1. 「真っ白に燃えつきて」
岩田
今日はニンテンドー3DSソフト
『マリオ&ルイージRPG4 ドリームアドベンチャー』の
関係者のみなさんに集まっていただきました。
まずはみなさんから、何を担当されたか、
自己紹介をお願いします。
では、前川さんからどうぞ。
前川
アルファドリーム(※1)の前川です。
今作ではプロデュースを担当しました。
おもに全体の進行や大谷さんとのやりとり、
今回は外部の会社さんに協力していただいたこともあり、
マネージメントなどをおこないました。
岩田
前川さんはシリーズの最初から
かかわっておられたんですよね?
前川
1作目(※2)はディレクターを担当しまして、
『2』(※3)からプロデューサー的な役割をしています。
岩田
シリーズとともに歩まれて、もう10年以上ですね。
前川
はい。
岩田
では窪田さん。
窪田
アルファドリームの窪田です。
ディレクションおよびシナリオを担当しました。
2作目から3作連続でディレクターとしてかかわっています。
1作目の時はフィールドの構成やシナリオなどを担当しました。
岩田
じゃあ前川さんと窪田さんは
ずっとコンビでありつづけているんですね。
窪田
はい、長いですね(笑)。
大谷
任天堂側でプロデューサーを務めた大谷です。
シリーズは2作目から参加していて、
前川さんと一緒に全体を見ていました。
佐野
任天堂の佐野です。
アシスタントプロデューサーとして大谷さんの補佐を務めました。
もとはデザイナーなのでグラフィック部分を中心に見たり、
「ゲームの遊びやすさ、面白さが伝わりやすいか?」
という観点から内容を見る役でした。
岩田
はい。では最初に前作のお話をしたいのですが、
『3』(※4)はおかげさまで多くの方に遊んでいただいて、
お客さんがぐっと広がった手ごたえがありました。
3作目はどの部分を評価していただいたと思うか、
みなさんに訊いてもいいですか?
大谷
いきなり『3』からですか(笑)。
『3』のよさは、
僕は「クッパ」だと思っているんですけれども・・・。
岩田
マリオがクッパの体内を冒険したり、
巨大化したクッパでバトルしたりするんですよね?
前川さんは?
前川
はい。クッパと、あとは・・・。
えーと・・・。
伊豆野
・・・横から言っちゃいますが、
わたしは2画面の遊びが評価されたのだと思います。
岩田
はい(笑)。
助け船を出してくれた伊豆野(敏晴)(※5)さん、
自己紹介をお願いします。
伊豆野
はい(笑)。任天堂の伊豆野です。
『トマトアドベンチャー』(※6)ではじめてご一緒した時から
アルファドリームさんとともにつくりつづけています。
僕は3作目からプロデューサーを務めていて、
今回も総合プロデュースを担当しています。
『マリオ&ルイージ』シリーズは、
いったん『2』で売上が伸び悩んでしまったので、
『3』でどうやって盛り返せるかを考えたんですよ。
大谷
そうですね。
『3』はリベンジの気持ちもあり、
どうやってつくるか考えていたところに、
窪田さんから「クッパを使って考えてみたい」
と提案があったんです。でも、最初は・・・。
岩田
『マリオ&ルイージ』なのに「なぜクッパなの?」って?
大谷
はい。クッパでどうやってゲームをつくるのか
不思議だったんですけど、
クッパの遊びを考えはじめると、
いろいろ面白いアイデアが出てきたんです。
伊豆野
クッパを巨大化させようという構想が生まれましたし、
「クッパの体内のミクロな遊び」と、
「巨大クッパ」のスケール感の違いも際立ちました。
岩田
クッパが巨大化したことで普段と違う感じになり、
そのダイナミック感がよかったんですね。
窪田
そうですね。
それに巨大クッパのバトルで
DSを縦持ちにしたのもよかったですよね。
大谷
あれは迫力が出ましたし、いいアイデアでしたね。
「縦持ち」のアイデアは、宮本(茂)さんも
「これ、ええやん」って褒めてくれました(笑)。
岩田
結果として『3』で大きく盛り返したあと、
今度はみんなに期待されながら
『4』をつくることになったと思うんですが、
前作とは違うプレッシャーを感じませんでしたか?
窪田
いやあ、もう・・・
正直『3』がおわった時点で“白紙”状態でした。
岩田
真っ白に燃えつきたんですね(笑)。
窪田
はい(笑)。とはいえ、
次に向けて動きはじめなければならないので、
スタッフにいろんなアイデアを出してもらいました。
そのひとつに夢システムの原型となる企画があって、
大谷さんがすごく食いついてくれたんですよ。
大谷
「クッパをもう一度」と考えたのですが、
ほかのキャラクターに頼り過ぎると
『マリオ&ルイージ』ではなくなってしまうので、
一度『4』ではマリオとルイージだけで
遊べる内容にしたかったんです。
だからアルファドリームさんには
「マリオとルイージだけで考えてください。
ほかのキャラクターは禁止です」ってお願いしました。
岩田
“クッパ禁止”ですか。
それはキツいしばりでしたねぇ。
前川
アイデアが出るまで『3』がおわってから
半年・・・くらいはかかっちゃいましたね。
大谷
でもそこで、おびただしい数のルイージが出てくる
「夢世界」という案が出てきたんです。
岩田
はい。今回は「現実世界」と、
ルイージが眠ったときに出現する「夢世界」の
2つの世界を行き来しながら冒険するんですよね。
「夢世界」には、夢であるのをいいことに大量のルイージたち、
通称「ユメルイージ」がたくさん登場しますけど、
「夢世界」と「大量のユメルイージが登場する」
という案は、最初からひとつだったんですか?
窪田
いえ、じつは別々のアイデアです。
最初に大量のルイージが出てくる案があって、
少し遅れて「夢世界」の案が出てきました。
大谷
先に大量のルイージが出てくる試作をつくったんですが、
ルイージを崩さないでゴールを目指す遊びだったこともあり、
アクション性が強く、これだけを柱にはできなかったんです。
そこで2画面の遊びをもう一度考えて、
「下画面で寝ている現実世界のルイージをいじって、
上画面の夢世界に変化を起こす」という案とあわせて
2つを柱にすることにしたんです。
前川
でも、ルイージの顔を下画面に出す案について、
最初、窪田は猛反対していたんですよ。
窪田
んっ?
前川
猛反対してたよね?
窪田
ええっと、そうでしたっけ?(笑)
岩田
衝撃なんですけど(笑)。
窪田
いやいや(笑)。
まあ、夢の遊びとして本当に広がるか不安があったんです。
でもシリーズ通してルイージは「いじられ役」だし、
寝ているルイージの顔をいじるのは、
シリーズのテイストにも合うなとは思っていました。
岩田
それが「ルイージ30周年」に発売になるとは・・・。
窪田
思いませんでした(笑)。
岩田
「ルイージの年」(※7)宣言を聞いたとき、
どう思いました?
大谷
それが申し訳ないことに
「ルイージって今年30周年なの!?」って・・・(笑)。
ただ、プロデューサーとしてうれしかったですよ。
前川
僕たちもルイージを10年ほど
あずかっていた身として、本当にうれしかったです。
ゲームの中でいつもひどい扱いをしていますけど(笑)。
岩田
ルイージがいろんなゲームでひどい扱いをされてきたから、
「今年だけでもルイージに花を持たせてあげよう」と、
「ルイージの年」を企画したんですよ。
窪田
そうだったんですね。
とはいえ今回も寝ているルイージの顔を
さんざんいじり倒しますけど(笑)。