岩田
では、もうすぐ発売となります
『DEAD OR ALIVE Dimensions』ですが、
今回、『METROID Other M』のステージが
登場するとお聞きしたのですが。
早矢仕
はい。このソフトの前にTeam NINJAと任天堂さんで
『METROID Other M』を開発したのですが、
今作では、ステージをコラボレーションさせていただきました。
リドリーというキャラクターが火を噴いたり、
ステージから落ちたら捕まえられたりするんです。
岩田
「ここで格闘するの?」というくらい
異次元なステージですよね(笑)。
早矢仕
はい、異質なものを用意してみました。
僕らの『DEAD OR ALIVE』は、
こういうものを許す格闘ゲームということで、
ぜひ遊んでいただきたいと思います。
岩田
最後に、今後「早矢仕さんが3DSをこう活かしてつくるぞ」
という新たな思いがありましたら、訊かせてもらえますか?
早矢仕
今回、僕らは3Dを演出として使いましたが、
今度は3Dをゲームデザインに反映させたソフトを
つくりたいと思います。
宮本さんのインタビューを読ませていただくと、
3Dでしかできないゲームデザインをされていますよね。
たとえばジャンプする距離が奥ゆきでわかる、とか。
岩田
『パイロットウイングス リゾート』(※21)を体験したときも、
たとえば輪くぐりが簡単になるなど、
3Dになると遊びやすさがぐっと変わりました。
早矢仕
はい。3D前提でゲームデザインすることの楽しさと言いますか。
着陸が見えないプロジェクトにはなりますが、
これからつくるゲームとしては、
ものすごくチャレンジしがいがあると感じています。
岩田
確かに、いままでのゲームのつくり方ではできなかったものが、
3DSなら、できるかもしれないですから。
これはゲームがポリゴンになったとき以来の革命なので、
いままでとどのように演出や遊びが変わるのか、ワクワクしますね。
早矢仕
そうですね。3DSで新しいゲームがつくられることを
僕自身もお客さんのひとりとして楽しみにしているし、
つくり手としても挑戦したいという気持ちがあります。
岩田
最初に扉を誰かが開けて、
「あのゲームが、ゲームデザインの常識を変えたよね」
と誰かに言ってもらえるのは、ちょっとワクワクしますから。
早矢仕
はい。いろいろな制作者の方のゲームをプレイすることも楽しみです。
でも、いままで非常識だと思っていたことを、
誰かがポンと実現させた瞬間は、すごく悔しいでしょうから、
僕自身がその扉を見つけていきたいなと思います。
岩田
不可能をはじめから不可能と思わず、
やりようによって解くことができれば、
人に驚いてもらう仕事としては最高です。
不可能だと思い込むことが、多分最大の敵なんですよね。
早矢仕
確かにそうですね。
岩田
わたしが以前、ゲーム人口拡大という話をしたとき、
「5歳から95歳まで」という言葉を使ったんです。
そのときは
「95歳はリアリティがなくてありえない」という声も
あったんですが、去年、イギリスの方から
写真を1枚もらいまして、
『Wii Sports Resort』(※22)の
CMに出演してくださった96歳のおばあちゃんが、
普通にゲームを遊んでくれていたんです(笑)。
早矢仕
おおー。
岩田
つまり、一見不可能にさえ思えることも
できるかもしれないと思ってやりつづけた結果、
たどりつくことができたんですが、
一見不可能なことが、アイデアや技術で可能になったとき、
それはあとからイノベーションと呼ばれるんじゃないでしょうか。
いずれ、「早矢仕さん、あれがイノベーションでしたよね」
と言えるアウトプットを出せたら、最高にかっこいいですね。
早矢仕
そう思います。
ただ・・・ちょっとプレッシャーを感じますが(笑)。
わたし自身、ゲーム開発がいい意味で慣れてきて、
着陸のさせ方がわかるようになってきたので、
自分に対しては、つねに「それでいいのか?」と
問わなきゃいけないなと、考えるようにしています。
岩田
常識が増えて、自分の定石や手口が決まってくると、
予定調和になってしまう恐怖があるんですよね。
早矢仕
今回も、着陸させたことで満足しちゃだめだなと思っているんです。
いまの自分の意識を全部疑いつづけて、次のプロジェクトに
進まなきゃいけないなと、自分に言い聞かせているところです。
岩田
近い将来、何かでごいっしょできるかもしれませんし、
僕らのつくるもので早矢仕さんを悔しがらせたり、
逆に早矢仕さんのアウトプットで僕らが悔しがったり、
そんなことができるといいですね。
早矢仕
はい。いい意味で、いろいろな人と競いたいです。
岩田
そう、“健全な嫉妬”はすごくあるべきだと思います。
早矢仕
ゲーム開発のみなさんは、多分みんな持っていらっしゃいますよね。
岩田
全員、人にウケたくてやっているわけですから、
自分の知らない手口をいち早く発見して、
お客さんにウケるものをつくっている人には
「やられた!」と思いますよね(笑)。
早矢仕
そうですね(笑)。
「こんなゲームをつくられちゃったな・・・」って
悔しい思いばかりしています。
岩田
そういう意味では、3DSはまだまだ叩きがいのある、
楽しんでものがつくれるハードですので、
これからもぜひ使ってください(笑)。
早矢仕
はい。ぜひぜひ、みんなに悔しがられるような
ゲームをつくりたいと思います。
岩田
今日はありがとうございました。
早矢仕
ありがとうございました。