黒梅 |
自信というと、いつごろでしょうね‥‥。
答えになっているかどうかわかりませんが、
私は将来、Wiiのチャンネルをひとつ、
自分で新しく企画してみたいなと感じているんです。
そういうふうに感じられた瞬間が、
Wiiのチャンネルに自信を持てた瞬間かもしれません。
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岩田 |
いい入れ物ができたからこそ、その中身を作りたくなる。
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黒梅 |
はい、そういう流れだと思います。
Wiiのチャンネルは12個で終わりではなくて、
現時点では48個までは追加ができるようになっていますから、
配信によって新しいチャンネルを増やすことも可能なんです。
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岩田 |
きりがないからいったん「ここまで」という線を引きましたが、
これがあったらうれしいね、っていうチャンネルの企画は
じつはすでにたくさんあるんですよね。
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黒梅 |
はい。その企画会議の延長がずっと続いていて、
あんなこともできる、こんなこともできるというという話を
いまも、いろんな人としているんですよ。
それはやはり、Wiiの「チャンネル」に
自信が持てるからこそ、できることだと思います。
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岩田 |
それでは、ここでみなさんに共通の質問ですが、
いまある中で、いちばん魅力を感じているチャンネルってなんですか?
じゃあ、玉樹さんから。
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玉樹 |
えっと、そうですね、個人的には、
まだ正式名称ではないんですが、
いま「ショッピング」と呼ばれているチャンネルです。
これは、Wiiを介していろんなソフトを
購入できるというチャンネルなんですが、
まずはバーチャルコンソール用のタイトル、
つまりファミコン、スーパーファミコン、
ニンテンドウ64といった任天堂の過去のハードで
遊べたソフトが購入できるようになっています。
ゆくゆくは、Wii専用ソフトの
ダウンロード販売ということも考えているのですが、
ぼくは、このチャンネルを通して、
新しいゲーム作りの道が開けるんじゃないかと感じているんです。
というのは、ぼくが以前岩田さんから聞いて気になっていたことで、
「価格のバラエティー」というキーワードがあるんです。
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岩田 |
ああ、ソフトの価格の。
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玉樹 |
はい。ソフトの価格にバラエティーをつけたいという考えです。
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岩田 |
自分の言ったことですから説明しましょう。
ようするに、ゲームソフトの価格の
ダイナミックレンジを広げたいという意味で言ったんです。
たとえば5年前くらいまでの任天堂のアプローチというのは
携帯機のソフトが4800円、据置機だと6800円というのが
一般的な価格としてだいたい固定されていたんですけど、
それって違うんじゃないかと思ったんですね。
端的にいうと、据置機のソフトが6800円以外にないなら、
据置機で、シンプルな『テトリス』は出せないことになるんです。
ただの『テトリス』にお客さんは6800円も
出してくれないだろうという意味でですけどね。
だったら、『テトリス』に新しいモードを30個くらいつければ
6800円で売ることが許されるのか?
いっそ豪華なムービーをつければいいのか?
そういうことじゃないでしょ、という問題がひとつ。
もうひとつは、単純にソフトによって制作側の規模が違うことと、
プレイ時間や難易度によって値頃感が違うことを、
価格にも反映させるべきではないかということが根拠です。
もちろん、時間が経ったら安くするという考え方もあるわけですが、
何年も経ってからならともかく、すぐに値段が下がってしまうと、
先に買った人が損をしたような気持ちになってしまうので、
何か抵抗も感じています。
そういう意味で、ソフトの価格は、発売するときからソフト毎に
バラエティーがあったほうがいいと私は考えているんですね。
ところがいま世の中にある流通の仕組みを使ってものを売ろうとすると
原価のあるROMやディスクを作って売るというビジネスである限り、
一定より安いものというのは実現できないんです。
安すぎるものを売ってもお店は儲かりませんから仕入れませんし、
作るほうも少なくともメディア代を下回る価格は設定できない。
「すごく面白いけど、一発芸なので1000円です」という商品は、
現在の仕組みでは実現できないんですね。
そこではたくさんの可能性が死んでるわけです。
そのたくさんの死んでる可能性をどうにかできないか?
私が以前から言っていたことは、だいたいそういうことでした。
いまはニンテンドーDSのソフトなどで、
価格のバラエティーということにも実際に取り組んでいますが、
けっこう昔から私はそれを社内で言ってたんですよね。
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