岩田
ここまでいろいろなお話を訊いてきましたが、
その他に大変だったり、辛かったことで
何か話しておきたいことはありますか?
齊藤
僕自身はとくにここが辛かったということはなかったんです。
先ほど話に出た、ディスクの容量の問題とか、
シームレスにするといったような壁は常にありましたけど。
岩田
開発というのは常に「壁との戦い」ですよね。
齊藤
そうです。今回はとくに実験的なこともやりましたので、
もとから高いハードルがあって、いろいろ大変な思いもしたんですけど、
すべての問題がぜんぶ解決できましたので、
その意味で、いま、辛い思いをしたことはまったく覚えていないんです。
もちろん、そのように壁を乗り越えられたのは、ここにいる人たちや
何十人もいるスタッフの努力の結果なんですけど、
その壁をクリアしていくことの喜びのほうが強くて、
「さあ次」というように、先に進めていくことができましたし・・・。
岩田
ああ、それはとても健全ですね。
齊藤
はい。ものすごく健全なプロジェクトだったと思います。
ゲーム開発をやっていると、最後の最後で
けっきょく断念する部分があることが多いと思うんです。
「この遊びを入れるのは諦めよう」とか、
「ここのモードは今回諦めて次にまわそう」とか、
そういうことがあると思うんですけど、
僕が知る範囲では、今回はほとんどそれがなくて・・・。
岩田
やり残した感がないんですね。
齊藤
はい。それどころか、むしろ最後の最後には
追加することが増えたくらいですから。
いろんなものが増えて、それを二層のディスクに
入れることができましたので、
「完成した」という気持ちがすごく強かったです。
ですから、辛かったことはほとんど覚えていないです。
細川
あの・・・それは僕も同じです。
長い時間、会議をしても、別にそれが辛く感じたこともなかったですし、
そういう意味ではすごくやりやすいプロジェクトでした。
今回はサムスの心情を表現することがとても大事でしたので、
とくにローカライズするときに、曲がって翻訳されないよう
齊藤さんたちにはアメリカに3回ほど行ってもらったりとか・・・。
齊藤
いえ、4回です(笑)。
細川
あ、すみません、4回でした(笑)。
そういったところで、大変な思いをしたこともあったんですけど、
全体を通じてみると、さほど辛い思いもせずに
いままで以上に仕事を楽しくやらせてもらったという感じがしました。
永澤
そのように僕たちが楽しく仕事ができたのは、
坂本さんはじめ、北裏監督も、早矢仕さんもそうですけど、
みなさんがすごく「ほめ上手」だったからだと思うんです。
人にさんざん苦労させておいて、あとでそっとほめるんです。
すると、それまでの苦労をサッと忘れてしまうんです。
岩田
はい、それは大事な素養なのかもしれないですね。
巨大プロジェクトをゴールに導くためには。
永澤
そう思います。そのときは「大変だ!」と思っても、
最終的には「がんばってよかった・・・」というところに
落ち着くんですよね。
岩田
ふつうは今回のように大作の開発期間がさらに延びたケースだと、
現場のスタッフはけっこう消耗していることが多いんです。
でも、今回みなさんのお話を訊いて、
もちろん精神的にも肉体的にも疲れているはずなんですけど、
まったく消耗した人たちの顔には見えないんですよね。
その意味でも、とても健全なプロジェクトだったんでしょうね。
それでは最後に、ここをアピールしておきたい、という話を
ひとことずつ訊かせていただきましょう。
まずは細川さんから。
細川
はい。プレイヤーがやりたいと思ったことが
簡単にできて、しかも数少ないボタンで操作できますので、
すごく幅広い方々に楽しんでいただけるアクションゲームになったと思います。
しかも没入できるストーリーがあって、
最後まで止め時のないゲームになっていると思いますので、
ぜひ楽しんでいただきたいと思っています。
森澤
デザイン的な面から言いますと、
ゲームスタートからはじめて、最後の最後まで
「ここはちょっとおかしいんじゃない?」
というような違和感がなく、没入できるゲームになったと思っています。
モニタの隅から隅まで見ていただいても
満足いただけるつくりになっていると思いますので、
思う存分、探索を楽しんでほしいです。
永澤
さっき、大塚さんからも話がありましたけど、
