5. 『テニス』より『ピンポン』

岩田

ところで、「テニス」じゃなく「ピンポン」を、
どうして『リゾート』に入れることにしたんですか?

山下

前作と同じ種目は
できるだけ避けたいと思っていたんです。

岩田

とくに「テニス」は、
たくさんのお客さんに強烈な印象を残していますし、
余計そうかもしれませんね。

山下

はい。で、前作は前作で
末永く遊んでいただきたいと思っていますので、
やっぱり違う種目を入れたほうがいいのではないかと。
それに、個人的にはカットとドライブを
もっとキツイ感じで表現したかったんです。

岩田

すると「ピンポン」のほうが
今回は向いていると思ったんですね。

山下

そうじゃないかなあと思ったんですが、
どうなんでしょう・・・。
佐藤さん、どうですか?

佐藤

やっぱりWiiモーションプラスの
レスポンスがすごくいいので、
とても「ピンポン」という競技に向いてるんです。
「テニス」はラリーのテンポが比較的遅いので、
レスポンスが遅くても
対応できる部分があったんですね。

堂田

「テニス」はパコーン、パコーンと
比較的ゆったりしたラリーですけど、
「ピンポン」の場合、カッカッカッカッと
すごい勢いでラリーしますよね。

岩田

そのカッカッカッというのが表現できると。
やっぱり、つくった人が言うと説得力あるなあ(笑)。

佐藤

あと、カットとかドライブの操作なんですけど、
これは『Wiiスポーツ』の「テニス」でも
できるにはできていたんですね。

岩田

できましたね。というか、
『Wiiスポーツ』以前のテニスゲームだと、
基本的にボタン操作でやっていたことを、
スイングの軌道だけで、ドライブの打ち分けや
ロブが打てるようになりましたからね。

佐藤

そうですね。
ただ、そのような打ち分けが
ちょっと難しいと感じた人もいたと思うんです。
でも今回は、→ラケットをちょっとひねるだけで、
カットやドライブがかかっている
ことが
すぐにわかるんですね。
だから、初心者の人はより遊びやすく、
上級者の人には自分のテクニックが
もっと出せるようになったと思います。

嶋村

それに、もともと「ピンポン」は
「テニス」よりもっと馴染みのあるスポーツじゃないかなと。

宮本

温泉に行くと、必ずピンポンしますし。

一同

(笑)

嶋村

だから、どうやってボールに回転をかけたらいいのか、
実際にやって、わかってる人も多いと思いますし、
その意味でも、多くの人にとって
イメージがわきやすい種目だと思ったんですね。

山下

実はちょっぴり「テニス」に
未練を感じたこともあったんですけど、
やっぱり「ピンポン」にしてよかったですね。

宮本

「テーブルテニス」だしね。

一同

(笑)

岩田

「ピンポン」はプールサイドで遊べるようにして
リゾート感覚を出したという話でしたけど、
そのほかにリゾートっぽい種目というと・・・?

嶋村

たとえば飛行機・・・→「遊覧飛行」がそうですね。

堂田

もともとは「ハンググライダー」だったんですよ。
でも、僕はそれにけっこう反対して・・・。

岩田

どうして反対したんですか?
「ハンググライダー」にはリゾート感がありますよね。

堂田

「ハンググライダー」よりも、飛行機の新しい操作のほうが
Wiiモーションプラスとの一体感が生かせるんじゃないかと。

岩田

新しい操作というのは?

堂田

プラモデルの飛行機とかを片手で持ったまま、
「ブーン」とか言いながら
遊んだ経験は誰にもありますよね。

宮本

子どもの頃は、みんなやってましたよね。

岩田

はいはい、やりましたねぇ(笑)。

堂田

そこで、飛行機の代わりにWiiリモコンを持って、
同じような遊びができないかと思ったんです。

嶋村

「飛行機を操縦するのはどうだろう」という話になったとき、
実は操縦かんのように操作することも考えたんですね。
Wiiモーションプラスを操縦かんに見立てて、
ジョイスティックのように操作しようと。
でも、そうするとけっこう難しい操作になってしまうんです。

堂田

そもそも3D空間を自由に飛べるとはいっても、
そこを操縦するとなると
難しく感じる人が少なくないと思うんですね。
でも、自分が手に持ってる飛行機と
画面のなかの飛行機がシンクロするようにして
自分が動かしていることをより強く感じられたら、
3D空間のなかを動くというのも
直感的にできて楽しいんじゃないかと思ったんです。

岩田

ボタン操作も必要ないんですね。

堂田

はい。Wiiリモコンを
人差し指と親指で挟んで遊びますので。

嶋村

しかも「遊覧飛行」をすれば、
ウーフー島にもすごく詳しくなれるんです。

宮本

そこで、空を飛びながら
「あの土地は何のゲームに使おうか」とか
空中視察にも使えますし。

一同

(笑)

山下

そもそも「遊覧飛行」は
宮本さんにとっては20年来の課題だったんですよね。

岩田

20年来の課題? 
ちょっと詳しく説明してください。

宮本

そうやったっけ?(笑)

嶋村

(笑)。僕、覚えてますよ、
「ウエイクボード」は10年で、
「遊覧飛行」は20年来の課題だと。

ウエイクボード

宮本

そうですね・・・。
自由に空を飛ぶことに関しては、
『パイロットウイングス』(※8)の時代から
なんとかしたいとずっと考えてきたことなんですね。

岩田

確か『パイロットウイングス』は1990年。

宮本

そう、1990年ですね。

岩田

あれからほぼ20年ですね。

宮本

で、10年以上前に
実は「水上スキー」のゲームをつくってたんですよ。
水上スキーはボートで引っ張ってもらう競技ですので、
ボートを描かなあかん、波も描かなあかんと、
当時のゲーム機で表現するにはけっこうきつかったんです。
だから水上スキーはあきらめて、
マリンバイクのゲームをつくることにして
それでできたのが『ウェーブレース64』(※9)なんですね。

※8

『パイロットウイングス』=スーパーファミコンソフト。1990年12月発売のスカイスポーツシミュレーションゲーム。

※9

『ウェーブレース64』=NINTENDO64ソフト。1996年9月発売のレースゲーム。

岩田

でも、10年以上たっても
水上スキーは諦めきれなかったんですね。

宮本

やっぱりおもしろそうなんですよ。
で、最近は「水上スキー」というより
「ウェイクボード」が流行ってるみたいですし。

嶋村

琵琶湖でもボードに乗ってやってる人が多いですしね。

宮本

だから若い子にもウケるんやないかと。

嶋村

リゾート感も楽しめますしね。