社長が訊く
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社長が訊く『The Wonderful 101』

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社長が訊く『The Wonderful 101』

開発スタッフ 篇

目次

5. ワンダ・ディレクター

岩田

でも、これだけ大きな仕様の変更を
途中何度もされているということは、
デバッグもさぞたいへんだったでしょうね。

松下

そうですね。ちょっとネタっぽい
話になるんですけど、ゲームの中に、
神谷さんを模したキャラクターが
登場するんですよ。

稲葉

ワンダ・ディレクター、ですね。

松下

マリオクラブ(※17)でのデバッグのときに、
土壇場で仕様が入ったりして
チェックする項目が大量に増えて、
現場がピリピリしたことがあったんです。
そういう時に、このワンダ・ディレクターが
バグを出すんですよ。

※17
マリオクラブ=マリオクラブ株式会社。任天堂の開発中ソフトのデバッグやテストプレイを行う。

一同

(爆笑)

岩田

ちょっと、でき過ぎですね(笑)。

松下

「ワンダ・ディレクターの攻撃で止まりました」
とかそのまま、マリオクラブからの
報告に書いてあるんです。

岩田

ああ、意図を感じます(笑)。

稲葉

(神谷さんに向かって)
ちょっと反省したほうがいいぞ。

一同

(笑)

岩田

そのワンダ・ディレクターというのは、
100人の中のひとりなんですか?

松下

ちょっとした隠しキャラクターですね。
遊びこむと出てくるんですけど、
ちょっと特殊な行動がとれるので、
デバッグ的にはとくに要注意人物なわけです。
体型も独特だったり、
当たり判定(※18)も微妙にほかのキャラクターと
“ちょっとちがう疑惑”まであって。

※18
当たり判定=自分や敵のキャラクターが攻撃をうけつける範囲のこと。

稲葉

うちの制作スタッフの、神谷に対する愛ですね。

神谷

一応、弁解させていただくと、
僕が「入れよう」と言ったわけじゃないですよ。
隠しキャラクターは複数入れる予定で
いろんな候補が出ていたのですが、
その中での優先順位は低かったんです。
でも、候補からキャラクターを絞りこむ段階で、
「もうつくってあります」と言うんですね。
それで気がついたらもう、
ゲームに入っていたんです。

一同

(笑)

神谷

走りモーションも、おっさんみたいな動きを
オリジナルでつくっていて。
ただでさえメモリーがキュウキュウだっていうのに。

岩田

愛があれば、入りますから(笑)。

松下

ボイスもオリジナルなんです。

岩田

はぁー、ぜいたくですね。

神谷

ムダにぜいたくですね、あれは。
一体誰が喜ぶんでしょう。

神谷4

岩田

でも、そこまでつくりこまれているなら
なおさらぜひ、みなさんにみつけてもらって、
いじってもらいたいですね(笑)。
キャラクターといえば、
“あの作品”とのコラボレーションの
話を訊いていいですか?

稲葉

ああ、“あの作品”のことですね。
そっちのほうは、神谷の愛が詰まってます。

神谷

今回はキャラクターもりだくさんの
ワイワイしたゲームなんで
「お祭り的にちがったゲームも」と思って
実現させていただいたんです。

岩田

これは、まだ具体名を明かせない
隠しキャラクターなんですよね?

松下

そうですね。ゲームを遊びこむと、
ワンダ・ディレクター同様
隠しキャラクターとして登場します。
“あのキャラクター”が『101』の世界に合わせて、
デフォルメされたデザインで登場しますので
ぜひ、楽しみにしていただきたいと思います。

岩田

「あの世界観であのキャラクター」というのは
どんな画になるか楽しみですよね。

神谷

オリジナルと同じように銃で戦うし、
トレードマークのアレも
ちゃんとマスクに変わってるんですよ。
専用のユナイト・モーフもあります。

岩田

ユナイト・モーフまでですか?

稲葉

かなり細かく手間をかけてますよね。

神谷

微妙に仕様も変えているんで、
ちょっとトリッキーな
キャラクターになってると思います。

岩田

いわゆる「高い仕様」、ってやつですね。

松下

いちばんこだわってるなあと感じたのは、
ゲームを進めることで
巨大化する技が使えるようになるんですけど、
そこの格闘モーションでは
オリジナル版のゲームと同じように、
銃を使わず、格闘で戦うんです。
そこのモーションも、
きっちりつくりこまれているんですよ。

岩田

どう考えても、隠しキャラとしては
異様に高い仕様ですよね。

神谷

オリジナル版のモーションを
つくった同じスタッフが、担当しているんです。

稲葉

そのスタッフはいつも笑顔で、神谷が際限なく、
どれだけ無茶やワガママを言っても
引き受けてくれる、すごい人間なんですよ。

岩田

ありがたいですね、そういう人は。
安心して無茶が言えるわけで。

神谷

「ゲームのために」というのを理解して
やってくれる人間なんで。
『ジョー』の時はじめて一緒に仕事して、
今回が3回目なんですけども。

稲葉

神谷のワガママに応えられる、
切り離せないスタッフのひとりです。
ただでさえ死ぬほど忙しくて
1ミリの余裕もない時期だったはずなんですが。

稲葉4

岩田

それなのに、そこまで
こだわってつくっていたんですね。

神谷

そういう話をするたびに
「ゲームづくりってチームワークなんだな」って
つくづく思いますね。
ディレクターが考えられることって、
そのまま実現しただけでは、
せいぜい70点くらいだと思うんですよ。

岩田

そうですね。

神谷

開発の過程でスタッフたちと
意見のキャッチボールをしていって、
各スタッフがエネルギーを注いでくれることで、
100点、120点が
目指せるものになると思うんです。

岩田

以前の「社長が訊く」で、三並さんと稲葉さんに
うかがったときの話
ですけれど、
プラチナゲームズさんのスタッフ一人ひとりに
「自分ならこうしたい」という
個性や主張が、まさに渦巻くほどあるんですよね。
当然軸となるアイデアは大事にする一方で、
そこに向けて荒々しいエネルギーが
いろんな角度から放り込まれて、
結果としてそれが調和し、
新たな輝きが生まれてくる感じが
プラチナゲームズさんのカラーなのかなと、感じました。
それは今回の『101』にもありますよね。

岩田3

稲葉

にじみでる“バラエティ感”みたいなものは、
まさにいろんなスタッフの
情熱のかたまりですよね。

岩田

それぞれの個性が化学反応を起こして、
想像を超える何かが起こるから、
ディレクターも、驚かされるんでしょうね?

神谷

そうなんです。それもやっぱり、
この仕事の醍醐味ですし、
そういうことがたくさんあると、
すごくおもしろくなっていきますね。