本当に気持ちの悪いくらいつながっています。
ですから、サムスと一体となって、
彼女の心情を通しながら、
ストーリーの隅々まで遊び尽くせるゲームになっています。
そこをひとりでも多くの方に楽しんでいただきたいです。
岩田
自分たちのつくった映像と、
ゲームパートのシームレス感みたいなものが、
いままで味わったことのないレベルでつながっている印象に
手ごたえを感じておられるんですね。
永澤
はい。本当に宣伝文句でも何でもなく、
「本当につながってる」という、
「本当にサムスになれる」ということが
実感できるゲームですので、そこを味わっていただきたいですね。
齊藤
僕は物語に登場してくるキャラクターたちの
“生きている感じ”というか、
ただそこにいてセリフをしゃべっているだけではなくて、
それぞれが何かを考えながら、そこにいて、
サムスという女性が現れて、関係ができていくといったところを
味わってほしいと思います。
そのストーリーのなかには、過去の話があったり、
その過去を知っている人物がいたりだとか、
そういう人たちの感情の動きを、
今回はすごく表現できたように思っています。
僕たちTeam NINJAはこれまでいろんなゲームをつくってきましたが、
そこでは成しえなかった領域まで
今回はひっぱり上げることができたように思っていますので、
もちろんゲームはゲームとして面白く遊んでいただいて、
そこからスッと物語に気持ちをつないでいただいたときに、
そこに登場する人たちの感情というものを、
ビシバシと感じてもらいたいです。
荒蒔
いままでのTeam NINJAのシリーズではない、
新しいタイトルだったので、自由な発想で開発できたと思います。
しかも、この長いプロジェクトのなかで、
こだわったところを、存分に入れきることができました。
ですから、実際に触っていただければ、
細かい部分まで、よくできていると感じていただけると思います。
また、それをわざわざ見ようとするのではなく、
プレイをすれば、自然に感じていたただけるようになっていますので、
ぜひ納得の『METROID』の世界を楽しんでほしいと思います。
大塚
本当にWiiリモコンひとつだけでプレイできます。
で、ちょっと失礼な話なんですけど、
50歳のおじさんの坂本さんですら(笑)
快適に操作ができるよう、
開発側のフォローもふんだんに入れていますので、
誰でも触って、違和感なくすぐに操作できて楽しめるというところを
ぜひ楽しんでほしいです。
もうひとつは、Team NINJAと任天堂のみなさんで、
アイテムをいろんなところに必死に隠して
探索の楽しみも堪能できるようにしましたので、
お客さんと楽しく知恵比べができたらうれしいと思っています。
岩田
作り手からお客さんへの挑戦状のようなものなんですね。
大塚
はい。ぜひ100パーセントをめざしてください。
小池
今回は曲もSE(効果音)もすごく独特の鳴らし方や出力で
組み込んでいまして、いまここで説明をすると
若干ネタバレになるので、あえてお話ししませんけど、
そういうことを感じるために、ヘッドホンなどでプレイすると、
本当にビックリしたり、感動することのすべてが入っているので、
どっぷり浸ってほしいと思います。
さらに探索もぜんぶしてほしいです。
いろんな音が聴けますので。
岩田
ビジュアルだけでなく、
音も、あらゆる部分でちゃんとつながっているんですね。
小池
はい。いろんなところにSEがちりばめられていますので、
そこもぜひ、やりこんでいただければと思っています。
岩田
みなさん、本当にお疲れ様でした。
今日は、早い時間にお集まりいただきましたが、
みなさんのお話を訊くことができてとても有意義でした。
このプロジェクトが健全だったこともよくわかりましたし。
小池
本当にそう思います。
開発でちょっとつまずいたときでも、
坂本さんたちがすぐに東京に来てくれたりしましたし、
壁にぶちあたっても、みんなでそれを乗り越えていった感じでした。
このプロジェクトはとても長期にわたりましたけど、
いま振り返ると、毎日がとても楽しかったですし、
ものすごく短かったようにも感じています。
岩田
坂本さんが京都に戻ってしまって、寂しいですか?
小池
ええ、とても寂しいです。
できれば、このプロジェクトを続けたいくらいです(笑)。
岩田
あ、それは困ります(笑)。
一同
(笑)