社長が訊く
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社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

社長が訊く『ニンテンドー3DS』ソフトメーカークリエーター 篇

第6回:『Project ラブプラス for Nintendo 3DS(仮称)』

目次

4. 自分のパターンA、B、C

岩田

『ラブプラス』はどのように生まれたんですか?

内田

「KONAMIといえば『ときメモ』」と、
広く認知されているにもかかわらず、
「新しい恋愛ゲームをつくれていないよね」
という話が出ていたんです。

岩田

「何かやらないの?」と
お客さんから問いかけられていたわけですか。

内田

そうです。それで当時の上司に
「何か考えられないのか?」と聞かれて、
僕は勢いで「できますよ」と言ってしまいました(笑)。
それで改めて企画を持っていくことになり、
「どうしよ? どうしよ?」と考えまして・・・。

岩田

先に「できますよ」と言ってしまうんですから、
まさに、勢いの人生ですね(笑)。

内田

でも、ひとつ試してみたいことがあったんです。
というのも、『ガールズサイド』を据置機から
DSにリメイクした際の理由は、
『ガールズサイド』が個人的に没頭して遊ぶゲームなので
携帯機に向いていると思ったんです。
とくに女性のお客さまは主婦の方も多いですし。

岩田

リビングは、子どもやご主人の目がある場所ですからね。

内田

それからもうひとつは、
DSのタッチスクリーンが絶対に向いていると思ったんです。
『ガールズサイド』でも、2Dのころからキャラクターに
さわるようにしていたんですが、絵にさわって反応するだけで、
直感的で本当に面白いんですよ。
それに入社当初、「ピクノ」を担当した経験から、
見たものをさわって反応があることの面白さをわかっていたので、
それをぜひ新しいキャラクターでやりたかったんです。

岩田

ああ、やっぱり、全部つながっているんですね。

内田

それから携帯機ならではの恋愛ゲームが
当時まだ世に出ていなかったので、
携帯できるという特性を活かしたものにしたかったんです。
そこで、つねに持ち歩く恋愛ゲームを考えたとき、
「つねにいっしょにいるというのは、“カノジョ”ってことだよな」
という考えが最初にありました。

岩田

はじめから頭のなかには企画ができていたんですね。

内田

はい。それで社内プレゼンすることになったんですが、
女の子のかわいさは絵の解像度じゃなく、しぐさや台詞だ、
ということをわかってもらうためにひと工夫しました。
プレゼン出席者の奥さんの名前をリサーチしておいて、
奥さんの名前で呼びかけたら、「なーに?」と
クルッと振り向くデモ版をつくったんです。
そしたら大爆笑、大喝采で、「かわいいじゃないか、これ!」
という話になりまして、それでやることになりました。

岩田

運命に導かれるように、
すべてが『ラブプラス』につながっていますね。
ちなみに女性のかわいさは、どのように考えていたんですか?

内田

僕は観察して分析することが大好きなんです。
それから映画などの映像作品や文芸が好きで、
広い意味で人間のかわいいしぐさが大好きなんです。
映画を観たり、本を読んだりして、
「いまのやりとり、かわいいなあ」と思ったとき、
そこから引き算をして違うシチュエーションを考えるんです。
「いまは男女だったけど、女の子同士だったら」とか、
「男同士だったら」とか「お年寄りと子どもだったら」とか、
何が自分の琴線に引っかかったのか、
洗い出すのが大好きなんです。

岩田

自分の心を動かしたものの正体を知りたくて、
考えずにはいられないんですね。

内田

はい。それを勝手にやって、ひとりでニヤニヤしています。

岩田

それが、いまこうして役立って、
日本中の人から“お義父さん”と呼ばれるに至るわけですね。

内田

だから、台詞の語尾も本当に大事なんです。
僕のなかで、語尾が下がるか上がるかで意味が変わるんです。
「もう勘弁してくれ」とスタッフに言われますが、
頼まれなくても、一生そういうことを
やりつづけるんだろうなと思います(笑)。

岩田

そうすることで、きっと血がかようんですよね。
自分の心理を分析することも面白いんですか?

内田

あ、好きです。大好きです。
自分のなかに、自分のパターンA、B、Cという3人がいます。

岩田

自分のパターンA、B、C・・・?

内田

はい。乱暴な自分と、ロジックしか言わない自分と、
感傷的な自分みたいなのに分かれて、
討論させることが大好きなんです。
だから本当に、退屈したことがないんですよ。

岩田

はあー、内田さん、むちゃくちゃ面白いです(笑)。