徹底的にシールにこだわるということが
チーム全員に浸透するまでには、
きっとけっこう時間がかかっていますよね。
そこにはどんな問題があって
何をきっかけに解決されていったんですか？

そういう意味ではたぶん最初、
みんな共通してモヤモヤしていたのは、
バトルにおいてシールを使うと
シールがなくなってしまうことだったと思います。
「あとで足りなくなったらどうしよう」とか
「入手したものを取っておきたい」という人には
けっこうしんどいイメージがあったんです。

普通のＲＰＧにたとえると、
バトルで無限に使える「たたかう」が
使うとなくなってしまう感覚ですよね。

そこで、シールをバンバン使ってもらおうと
マップの随所からシールがはがせたり、
お金でいつでも買えるようにして、
「どんどん使ってください」という
ゲームの流れをていねいにつくっていきました。

取るたび使っても、
シールが足りなくならないようにしたんですね。

そうです。あとバトルでいうと
シールの効力をきっちり差別化することで、
相性のいい敵に惜しみなく使うことのほうが
気持ちよくなるようにしたんです。
そこでまず「これはいける」と感じました。
シールを探すのが、すごく楽しくなったんですね。

あの、シールをはがすとき
ひっぱって、パン！ という手触りも
すごく気持ちいいですよね。
こだわってつくられた感じがしました。

あれも一度、宮本さんの
ダメ出しを食らいました（笑）。
「ゲーム中で何度も行うアクションなので、
　もうすこし小気味よく早いほうがいい」
ということで、１フレーム^（※30）単位の
調整をしています。

あれはマリオの一連のアクションに加えて、
シールの大きさによるタメのちがいもあるんです。
それぞれ本当に微妙な調整をした成果ですね。

田邊さんから見て、どうでしたか？

わたし自身の印象で言うと、
「投げてつくるモノシールが魔法代わりになる」
ということを工藤さんに理解してもらって、
おもしろいネタが次々出てきたあたりから
変わってきた気がしますね。

モノシールはどのくらい数があるんですか？

フィールドで使うモノも含めて、
最終的には５０種類以上入っています。

あと “バトルスロット”を入れて、
バトルにメリハリがつけられたことも
大きいんじゃないですかね。

スロットはどんな役割なんですか？

スロットの絵柄がそろった数だけ
いっぺんにシールが貼れて、
ハデかつ有利に戦うことができます。
たくさんお金を入れれば回転数を遅くして、
そろえやすくすることもできます。
ここでも、もともとアクションであった
目押しの手触り感にこだわっていますね。

シールを使ったバトルの構造を
明確にしたことが、ゲーム全体の
テンポ感にもつながっているんですね。

はい。普段のザコ戦でお金をためて、
ボス戦は、ためたお金をスロットに注ぎ込んで戦う、
というスタイルが確立されたとき、
みんな「いける」って
思ってくれたんじゃないですかね。

でも、ものすごく最後ですよね、それ。

（笑）

僕は個人的には、
シール博物館の存在がすごく大きかったです。

シール博物館ですか？

自分で集めたシールを納めると
展示してくれる施設なんですけど、
僕はあれがあったおかげで
モチベーションがすごくあがったんですね。
見たことないシールをみつけたときとか、
アルバムに貼ってあるシールをやりくりして、
どうにか納める方法を考えるんです。

井方みたいに、
はじめてのシールをみつけたら
とりあえずアルバムに埋め込んで、
シール博物館に納めに行くというスタイルで
プレイしている人がけっこういるんですよね。

あの、基本はアルバムに貼っているシールを
必要最小限にしたいんです。
それで博物館に行って貼れるものがあると、
アルバムに空きができるんで、
そしたらまたそこに新しいシールを貼れるという、
そのくりかえし続くサイクルが
すごく気持ちいいんです。

そのサイクルができるまでが、たいへんでした（笑）。

それは、どういう意味ですか？

モノシールはサイズも大きくて、
アルバムに１枚ずつしか貼れないんです。
かつ、ゲーム中に同時に１枚しか存在しないんです。
だから博物館に納めようとすると使えないし、
また取りに行かないと
使って効果を見ることができないんです。

それはそうなりますよね。

そこはもちろん、
手に入れたらぜひ使ってもらいたいけれど、
博物館に納めたい人には二度手間になって
「ストレスになるんじゃないか？」って、
けっこう悩んだんです。

いや、それが僕的にはむしろ、
楽しい悩みなんです。

結果的にプレイヤーが
「いい意味で葛藤する」
そういう構造が生まれているわけですね。

そうですね。
でもみんなが「それでいい」と感じるまで、
かなり議論をしています。
博物館賛成派と反対派で。

賛成派にとっては、納めることが
すごく快感なんですけどね（笑）。

まあ、本当に両者がせめぎ合う感じでした。
だいたい最初に博物館に納めに行く人は
どこにどんなシールがあるかを覚えて
もう一度取りに行くので、
そこをある程度意識したつくりにしました。
どんどん先に進みたい人に対しては、
基本、取ったらすぐに効果を活用できるような
配置にしています。
それぞれのプレイヤーに合わせて、
どちらの遊びかたもうまくまわるような
バランスになっていると思います。

つまり、人によって遊びかたが
変わるゲームになっているんですね。

単純なところでいうと、
アルバムの貼りかたや普段使うシールも
人によってすごくちがうんです。

だとすると、その人のアルバムを見ると、
性格もある程度わかるんじゃないですか？

はい（笑）。
ファイアばっかり使う人は
「面倒くさがりだろうな」とか、
「キラキラでそろえたいんだろうな」って
わかるアルバムがありますね。

わたしはちゃんと手動で
カテゴリ別に並べ直すタイプですね。
靴は靴のページとか・・・。

あれは、そういった整理マニアには
たまらないと思います（笑）。

たしかに、フラワーはぜんぶこっちとか、
コツコツやってました。

「ペーパーマリオのアルバムで性格占い」みたいな
こともできそうですね。

（笑）