岩田
こうして『マリオ&ルイージRPG4』
がスタートして、どれくらいで
量産体制に入ったんですか?
窪田
アルファ版という基本部分をつくったところからなので、
試作段階からだと1年半ほどかかってます。
大谷
今回はアルファ版、ベータ版だけでなく、
ガンマ版まで区切って見返しながら
量産をしていきました。
岩田
ガンマ版ですか?
通常のゲームづくりではアルファ版と
ベータ版しかないはずですけど・・・。
大谷
普通はそうなんですけど(笑)。
じつは今回、背景は3Dで制作したんですが、
キャラクターは全部2Dのドット絵なんです。
これをニンテンドー3DSで
立体視できるようにするのが大変で・・・。
これが前作からだいぶ、
制作に時間がかかってしまったことの
原因のひとつなんです。
岩田
えっ!?
ドット絵職人さんが、
立体に見えるようにドット絵を
一つひとつ描いた、ということですか?
大谷
はい、そうです(笑)。
立体的に見えるように色や描きかたを工夫しました。
途方もない作業量だったんですけど、
おかげで仕上がりのなめらかさは、
アルファドリームさんならではのものになりました。
窪田
ただ、大きいキャラクターになればなるほど
2Dの板っぽさが浮き彫りになってしまうので、
何度もリテイクを受けました。
佐野
やっぱりボス戦は迫力ある演出をしなければならないので、
納得いくまで何度もリテイクをお願いしたんです。
岩田
なんか・・・ちょっと、不思議なつくりかたですよね(笑)。
でも、その方法を選んだのはどうしてですか?
前川
正直申し上げますと、
アルファドリームの育ちが2Dのドット絵ということもあり、
社内に3Dの人的なリソースが不足していたためです。
ただ、今回ルイージが夢世界で巨大化して戦うんですけど、
巨大化バトルだけは2Dだと限界があったので、
別会社さんにお願いするかたちになりました。
佐野
アルファドリームさんの細やかなアニメーションって、
見ているだけで気持ちがほっこりするものが多いんですけど、
キャラクターを2Dで描いたおかげで、
3DSでもそのよさがきっちりあらわれています。
岩田
もともとは会社の都合だったとしても、
制約というより逆に活きているところが面白いですね。
それにしても、ドット絵を描く人は
世の中にたくさんいらっしゃいますが、
立体視のドット絵を描く人って、
あまり聞いたことがないです(笑)。
大谷
わたしもはじめてです(笑)。
岩田
キャラクターが移動する方向のパターンも、
全部ドット絵を描くわけですよね?
窪田
はい、全部描きます。
DSではだいたい8方向でしたけど、
3DSでは16方向のドット絵を全部描きます。
しかもルイージは帽子にLマークがついているので、
反転してデータを流用することができないんですよ。
岩田
反転させると、
Lが逆マークになってしまいますからね(笑)。
佐野
マリオも同じで、
ジャンプのときは常に左腕を上げなければならなくて、
反転させると逆になってしまうので禁止しました。
岩田
それって、何人ぐらいのスタッフで
マリオとルイージの16方向のアニメーションの
パターンを描くんですか?
窪田
マリオやルイージ以外にもたくさん描いたんですけど、
全キャラクター含めても、
最大で5~6人でつくっていた感じです。
岩田
なんか・・・気が遠くなる作業量ですね(笑)。
窪田
はい(笑)。
あとひとつ気を配ったところは、
たとえばユメルイージをたくさんくっつけて
敵にぶつける「
ミラクルボール」などで、
たくさんのルイージが集まると、
見かたによっては気持ち悪い印象を与えかねないんです。
細かいものがピシッとならんでると、
生理的にぞくっときてしまうので。
岩田
整然としていたほうが気持ち悪いんですか?
窪田
はい。だから一つひとつ動きを変えたり、
ポーズを変えたりしてランダムにしています。
よく見ると一体一体が違う姿勢、
違うアニメーションの動きをしているところが
こだわりポイントです(笑)。
大谷
それからマリオとルイージはしゃべらないので、
感情をポーズで表現しないといけないんですけど、
リアクションの笑わせかたがすごくうまいんですよ。
これぞアルファドリームさんのドット絵のよさなんです。
岩田
その動きは誰がディレクションするんですか?
窪田
基本的に自分と大谷さんでリクエストを出しますが、
あとはデザイナーが好きなようにつくっています。
岩田
それはもともとあるデータを
使って表現するのではなく・・・?
窪田
はい、全部一品ものです。
岩田
それぞれ専用につくるんですか?
ああ・・・それは時間がかかりますね。
なぜ前作から3年以上も期間があいてしまったのか、
ようやくわかってきました。
本当に、とんでもない作業量ですね(笑)。
一同
(苦笑)
岩田
でもちゃんと3Dになっていますし、
ポリゴンとはまた違う味になっていて、
ほかで見たことのない不思議な感じなんです。
「これ、手で描いている・・・よね?
でも手で描いているにしても不思議だな?
どうやってつくっているの?」
って、見れば見るほど味わい深いんです。
まさに「ドット絵でつくっていることに
誇りを持っているチーム」ですね。
佐野
もうひとつ、地味に大変だったことは
ゲームの中にドット絵のルイージと、
巨大化バトルのポリゴンのルイージと、
下画面にいるイラストタッチのルイージと、
3人のルイージをどう共存させるのか、試行錯誤しました。
結局、下画面のルイージはつくり直してもらいましたよね。
窪田
はい、まるごと大改造しました。
岩田
ルイージっていうのは・・・
寝ていても手がかかるんですね(笑)。
う~ん、それにしても立体視のドット絵を描く人って、
あんまり聞いたことがありません・・・。
一同
(笑)