊ぶときに、2種類の人がいると思うんです。
自分はキャラクターを操作しているっていう人と、
自分がキャラクターになっている人。
僕はキャラクターになって遊んでいる人なので、
こうらが当たったりすると、
「いてっ!」って言っちゃったりするんです(笑)。
岩田
脳内では自分がカートに乗っているわけですね。
永田
はい、乗っているんです。
とくに僕はそうやって遊んでいるから、
自然に遊べているんじゃないかなと思います。
岩田
最後に、紺野さんはどうでしょう?
紺野
いちばんはじめに、3DSで立体視の実験をしたゲームは、
『マリオカートWii』だったんです。
岩田
ああ、そうでしたね。
『マリオカートWii』を改造して、
3D液晶画面を接続して実験しましたよね。
紺野
僕の中では、その第一印象がとてもよかったんです。
「3Dを活かした『マリオカート』ができそうだ」
という確信がそのときすでにありましたから。
やはり、ずっと同じ方向で走りつづけていくことと、
お客さんがカートを見ながら、ちらちらとその先を見る、
その視点の塩梅(あんばい)がよかったんじゃないかと思います。
岩田
わかりました。
では最後に、これがもうすぐお客さんの手に届くわけですが、
伝えておきたいことをひとことずつ、お願いします。
永田さんからどうぞ。
永田
こんなに楽しい仕事でいいのかな、と(笑)。
正直、プレイしていて、
あまり仕事している感じに思えなかったので。
岩田
やっぱりそうですか(笑)。
わたしもWi-Fi通信機能の社内テストのときに
ちょっと混ぜてもらいましたけれど、
本当に楽しかったですよ。
永田
エキサイトしすぎて、
「静かにしてくれ!」と怒られることもあるくらいで(笑)。
デバッグをやっていると、
ほかのサウンドのスタッフたちも覗き込みにくるんです。
早く遊びたいみたいで。
本当にすごく楽しかったので、
早くみなさんの手に届いて
盛り上がってもらえたらと思っています。
白岩
僕は、やっぱり
「1秒60フレーム」と「8人通信対戦ができる」
というところに注目してほしいですね。
スタッフ一同が頑張って、そこを実現したソフトですから。
ふだんは気づかないかもしれないと思いますし・・・。
岩田
お客さんにとっては当たり前のことですしね。
白岩
はい。頑張って実現させたところを
「プレイしていて気持ちがいい」と感じながら
遊んでもらえたら、というのが僕の理想ですね。
岩田
かっこいいパーツの組み合わせも、
みんなに配ってほしいですよね。
白岩
そうですね。雑誌などで紹介されるときにも、
「対応する通信機能」のところに
3DSのすべての通信方法が書いてあることが、
自分で誇らしく思っています(笑)。
それと、ダウンロードプレイについて言い忘れたのですが、
『マリオカートアドバンス』(※23)のときは
たとえ『マリオカート』のソフトを持っていても、
ダウンロードプレイを受け取る人は、
一度ソフトを抜かなくてはいけなかったんです。
せっかくソフトを持っているのにそれはかわいそうだよね、
ということで、『マリオカートDS』(※24)からは
ソフトを持っている人はそれを入れたまま、
すべてのキャラクターを使ってプレイできるようになりました。
ソフトを持ってない人はヘイホーしか選べませんけど。
それと、3DSではダウンロードプレイで
すべてのコースを遊べるようになりましたので、
ソフトを持っていない人もどんどん誘って遊んでください。
岩田
ソフトを持っている人と持っていない人が、
どのように混ざってもいいようになったわけですね。
究極のコミュニケーションツールになるように。
矢吹さん、どうでしょうか。
矢吹
はい。とにかくまず、手にとっていただきたいです。
さらに、ぜひほかの人を誘って、
みんなで遊んでいただければと思います。
「人と遊ぶこと」を追求しつづけているシリーズですし、
今回もそこに妥協はありません。
ぜひ近くの友だちを、ひとりでも、たくさんでもいいので
誘っていただければうれしいです。
そうすることで、『マリオカート』の魅力が
いちばん引き出されるのではないかなと思います。
岩田
では、最後に紺野さん、お願いします。
紺野
では・・・無事ソフトが完成して、
『マリオカート7』が発売できることになりました。
ありがたいことなのですが、
世界中の方々から励ましのメールや手紙が届くんです。
これまでにも、かなりたくさんの方にいただきました。
お返事することはできないのですが、
わたしたちとしては完成した商品でお返事をしたいと思っています。
今作もみなさんに楽しんでいただけるものができました。
ぜひ、新しい『マリオカート』を楽しんでいただきたいと思います。
岩田
わたしの印象なんですが、
今回の『マリオカート7』はみんなで遊ぶと楽しいし、
そのためにいろいろな要素が詰め込まれているんですが、
「ひとりでも、ひとりじゃない気持ちで遊べる」という
『マリオカート』は今作がはじめてのような気がします。
“ひとりじゃない感覚”がひとりで遊んでいるときにも
実現されているんですよね。
「人と遊ぶとこんなに楽しいんだ」ということを
大事にしたいと思ってつくってきたシリーズが、
新しいひとつの形を実現したんじゃないかな、とも感じています。
それは、ニンテンドー3DSがやりたかったことでもあるし、
紺野さんがずっとやってきたことでもあるし、
矢吹さんが考えていたことが、うまくつながった感じがします。
ぜひ、ひとりで遊んでいるときにも、
“みんなで遊んでいる実感”を持って楽しんでもらいたいですし、
みんなが集まるときにはもちろん盛り上がっていただいて、
『マリオカート7』を存分に満喫してもらえたらうれしいですね。
みなさん、今日は本当にありがとうございました。
一同
ありがとうございました。