岩田
Wiiモーションプラスを使うことで
リンクは自在に剣を操れるようになり、
しかもその剣を止めることもできて、剣ビームも出せて、
Aボタンで駆け上がることもできるようになりましたけど、
もうひとつ大きなポイントとしては、
アイテムを選ぶというUIについても
これまでとは大きく変わりましたよね。
青沼
そうですね。
さっきも言いましたけど、
『ゼルダ』というのは、瞬時にアイテムを持ち替えながら
遊ばなきゃいけないゲームなんです。
岩田
はい。
青沼
でも、これまでのように
アイテム画面をわざわざ開いて、
弓とかバクダンを選ぼうとすると、
どうしてもゲームの流れがストップしてしまうので、
自分としても納得がいかなかったんです。
ところが、その大きな難題を、藤林ディレクターと
UIの田中さんがスッキリ解決してくれたんです。
岩田
藤林さん、その難題は
どういうキッカケで解決できたんですか?
藤林
Wiiモーションプラスを使うことになりましたので、
アイテム切り替えも、革新的なものにしたいと思いました。
そこで考えたのは、アイテム画面を見なくても、
すぐ切り替えられるようなことができるんじゃないかと。
岩田
画面を見なくてもアイテム選択ですよね。
それはかなり革新的ですね。
藤林
はい。Wiiモーションプラスなら、
そういったこともできるようになるんじゃないかと。
そこで、自分の頭のなかで
仕組みと操作イメージの大枠を考えてから、
田中さんに話を持っていって、無茶振りしたんです。
「ああすると、こうなるでしょ」みたいに、
身振り手振りで説明しながら(笑)。
岩田
そんな風に、ごそっと無茶振りをされた田中さんは、
どんなことから手をつけたんですか?
田中
Wiiリモコンを使うとすると、
アイテムをポインターで選ぶのが一般的ですよね。
でも今回は、そのポインターを使わずに、
アイテム選択ができるようにしようと考えました。
岩田
そこで、Wiiモーションプラスの機能が
活きることになるんですね。
田中
そうです。そこでまず
画面のアイテムをサークル状に配置して、
回転式のスイッチのように
Wiiモーションプラスをひねると、
アイテム選択できるのではないかと
実験してみたんです。
岩田
昔のテレビのチャンネルをひねるように、
アイテムを選択できるようにしようと考えたんですね。
田中
はい。ところが実際にやってみると、
手首というのは120度くらいしか
ひねることができないんです。
そこで、8個くらいのアイテムからひとつを選ぼうとすると、
どうしても誤操作するケースもあったんですね。
なので「手首はないだろう」ということになって、
大きく腕を傾けて選択するようにしてみたんです。
藤林
すると、画面を見なくても、
アイテムがある角度にWiiリモコンプラスを傾ければ、
アイテム選択ができるようになったんです。
遊んでいくうちに、たとえば弓はいちばん上にあって、
バクダンは右にあるということを覚えますので。
田中
たとえば“下に傾けるとパチンコ”とか、
身体で覚えてしまうんです。
岩田
ああ、だから画面を見なくても操作できるんですね。
じつはそのシステムができあがったばかりの頃だと思うんですが、
宮本さんからすごい自慢されたことが印象に残っているんです。
「慣れると、いままでにないスピードと
一体感のなかで選択ができる、不思議なものになった」
と言ってました。
藤林
宮本さんからほめられたのは、
そのときが初めてだったんです(笑)。
青沼
え?「初めて」だったの?(笑)
藤林
それまでそんな経験、なかったですから、
すごくうれしくて。
田中
ですよね。
ふたりでハイタッチしたくらいですから。
岩田
(笑)
田中
それくらいうれしかったんです。
「やっとこれができた!」って。
岩田
まだ商品が完成していない状態で
わたしにもわざわざ言うくらいですから、
宮本さんにもよっぽど手ごたえがあったんでしょうね。
青沼
きっとそうだったんでしょう。
岩田
田中さん、いま振り返ると、何がツボでした?
田中
うーん、これがツボというのは
すごく難しかったりするんですけど、
最後に「これでうまくいったな」と思ったのは、
モニターをとってるときに気づいたんですが、
初めて触る人は、ポインターを使うものだと思って
操作されることが多いんです。
岩田
Wiiリモコンプラスの傾きを使って
操作していることに気づかないんですね。
田中
そうなんです。
Wiiではポインターを使うのが当然、という先入観が
みなさんのなかにあるんです。
でも、ポインターのつもりで画面に向けて操作しても、
アイテムがちゃんと選べてしまうんです。
それがうまくいったときに、
「あ、これはいけるな」と思いました。
岩田
ポインティングしようとする動きと、
Wiiリモコンプラスの傾きが同調するんですね。
で、慣れてくると、
いちいち画面に向けなくてもいいことがわかって
より快適になるわけですね。
青沼
そうなんです。
あと、もうひとつ重要なポイントがあって、
アイテム選択画面には指のアイコンが表示されるんですけど、
それにヒモが付いてるんです。
藤林
そう。あれは、発明でした。
手前みそになりますけど(笑)。
青沼
うん。アイコンにヒモが付いてるので、
Wiiリモコンプラスを大きく動かしても、
円運動をするだけで、それ以上は動かないんです。
藤林
つまり、Wiiリモコンプラスを振り切っても、
指のアイコンが画面の外に出ることはないんです。
岩田
ああ、なるほど。
青沼
僕は最初にそれを見たとき、
「何、このヒモ、かっこ悪!」と思ってしまって(笑)。
でも、実際に触ってみると、すごく快適なんです。
なので、最初にそのヒモの画面写真を見て、
違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、
実際に触って、触り心地のよさを確認してほしいですね。
岩田
そうやって快適に選べるようになったアイテムですが、
シリーズでおなじみのものもあれば、
新しいアイテムも使えるようになりましたよね。
藤林
たとえば、おなじみのパチンコや弓ですが、
これまでは装備したとき、
照準を画面上に表示させるのにWiiリモコンを
画面にキチンと向けないといけなかったのですが
今回はそんなことをする必要がないんです。
青沼
そうですね。ポインターを使うのではなく、
弓を持つように、Wiiリモコンプラスを持って、
照準で狙いを定めるので、的がぷるぷるしないんです。
だから、遠くにあるものを正確に狙うときは、
すごく快適に遊べるようになりました。
田中
岩田
バクダンに回転をかけて投げられるんですか?
田中
はい。
青沼
でも、UIに落とし込むのはけっこう大変でしたよね。
矢印がキューッと曲がっていくわけですから。
田中
そうでしたね。
Wiiリモコンをねじった方向に
バクダンもカーブして転がるようになっているので、
その方向を地面に矢印で表示できるようにしました。
青沼
従来のシリーズだと、バクダンはお店で買ったり、
地面に生えているバクダン花を使っていましたよね。
でも今回は、バクダン花から採って、
袋のなかにしまうことができるんです。
岩田
バクダン採集ができるんですか?
青沼
そうなんです(笑)。
最初は「ええーっ、こんなのやっていいの?」
とは思ったんですけど、
実際にやってみるとすごく自然なんです。
僕は長年『ゼルダ』にかかわってきましたけど、
そこまで思いが至らなかったのが、これまた悔しくて。
岩田
(笑)
藤林
ただ、しまうときは火花を散らしながら
チリチリいってるんですけどね(笑)。
岩田
袋のなかで爆発しないんですか?(笑)
小林
そこは大丈夫です。
袋に入れると火は消えちゃいますから。
一同
(笑)