岩田
今回、2人用の同時プレイを実現したことも
大きなチャレンジのひとつでしたよね。
田邊
はい。
岩田
どうして2人用を入れようと思ったのですか?
田邊
いつも新しい企画をはじめるときは、
これまでのものとは違う新しいものであるとか、
独創的なシステムを入れることを、まず考えるんです。
これは僕が情報開発本部にいた時代に、
宮本さんから徹底的にたたき込まれたことなんですけど。
岩田
わたしが『カービィ』をつくっていたときも、
宮本さんからいちばん教わったのは、そこの部分です。
田邊
そうなんですね(笑)。
『ドンキーコング リターンズ』をはじめるときも、
新しい部分をどうしようかという話を
田端さんと2人でしていたんです。
で、その前に
『ジャングルビート』(※10)が出たということもあって、
あのソフトとの大きな差別化も必要だと。
そこで「最低限、これだけはやりたい」ということで
考えたのが2人同時プレイだったんです。
もともと『ドンキーコング』シリーズは2人で遊べるんですけど、
1人ずつしか遊べなかったので。
岩田
交代で遊ぶようになってましたからね。
※10
『ジャングルビート』=『ドンキーコング ジャングルビート』。2004年12月にゲームキューブ用ソフトとして発売された、タルの形をした専用コントローラ「タルコンガ」対応の横スクロールアクションゲーム。その後、2008年11月にWii版も発売された。
田邊
はい。ドンキーコングとディディーコングがタッチして、
1人ずつ交互に遊ぶようになっていたんです。
そこで2人同時プレイを実現しようと思ったのですが、
宮本さんは「1人で遊んでも、2人で遊んでも
面白いものをつくるのはすごく大変だから、
まず1人用をつくることに集中しなさい」と言われたんです。
でも、レトロスタジオに対しては
「これは2人用をやるから、そのつもりで」と、
けっこう早い段階に伝えたと思います。
岩田
レトロスタジオのみなさんは宮本さんが
「1人プレイに集中したほうがいい」と
コメントしていたことは、知っていたんですか?
田邊
いちおう伝えましたよね?
カイナン
はい。
岩田
それでも2人用を実現しようという田邊さんの話に、
みなさんは不安なくついていけましたか?
カイナン・
マイク・トム
(揃ってうなずく)
岩田
お、素晴らしいチームですね(笑)。
カイナン
ただ、正直な話をしますと、
最初に指示をいただいたのは宮本さんからだったんです。
「1人用でまずつくりなさい」と。
そこで、わたしたちもそれを第一優先でつくっていたんですけど、
ある日突然、田邊さんから「マルチプレイに」と言われまして、
2人の意見にはさまれて、少々悩んだのは事実です(笑)。
岩田
やっぱりそうですよね(笑)。
カイナン
ただ、実現するのは簡単なことではなかったんですが、
最終的に2人プレイを入れたのは正しかったと思います。
岩田
2人プレイを実現しようとすると、
どうしても1人用と2人用の難易度調整で苦労したりしますよね。
今回は、それをどうやって解決したんですか?
田端
とくに難易度を大きく変えようとは思っていなかったんです。
ただ、2人で遊んだときのほうが
バルーンと呼ばれるライフをどんどん消費しますので、
その分ライフを増やしやすくしてあげたいとか、
そんな話はしていましたけども、1人用だから、
2人用だからというふうには変えませんでした。
岩田
それで、しっかりとバランス良く遊べるようになりましたか?
田邊
ひとつ、
『New スーパーマリオブラザーズ Wii』の複数プレイと違うのは、
プレイヤー同士の当たり判定をとってないんです。
なので、同じくらいのレベルのプレイヤーといっしょに遊ぶと、
2人揃って、ものすごいスピードで先に進めることができますし、
『マリオ』とは違うスピード感や感触を
楽しめるようになったと思います。
それに、ドンキーコングの上にディディーが乗っかるようなシステムを
レトロスタジオさんがつくってくれましたので、
あまりうまくない人でもディディーコングを選ぶと・・・。
岩田
連れて行ってもらうことができるんですね。
田邊
はい。ですから、当たり判定をつけなかったことが、
結果的に1人用、2人用の難易度を考えなくても大丈夫になった
ひとつの要素だと思いますね。
岩田
ところで『スーパードンキーコング』が出てから16年ですよね。
田邊
はい。1994年発売です。
岩田
たぶん『スーパードンキーコング』を当時遊んだ人のなかには、
お父さんになっている人もいっぱいいるはずなんです。
田邊
僕もそうです(笑)。
岩田
だからお父さんとお子さんと2人で遊んでいただくというのも、
ひとつの遊び方かなと思いますね。
もちろん友だち同士でもいいですし、1人で遊んでもいいんですけど。
田邊
うちにいるのは娘たちなので、
『メトロイドプライム』のときはちょっと難しかったのですが、
今度はいっしょに遊べると思います(笑)。
岩田
(笑)。
レトロスタジオのみなさんのなかにも、
「家族といっしょに遊びたい」と思っている人が、
きっといるんじゃないでしょうか?
マイク
わたしには14歳の息子と17歳の娘がいますから
今回、2人ともすごく心待ちにして、
「早く遊びたい」と言っています。
カイナン
わたしには4歳の息子がいるのですが、
開発の終盤はとても忙しくて、遅くまで仕事をしていましたので、
いっしょに過ごす時間があまりなかったんです。
岩田
どんなに忙しくても、
家族といっしょに過ごす時間は大事ですよね。
カイナン
もちろんです。
長かった開発もようやく終わり、
わたしたちがつくった『ドンキーコング リターンズ』を
2人で遊ぶのをとても楽しみにしているのですが、
息子は4歳と、まだ小さいですから、
難しいところはドンキーのわたしが、ディディーの息子を背負って、
いっしょに遊ぶことになるでしょうね(笑)。